5%成長は本当?中国経済「失速」の知られざる実態 貿易黒字は過去最大でも「産業空洞化」の懸念
東洋経済オンライン / 2025年1月30日 7時50分
中国経済の先行きに対する不透明感が増している。中国国家統計局は2024年の経済成長率5.0%と発表したが、現地では著名なエコノミストが疑義を唱え、議論を巻き起こした。中国経済は今後、どうなるのか。神戸大学大学院経済学研究科教授の梶谷懐氏に話を聞いた。
※記事の内容は東洋経済の解説動画『混迷する中国経済』から一部を抜粋したものです。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。
中国国有企業の著名コラムニスト「5%成長は無理」
――中国国家統計局は2024年の国内総生産(GDP)成長率を5.0%と発表しています。ただ、実態として景気はかなり悪そうで、本当に5%をクリアしているのかという議論もありますが、どう見ていますか。
【動画を見る】習近平政権、「経済成長率5%」に国内からも疑問の声
われわれ経済学者も注視しているところですが、ニュースとしては中国国有の証券会社に勤める著名なエコノミスト・高善文氏が実際はそれよりも低いのではないかと指摘して話題になりました。政府は5%成長を目標として掲げているが、中国経済の状況を踏まえると「無理じゃないか」と。
それぐらい悪いのに、「経済状況が悪い」とエコノミストが言うこと自体を制限しているような状況に対して、高氏が警鐘を鳴らしたということでしょう。
――マクロで見ると不動産不況で減速が続く一方、国際的には中国のEV(電気自動車)が欧米を席巻するなど産業の強さも目につきます。この整合性についてはどう理解すればいいのでしょうか。
EVや電子産業など、個々の民間企業の活躍に注目している人たちは、中国経済の将来に対して割と楽観的です。一方、成長率の鈍化や若年層の高い失業率、デフレなどに注目をする人は悲観的で、成長が止まったんじゃないかという見方をすることが多い。
私自身はこの2つの側面について、同じ現象の「表」と「裏」として考えるべきだと思います。同じ現象というのは、中国経済は本質的に供給能力が非常に強いのですが、国内需要が伸び悩んでいる。経済政策を導入しても伸びない。そういう現象がずっと続いてきて、今はそれが顕在化していると捉えています。
不動産の問題については、これまでは経済成長率を上回るようなスピードで価格が上がっていたため、それを前提に経済が回ってきたという側面があります。それが今、ものすごく下がっているかというとそうではないのですが、少なくとも今までのようなペースで上がっていくことはもうないんじゃないかと人々が思い始めた。
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