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日産の暗闘史が示す「2度目の身売り」の背景 1999年の経営危機時と重なる既視感の正体

東洋経済オンライン / 2025年1月27日 7時30分

その関係者は「一部役員が関氏に関する根も葉もないマイナス情報を流したことも影響した結果、不透明な経緯で新社長が選ばれた」と指摘する。「能力が低い内田氏のほうがルノーは御しやすいと判断した」とみる向きもある。

社長候補だった関氏はナンバー3の副COOに就いた。関氏はゴーン時代の積極投資による過剰生産能力を圧縮するため、海外工場閉鎖などを行う事業構造改革の責任者となった。だが、日本電産(現ニデック)会長だった永守重信氏によるヘッドハントで、1カ月も経たずに会社を去った。

構造改革が喫緊の課題となる中、当の内田氏をめぐっては、耳を疑うような情報が社内から漏れた。「内田氏は再生や本業そっちのけで、同じ購買部門出身でお世話になった山内暫定CEOの退職慰労金について報酬委員会との調整に奔走している」。

2020年夏に公開された有価証券報告書。新制度に基づく「退任時報酬(退職慰労金)」が、同年2月に退任した西川氏に2億円、山内氏に3億0400万円支払われていたことが記された。就任期間が短い山内氏のほうが金額は大きい。関係者によると、西川氏は慰労金の減額を申し出たが、山内氏へは上積みされたという。

そもそも日産は2020年3月期決算で6712億円の当期純損失を計上し、無配に転落していた。にもかかわらず、退任する役員に巨額の慰労金を支払うこと自体、導入したばかりの社外取中心のガバナンス制度が機能していないことを示している。

続く2021年3月期も4487億円の当期純損失となり、2年で計1兆円を超える赤字を垂れ流した。その後は回復したものの、収益力は競合他社に比べて大きく見劣りした。

会社の屋台骨がぐらつく間にも、日産社内では社外取も巻き込んだ内紛じみた足の引っ張り合いが続いた。

社外取同士の抗争

ルノーとの出資比率引き下げ交渉の進め方をめぐり、2022年から2023年にかけて、当時筆頭社外取で指名委員会委員長の豊田正和氏(元経済産業審議官)と、同じく社外取で監査委員会委員長の永井素夫氏(元みずほ信託銀行副社長)が対立。その頃「ナンバー2」のCOOだったグプタ氏のセクハラ疑惑が発覚したが「氏を擁護した豊田氏と、グプタ氏排除を狙う永井氏がさらに対立した」(関係者)。こうしたトラブルの情報は「怪文書」としても出回った。

社外取同士の抗争は2023年5月11日、指名委員会で豊田氏を取締役として再任しない緊急提案が可決されたことでいったん決着したように見えた。6月の定時株主総会で豊田氏は退任する方向となったが、そこから豊田氏の逆襲が始まる。

残りの任期1カ月の間に、今度は永井氏を取締役から引きずり下ろす工作も始まり、社内は社外取らの「場外乱闘」に困惑する状態が続いた。グプタ氏は6月に退任したが、5億8200万円の退職慰労金が支払われた。

こうしたゴタゴタが続き、事業構造改革計画「日産NEXT」で掲げた2024年3月期決算での営業利益率目標5%は未達となった。2025年3月期の当期純損益は再度の赤字転落が予想されている。歴史は繰り返したのである。

井上 久男:ジャーナリスト

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