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日曜劇場「御上先生」が近年一番の傑作になる予兆 衝撃的だった初回を経て、今後注目すべきポイント

東洋経済オンライン / 2025年1月26日 11時50分

筆者はドラマを見て久々にゾクゾクしてきた。数学や化学の方程式のように理路整然として完成度の高いものは美しく心を打つのである。

日曜劇場では、このところ、『VIVANT』 や『アンチヒーロー』『海に眠るダイヤモンド』など、凝ったドラマが増えている。いわゆるジャンルミックス的なもので、いろいろな要素が入って、ときとしてどこが主軸かわかりにくいこともある。

『VIVANT』 や『アンチヒーロー』は脚本家が複数体制であったため、話があっちこっちに散らかっていて一本スジが通ってない印象を感じることもあった。

短いワードが主流のSNS時代、余白は自身で勝手に埋める視聴者もいれば、全部が機能的にガシッとハマった完成度の高さを求める視聴者もいる。

『御上先生』は最初に複数要素をあげ、これらが関連し合いながら、官僚の世界の深い闇に潜っていくのだとわからせる方法で、視聴者の好みのばらつきの問題を回避することに成功している。

『新聞記者』でタッグを組んだ2人

脚本は、詩森ろばが単独執筆。詩森は1990年代から演劇を主戦場にして活動しているベテランで、社会問題を題材にした作品を多く手掛けてきた。

つい最近は、スウェーデンで施行された「Yes Means Yes法」を題材に、現代日本に生きるひとりの女性の切実な、夫をはじめとして、男性との関わりの実情を舞台化していた。

映像でも活躍し、とりわけ、映画『新聞記者』(2019年)では日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞している。

この『新聞記者』で松坂桃李は若き官僚を演じ、事件を隠蔽しようとする身内と、それを暴こうとする新聞記者の間で激しく葛藤する様が鮮烈であった。詩森は、問題意識をもった作品づくりに定評があるのと、引き出しの多さにも信頼が持てる。

興味深いのは「パーソナル・イズ・ポリティカル(個人的なことは政治的なこと)」、つまり「個人の生きづらさは政治が解決するもの」という言葉を、御上が高校時代、友人と語り合った思い出だ。

御上のモチベーションになっているこの対話の題材は、1960年代のフェミニズム運動から広がった言葉である。女性が自身を損なわれる経験をしたとき、それは個人的な問題ではなく、社会が規定した女性の位置付けが、その体験を生んだということなのだ。

だから自分の個人の問題として矛を収めず、社会に問い続ける必要がある。社会が変わればそんな体験もしないで済むのかもしれないのだ。

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