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フランス映画の巨匠が撮る「映画への深い愛」 デプレシャン監督に取材、仕事観などを聞いた

東洋経済オンライン / 2025年2月1日 15時0分

――この映画ではアート系映画だけでなく、数多くのハリウッド映画が引用されています。デプレシャン監督はしばしば「アートフィルムだけではなく、娯楽映画も観るべきだ」と語っていますが、人はどちらかに偏ってしまいがちです。そうした“雑食”であることから見えてくるものはなんですか?

よく映画というのは芸術であると言われることがありますが、私はその意見には賛成できません。映画というのは“芸術になろうとしている存在”なのだと思うのです。

これはひとつの例ですが、『ダイ・ハード』という映画の中で、窮地に立たされたブルース・ウィリスが高い建物の外に這いつくばるシーンがあります。窓を開けて入らなければならないところで、銃でその窓を撃つという場面なのですが、この映画というのはアクション映画であり、娯楽映画である一方で、その枠をも超えてなんて美しいシーンなんだろうと思ったんです。アクション映画であっても、エンタメを超えた美しさや芸術性を追求することができるんです。

――しばしばエンタメ映画好きと、アート系映画好きの間には断絶があるように思うのですが、両者のよさをしっかりと受け止めているデプレシャン監督は素晴らしいなと思います。

私の立場としては、映画に関して優劣はない、という考えを持っています。たとえば日本の映画史に残る作品として(梶芽衣子主演の)『女囚さそり』があります。この映画は非常にエロティックで暴力的なんですが、これ以上ないというくらい素晴らしい作品。私にとっては強烈なインパクトがあった映画なんです。

このようにジャンルに縛られることなく、娯楽であるから優れている。あるいはその作家主義の映画だから優れている。もしくは劣っているなんてことはない。私の映画に対する愛というものをわかっていただければと思います。

ほかの映像作品をどう引用?

――この映画には世界初の映画であるリュミエールの作品から、ヒッチコックの『北北西に進路を取れ』、黒澤明の『乱』といった映画、『ダイ・ハード』『ターミネーター2』『マイノリティ・リポート』といったハリウッド映画まで、50本以上の映画のフッテージ映像が劇中に登場します。これはアメリカでいうところの「フェアユース」(一定の条件を満たせばオリジナルコンテンツの一部を他の作品に引用できるというアメリカの著作権法)のような形でつくられているものなのでしょうか?

フランスでは著作権は非常に保護されているので、「フェアユース」的な法律はないんです。ですからこの映画の制作にあたっては著作権の問題をひとつひとつクリアしていかなければならなかった。

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