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イーロン・マスクに敗れた「カラ売り屋」冬の時代 長期の上げ相場という逆風、放置されるイカサマ企業

東洋経済オンライン / 2025年1月29日 8時0分

また借株取引が決算期をまたぐ場合、配当相当額を株の貸し手に払わなくてはならない。しかし、借りた株はすぐに市場で売ってしまっているので、カラ売り屋は企業から配当はもらえず、株の貸し手に払う配当相当額は、丸々赤字になる。

それだけで済めばいいが、株価上昇はさらなる悪循環をもたらす。

株価上昇に直面したカラ売り勢が慌てて市場から株を買い戻し、手仕舞いに走ると、その買いがさらに価格を押し上げる「踏み上げ」という現象が起きる。こうなると完全に負のスパイラルで、カラ売り勢はますます締め上げられ「ショート・スクイーズ」状態に陥る。

かくして今回のように長期の上げ相場が続くときは、カラ売り屋の倒産や廃業が増える。ヒンデンブルグ、メルヴィン、チェイノスらの廃業も、そうした市場のサイクルの一現象である。

個人投資家がカラ売り屋に逆襲

かつて、優良企業を買い持ちし、低迷企業をカラ売りする「ロング・ショート」戦略で一世を風靡した、ジュリアン・ロバートソンのタイガー・マネジメントも、カラ売りしたIT銘柄の騰勢が止まらず、2000年3月にファンドを閉鎖した。

疑わしい株でも上がり続ける今回の長期の上げ相場には、さまざまな要因が指摘できる。

好調な企業業績(特にヘルスケア、テクノロジー、金融)、FAANG(Facebook, Apple, Amazon, Netflix, Google/Alphabet)と呼ばれる巨大テック企業の好調と経済全体への波及効果、第1次トランプ政権の企業と個人に対する減税(2017年)、インデックスファンド・ETF・401k(企業型確定拠出年金)への資金流入、世界的政治経済の不安定感にもとづくアメリカ市場への逃避資金流入、インフレと資産価格の上昇、好調な消費と旺盛な企業投資、アルゴリズム投資や経済・企業情報の透明化による証券市場への資金流入の加速、長期にわたる世界的低金利といったことだ。

こうした要因は、大なり小なり過去にも見られたものだ。これに対し、ここ5年くらいの新しい現象が2つある。

新型コロナ禍に対処するための世界的量的緩和や給付金支払い(ばら撒き)による市場流動性の急激な高まりと、手数料無料のスマートフォン専業証券会社の登場による若者層や大衆投資家のゲーム感覚での市場参入と攪乱だ。

後者に関しては、2021年1月、SNS「レディット」の人気掲示板「ウォールストリートベッツ」などで情報交換していた大衆投資家たちが示し合わせ、ビデオゲーム小売チェーンのゲームストップ社の株を一斉に買って価格を暴騰させ、同社株をカラ売りしていたメルヴィン・キャピタルに推定で66億ドル(約1兆0300億円)という莫大な損失を与え、同ファンドを廃業に追い込んだ事件があった。

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