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イーロン・マスクに敗れた「カラ売り屋」冬の時代 長期の上げ相場という逆風、放置されるイカサマ企業

東洋経済オンライン / 2025年1月29日 8時0分

カラ売り屋はただでさえターゲット企業から頻繁に名誉毀損などで訴えられるので、それにSECによる従来以上の監視が加われば、当然防衛のための時間や労力も半端でなくなる。ヒンデンブルグ・リサーチやジェームズ・チェイノスが市場から撤退したのも、こうしたことが大なり小なり影響していると考えられる。

我が世の春を謳歌するイーロン・マスク

“冬の時代”で苦しむカラ売り勢に対し、「アメリカの株式市場で最もカラ売りされた会社」といわれるイーロン・マスク率いるテスラの株価は絶好調だ。

2010年にナスダックに17ドルで上場した同社は、量販セダン「モデル3」の製造立ち上げと一時は浮動株に占めるカラ売りの残高が6割を超えるという猛烈なカラ売りに苦しみ、株価は2019年の終わり頃まで10ドル台で低迷した。

カラ売り勢の代表格がジェームズ・チェイノスで、「BMWやポルシェが高級EVの生産を開始すれば、テスラにとって脅威で、イーロン・マスクはスペースXのほうに注力するため、2020年までにテスラのCEOを辞めるだろう」と述べ、株価が15ドル前後だった2016年5月に同社をカラ売りしたことを明らかにし、廃業する直前の2023年までカラ売りを続けた。

しかし、テスラは苦境を乗り越え、株価は2020年から爆騰を開始し、2023年末には248ドル、現在は397ドルに達した。チェイノスは巨額の損失を出したことを認め、テスラ株のカラ売りが廃業の大きな原因となった。

またヒンデンブルグ・リサーチが廃業を明らかにした翌日の1月16日には、同社がカラ売りのターゲットにしてきた会社の株価も軒並み上昇した。

インドのアダニ・グループは1.7%、カール・アイカーンのアイカーン・エンタープライゼスは8.5%、モバイル決済会社ブロックは2.7%、オンライン中古車小売りのカルバナは7.7%、ビデオゲーム開発会社ロブロックスは3.1%、それぞれ上昇した。

カラ売り屋がいなくなることは市場の悲劇

企業家出身で、イーロン・マスクやカール・アイカーンとも親しいトランプ大統領が就任したことで、カラ売りに対しては一段と強い逆風が吹く可能性がある。

しかし、カラ売りという投資手法やカラ売り屋の存在がなくなることは考えられない。アメリカの証券市場は、売り上げがゼロの企業でも上場できたり、SPAC(特別買収目的会社)のような無節操な裏口上場の仕組みが認められたりしており、日本の証券市場とは比べ物にならないほどいかさま企業が上場できる余地がある。

ニューヨークの企業分析会社、CLJリサーチのゴードン・L・ジョンソンCEOは、ヒンデンブルグ・リサーチの廃業に関するCNNの取材に対し「ヒンデンブルグは、政治的・金融的リスクが極大化する前に撤退することにしたのだろう。これはまったくの悲劇だ。なぜなら市場で不正調査をやる者がいなくなれば、詐欺の横行を許すことになるからだ」と述べている。

筆者も同感である。

黒木 亮:作家

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