日産の暗闘史が示す「2度目の身売り」の背景 1999年の経営危機時と重なる既視感の正体
東洋経済オンライン / 2025年1月27日 7時30分
石原氏はライバルの蹴落としにも固執した。北米市場で「ダットサン」ブランドを立ち上げ、1975年に北米で日産車を輸入車1位の地位に押し上げた米国日産会長の片山豊氏を、自身の社長就任と同時に放逐。成果を上げる片山氏が自分の地位を脅かす存在として映ったからだとみられている。石原氏は、片山氏が育てた「ダットサン」ブランドまでも消滅させた。
1985年のプラザ合意後の円急伸で、輸出比率が高かった自動車メーカーは構造改革を迫られた。日産は1986年、上場以来初の営業赤字に転落したが、バブル景気によって構造改革の進展は遅れた。1988年に発売した高級車「シーマ」の大ヒットも、石原路線の破綻を覆い隠すことにつながった。
1992年、石原氏が相談役に退く頃はすでにバブル崩壊後の景気低迷期で、いよいよ経営悪化が現実のものとなった。1992年度から1995年度まで4年連続で当期純損失を計上。有利子負債は2兆円を超えた。過剰な設備・負債・人員が顕在化し、1995年に神奈川県の座間工場の閉鎖を決めた。
ルノーからの資本を受け入れ
しかし「出血」は止まらなかった。1996年度はいったん黒字化したものの、1997年度には再び当期純損失に陥る。金融機関も、もはや日産支援どころではなくなった。1997年11月、北海道拓殖銀行と山一証券が倒産。湯水のように日産に資金を貸してきたメインバンクの日本興業銀行も自らの生き残りを模索する時代に突入した。
こうして1999年に倒産寸前の経営危機を迎え、ルノーから36.8%の資本を受け入れ、再建役としてカルロス・ゴーン氏が送り込まれた。
今度の日産の危機も、上層部の社内政治で経営が停滞している間に社業が傾くという、同じ過ちを犯しているように見える。
その背景を知るうえでは、2019年12月1日付で内田誠氏が社長に就任したときのトップ人事にさかのぼる必要がある。
20年近く日産に君臨したゴーン氏が東京地検特捜部に逮捕されたのは2018年11月。その後、実権を握った西川廣人社長も2019年9月、株価連動型の報酬問題で辞任に追い込まれた。
ゴーン事件の反省を踏まえ、日産はコーポレートガバナンスを強化するため2019年6月の株主総会後に社外取締役が過半数を占める指名委員会等設置会社に移行した。ところが西川氏の後任社長の選定をめぐり、指名委員会は迷走した。
スナール氏の策略
関係者によると、当時の指名委員6人のうち、3人が専務の関潤氏、2人が三菱自動車COOのアシュワニ・グプタ氏、1人が暫定CEOの山内康裕氏を推薦したという。関氏が社長に決まりかけたが、過半数を取れていないとして、当時まだ約43%出資していたルノーの会長で指名委員でもあったジャンドミニク・スナール氏が反対。当初誰も推薦していなかった専務の内田氏が、ルノー側の推挙により社長に抜擢された経緯があった。
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