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「DeepSeekは"始まり"か」世界で起きる"大変化" 「ブラックスワン」になる?北京大学MBA生の考察

東洋経済オンライン / 2025年1月29日 13時0分

中国のIT起業家がサービスの拡大にあたって最もリスクと考えることのひとつは、政治的な理由でアメリカに排除されることです。アメリカの大きな市場を失うだけでなく、その影響が世界に及ぶからです。

ただ、それがトランプ氏の大統領就任によって風向きが変わりつつあります。政治的に抹殺されかかったByteDance社のTikTokは、アメリカとしての落とし所を見つけ、停止処分から一転、サービス再開をしています。

アメリカの反応が「中国の起業家」に夢を与える

今回のDeepSeekも、株式市場においてはアメリカ企業に大打撃を今後も与える可能性があるにもかかわらず、トランプ大統領はDeepSeekに対して、下記のように述べています。

「私はこれをポジティブに捉えている」

「ウェークアップコールだ。勝つための競争により集中する必要がある」


DeepSeekのアメリカでの展開を停止する可能性もあった局面ですし、今後制限される可能性も十分ありえますが、現時点においてはそこまで厳しい処置はなされておりません。

アメリカ国民の民意を反映したものなのか、中国との関係性を慮ったことなのか、トランプ大統領の真意はわかりかねます。

ただこれはTikTokの件も、今回のDeepSeekも、アメリカに排除されなかったことは、グローバル展開を目指す、中国国内の優秀な起業家にとって大きな希望になることは間違いないでしょう。

昨年記事を出した8月の段階では、DeepSeekは中国国内でも目立った存在ではありませんでした。この半年で急速に発展してきたAI起業のひとつです。そのため、昨年の記事の中では紹介しませんでした。

このような新興AI企業は中国にはたくさん存在し、優秀な起業家が中国国内の厳しいマーケットの中で切磋琢磨しています。

そもそもゲームアプリの領域では、中国勢がマーケットのシェアをすでに大きくとっていますし、SNSはTikTok、ECはTemuやSHEINなど、IT系サービスは中国製が世界のマーケットのシェアの多くをとりはじめています。

EVやロボットなどの製造品は普及までのタイムラグがありますが、DeepSeekのようなLLMに関しては、他のIT系サービスのような展開先の地域へのローカライズがほとんど不要ですので、むしろ最も中国製の世界展開が速い領域なのかもしれません。

DeepSeekは「始まり」にすぎない

DeepSeekの半導体使用に関する情報などは真偽に注意深くなる必要もあるとは思いますが、純中国産のLLMサービスがアメリカおよび世界で成功しつつあるという事実が、中国国内のAI起業家にとって大きな希望であり、政治的な障壁がない限りは、むしろこれから加速することでしょう。

あくまで株式投資や技術周りも素人に近い立場としての私の意見ですが、今後中国AIの急速な発展が、世界の膨張する資本市場になんらかの大きなインパクトを与えてしまう可能性はあるのかもしれません。

少なくとも、DeepSeekは中国AIサービスのこれからの大きな発展の始まりにすぎないです。

しかし、中国製LLMや中国製半導体も含めて国家産業領域は、外部の人間にとってリアルタイムでその実態を掴むことは難しく、今回のDeepSeekのように気づいたら世界のマーケットのシェアをとっていたということは今後も十分に考えられますし、その度に株式マーケットが敏感に反応する可能性がありえます。

そういった点で、DeepSeekにかかわらず、中国AI産業そのものが「ブラックスワン」になりえるのかもしれません。

岡 俊輔:中国在住経営者 北京大学MBA23期生

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