「負け犬」から22年、酒井順子氏語る「子の無い人生」 令和は「負け犬」にとって生きやすい社会なのか
東洋経済オンライン / 2025年1月31日 7時40分
世の中には2通りの人しかいない。「子のある人」と「子のない人」。が、子がある理由も、ない理由もさまざまなのにもかかわらず、それについて互いで感想でも疑問でも意見でもざっくばらんに語らうことはない。いや、しないほうがいいのかもしれない。
どんな生き方を選ぼうと、どこにたどり着いていようと、それぞれの選択やあり方は尊重されていいはず。本連載では阿古真理氏が多様な角度から「産む・産まない」「持つ・持たない」論に迫る。第1回は『子の無い人生』の著書もあるエッセイストの酒井順子氏。
「痛いので産みたくありません」と書いた
「私が初めて著書でこのテーマに触れたのが、2000年に出した『少子』という本です。30代半ばだった自分がなぜ生みたくないのかについていくつか書いた中で、『痛いので産みたくありません』と挙げたのは覚えています」
【写真】「生物のお世話が本当に向いていない」と語るエッセイストの酒井順子さん
今年1月11日、小池東京都知事が出産時の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩の助成制度を10月から始める、と発表した。そのことについて酒井氏は、「今も残っているとは思いますけど、『痛い思いをして産まないと愛せない』『お母さんが苦労しないと母性は湧いてこない』といった感覚が当時は強かったのが、20数年経ってやっとここまで来たか、と思っていたところでした」と話す。
『少子』で「この先子どもは減って減って減りまくる」と書いた、と説明する酒井氏。「少子化は女性が悪い、ということになっていましたが、産みたい女性はたくさんいるのに、男性側の『子どもを持ちたい』という気概が足りないうえに、社会の体制も整っていなかった。女性にもっとラクに産んで育ててもらおう、という感じはなかったと思います」と当時を振り返る。
保育園の数も足りず、育児は女性の役割とされた当時、「髪を振り乱してがんばらない限りは、働きながら産み育てられない。そんな母親たちを見ても、うらやましいと思えなかったので、産みたくないという結論になってしまいました」と明かす。
しかし時代は大きく変わった。「うちの前に保育園があるのですが、男性が送迎するのも当たり前です。父親にも当然のように子育てへの参加意識があって、家事や子育てができない人はあまりモテないのではないか。保育園が増えて無痛分娩もできる……かといって子どもは増えないですが」。
自分自身は「産まなくてよかった」
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