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「一揆」と「SNS」歴史作家が語る驚きの"共通原理" 意図的に自分の名前を広めようとした首謀者も

東洋経済オンライン / 2025年1月31日 16時0分

垣根 一方は牢人社会で首領的な役割として暗躍している蓮田兵衛、もう一方は、その犯罪などを取り締まる骨皮道賢。狭い京の街で、この2人が互いにまったく知らないはずがないというところが、この物語の発想の根本です。

呉座 そこが本当に鋭いと思いました。言われてみると、絶対につながっています。この辺りも、今は研究が進んできました。昔は、一揆というのは基本的には農民の闘争だと位置づけられていて、足軽との接点というのはあまりきちんと考えられてこなかった。そして、土一揆は農民の反体制の動きであるとして、プラスの評価をされてきた。

しかし足軽というのは、権力の手先として悪さをしているということで、マイナスイメージです。

だから土一揆と足軽は、別個に扱われてきた部分があります。だんだん研究が進み、土一揆に参加している人たちと足軽になっている人たちは、実は根っこでつながっているのではないかと、最近では考えられています。

マフィアと警察が「裏取引」をするようなもの

そのつながりを象徴する形で、土一揆の大将である蓮田兵衛と、応仁の乱で足軽大将として活躍する骨皮道賢が知り合いだったとする設定は、すごくうまいと思いました。

垣根 『室町無頼』では、蓮田兵衛が土一揆を起こす前に取り締まる側の骨皮道賢に裏取引を持ちかけます。

アメリカで言う、マフィアと警察が裏取引をするようなものです。蓮田兵衛は一揆をスムーズに進めるため、取り締まりの現場を任されていた骨皮道賢にお目こぼしを依頼し、その見返りとして道賢の面子を潰さず、花を持たせようとしていた、という感じでしょうか。

呉座 現代と同じですね。

垣根 そうすることで、骨皮道賢も幕府や侍所に対して点数を稼ぐこともできる。犯罪を取り締まりながら、実は犯罪者とも通じているという意味では、江戸時代の目明かしのようなものです。

呉座 個々のエピソードは創作だとしても、ストーリーの根っこにある社会観のようなもの、当時の室町社会はこのような感じだったという時代感覚は、今の歴史学の研究と合致します。時代の本質を突いているのではないかと思います。

垣根 涼介:作家

呉座 勇一:歴史学者、信州大学特任助教

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