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「玉砕を許されなかった兵士」知られざる沖縄戦 『戦場の人事係』を書いた七尾和晃氏に聞く

東洋経済オンライン / 2025年1月30日 11時0分

さらにそれだけでは十分でないと考え、当時、アメリカ軍の側がどのように作戦を進め、日本兵を掃討したかを確かめるために、アメリカの国立公文書館やスタンフォード大学フーバー研究所を訪れ、そこに残されていたアメリカ兵やアメリカ軍側の証言記録を集め、日本側の証言や記録と擦り合わせる作業を行ってきました。

そのうえで市井の人々に向き合い、その人たちの言葉を聞き、咀嚼しました。

──七尾さんは沖縄に関して、『沖縄戦と民間人収容所』、『琉球検事──封印された証言』という著書も出しています。世の中の人たちの語りは必ずしも理路整然としたものではなく、時期や前後の文脈が矛盾していることも少なくありません。そうした人たちのメッセージをどのように受け止め、どうやって事実関係を把握し、作品に仕上げていくのでしょうか。

向き合ってくださる方と呼吸を合わせることにいちばん時間を費やします。それを最も大切にすべき部分だと考えています。

たとえば戦争体験といっても人それぞれですし、価値観によって戦争のとらえ方は異なっています。

机の上の「りんご」といっても、必ずしもこちらが示しているものと同じりんごを指しているかどうかはわからない。ゆえに、その人の持つ価値観やその人が歩んできた人生について、自分なりに理解するという作業が必要になります。

人間は皆、それぞれの価値観に立脚して物事を理解し、判断するからです。話される相手の価値尺度に則って初めて、証言は第三者にとって理解しうるものとなると考えてきました。

そのうえで、その人から思いがけず出てくる言葉を待ちます。あれこれ尋ねるというよりも、その人から漏れてくる何気ない、素直な言葉こそが重要だと考えるからです。

自分自身の五感でとらえ、証言を消化する

──長丁場になりそうですね。

石井氏との関係でいうと、彼が亡くなられてからも私自身は取材を続け、ようやく今回、著作にすることができました。石井氏が重い体験をしたガマにも季節を変えて何度も足を運び、この季節にはこういう風が吹き、こういう場所だったのだという「現場の風土」を納得できて初めて、活字にできると思ったからです。

多くの兵士や民間人が命を落とした沖縄本島南部の断崖絶壁を登ったり降りたりしたのもそのためです。証言の背景にある感情や体験を自分自身の五感で捉えて初めて、やはり証言は消化しうるものになるのではないでしょうか。

──石井氏との出会いは。

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