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「玉砕を許されなかった兵士」知られざる沖縄戦 『戦場の人事係』を書いた七尾和晃氏に聞く

東洋経済オンライン / 2025年1月30日 11時0分

私は長らく沖縄戦の取材を続けてきましたが、このような事例は見聞きしたこともなく、大変な驚きでした。日本軍の多くの記録は焼却処分され、ほとんど残っていません。スタンフォード大学のフーバー研究所で、捕虜から入手したいくつか未整理の記録を見たことはありますが……。

石井さんから兵士たちの最期を記録したメモの何枚かを託されたとき、私としては何としても活字にしなければならないと責任を感じました。

──『戦場の人事係』によれば、七尾さんは石井氏が属していた中隊で長を務め、最期に石井氏に「生きて伝えよ」と命じた山田兼成氏の故郷も訪ねています。

戦後、石井氏が兵士の遺族を訪問し、亡くなった兵士の位牌に手を合わせてきたことを踏まえ、私も歩き継ぐことで追体験しようとしました。山田中隊長にも遺族がいらっしゃって、私も訪問して遺影を見せてもらいました。そのとき、「ああ、山田中隊長は27歳で命を落としたのだ。こんなに若くしてこの世を去らなければならなかったのだ」と改めて認識しました。沖縄戦が、沖縄の人たちだけでなく、日本の兵士にとっても、いかに重たいものであったかということです。

──これまで七尾さんは多くの著作を世の中に出してきましたが、多くの場合で世に知られていない無名の人物に伴走し、その生き方を追体験するといった作風です。無名の人物の生き方を描くことの意義とはどういうものでしょうか。

歴史というものは一国の宰相や司令官だけによって作られるものではなく、無名にして懸命に生きてきた、市井の人たちの上に築かれているものだと思います。その歴史を自分なりに追体験し、過去を振り返り、未来を模索する人々に伝えたい。その一心で現在までやってきました。そのための手法が「歩き継ぐ」「聞こえる瞬間を待つ」という手法であり、私の取材の流儀です。

岡田 広行:東洋経済 解説部コラムニスト

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