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「一揆」と「SNS」歴史作家が語る驚きの"共通原理" 意図的に自分の名前を広めようとした首謀者も

東洋経済オンライン / 2025年1月31日 16時0分

『室町無頼』のなかでは、のちに寛正(かんしょう)の土一揆(つちいっき)の首謀者となる蓮田兵衛という牢人が、才蔵という少年に「金よりも動くものはなんだ?」という問いかけをします。

お金の本質は動くこと/動かすことにあります。つまりは運動ですね。その金よりも激しく動くもの、世を回転させるものは、いわゆる情報しかない。『一揆の原理』のご著書で「それはSNSだ」と喝破されていて、納得がいきました。

呉座 ありがとうございます。

垣根 貨幣はAからBへ移動した時点では、ただの移動です。100円という価値が四方八方に100円で散らかるわけではなくて、100円はあくまでも100円。いわゆる1対1の等価交換です。

しかし情報は拡散することによって無限に運動と変質を繰り返す場合が多い。だからある種、とても危険な場合もある。

以前、管理人に勧められてFacebookを始めたときに、これは空恐ろしいリスクも孕んでいると思いました。考えようによっては、自分のあずかり知らない範囲まで話が拡散していくのは、とても怖いものです。

自分のまったく知らない人にまでいろいろな話が伝播し、責任の所在もはっきりしないままその反応や意図が変質して、下手をすれば発信者にとっては収拾のつかない場合もあると実感しています。

有名になり過ぎてしまった「蓮田兵衛」という名前

呉座 しかし、『室町無頼』で垣根さんが描いていらしたように、蓮田兵衛はむしろ情報の拡散力を利用しようとしていた。

垣根 実際に証明する史料は存在しませんでしたが、いろんな状況を想像するにつけ、そのように推察せざるをえませんでした。

呉座 蓮田は、意図的に自分の名前を広めようとしていたのではないかと、垣根さんはどこかでお書きになられていましたが、私はその可能性に気付きませんでした。

垣根 一揆はSNSだという論理でいくと、そうなりますね。

呉座 小説の中でも書かれていて、すごくしっくりきました。土一揆の大将の名前がわかるという事例は少ないのに、なぜ蓮田兵衛はこれほど有名なのかというと、むしろ自分から宣伝していたのではないかと。盲点を突かれたような気がしました。

垣根 私にも謎でしたが、自ら首謀者だと触れ回っていたと考えると、いろんな部分で辻褄が合い、腑に落ちるのです。

呉座 蓮田兵衛が活躍した寛正の土一揆では、幕府は土一揆を鎮圧した後も、敗れて逃げた人たちを執拗に捜索しています。蓮田兵衛も捜索されて捕まり、殺されています。

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