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蒲田から蒲田へ「たった800m」の新線に集まる期待 渋谷~羽田空港「新空港線」メリットと実現への課題

東洋経済オンライン / 2025年1月31日 19時30分

この不便を解消するために、2つの蒲田を繋ぐ「蒲蒲線」建設の調査費用に大田区が500万円を投じたのは2002年のこと。

ただ鉄道建設の構想自体はもっと前からあり、のちに「住専問題」で世間を騒がせた不動産会社「桃源社」が1988年に本社ビル(現在の大田区役所)を建設する際には、区から受けた「ビルの地下に鉄道を通すスペースを残してほしい」という要請に従ったという。(2004年2月13日・朝日新聞東京地方版より)

ただ当時は、鉄道建設の意義はあくまでも「乗り換え不便の解消」「区内の東西移動の強化」であった。

しかし大田区内のメリットだけで1000億円以上の建設費用を調達することは難しく、「『蒲蒲線』という名称では蒲田エリア内だけの話と思われる」との懸念もあり、2007年に区民協議会で提案された「新空港線」という名称が使われるようになった。

いわば、「新空港線」は先に大田区内の移動事情ありき、空港アクセスは後付け、といった形で建設が促進されてきたのだ。

一方で東急は、羽田空港が2010年の拡張で再び国際空港化したあたりから、訪日客を渋谷に取り込める「新空港線」に関心を寄せるようになる。

東急は「インバウンド」という通称が定着する前から、自社のホームエリアである渋谷への訪日客取り込みに力を注いできた。2010年の時点ですでに「訪日外国人の23%が渋谷を訪れる」(東急総合研究所調べ)状態であり、2023年に閉店した「渋谷東急百貨店本店」跡地に、訪日客・富裕層をターゲットにした外資系ホテルを誘致するなど、積極的なインバウンド誘客の姿勢は変わっていない。

しかし現状では、羽田空港~渋谷間の移動は京急本線・JR山手線の乗り継ぎを要する。一方でJR東日本は2031年の開業を目指して羽田空港~東京駅間の「羽田空港アクセス線」建設を進めており、この新線でアクセスできる「東京駅エリア」「銀座」や、京急空港線から他社乗り入れで直通する「浅草」との地域間競争で、東急の牙城である「渋谷」が埋没しかねない。東急はこういった背景もあり、渋谷~羽田空港間が繋がる「新空港線」建設の話に乗った。

たった800mの鉄道新線「新空港線」は、大田区に「区内移動の改善」、東急に「羽田空港からの新ルート獲得」といったメリットをもたらす。だからこそ、東急は第三セクター会社「羽田エアポートライン」への「39%出資」という形で投資を行い、大田区も「約360億円の建設費用を拠出」という、思い切った負担を打ち出すことができたのだ。

新空港線には課題も

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