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貧困で「わずか13歳の少年」が売買される国の事情 日本の野球ファンは知らない、ドミニカ野球の現実

東洋経済オンライン / 2025年2月2日 8時50分

アカデミーと言うと学校のように思えるかもしれないが、移籍がある以上、そこには“金のやり取り”が発生する。①のアカデミーに所属する際に、高い選手で数億円にも及ぶ契約金が発生するのだが、そのおよそ半額以上をアカデミーが受け取る慣習があるのだ。

10代前半の少年たちに、しっかりと“値付け”がなされ、そこで得た金銭によって、また次の世代の少年たちが英才教育を受ける……。

モラトリアムを持て余し、大学を休学してこの国にやって来ていた筆者には、驚きが大きかった。

しかし、②のアカデミーが収益を上げる方法はもう1つあった。それは、②のアカデミー同士で選手を売買することである。

例えば、有望な選手が零細のアカデミーから大手のアカデミーに移動するのだ。その際に移籍金が発生する。

前回の記事で、②のアカデミーも日本人が想像する以上に環境が充実していると述べたが、それでも運営が厳しいアカデミーは存在する。そんな零細のアカデミーにとって、すぐにお金が入ることは喜ばしいことだ。

もちろん、何億円という金額ではない。数十万円、いや数万円になることもあるという。もはや、選手を何としても契約させて、手数料を得ることが必要不可欠なほどに金銭的に逼迫しているアカデミーも、中には存在するのだ。

そのためにアカデミーは選手を成長させる。選手を夢の舞台に立たせるためというよりお金を得るために。そして、少しでも手数料を得るために。

だからこそ、ドミニカの野球の循環が幼少期の選手たちに、自分が商品である認識を強く植え込ませる。幼少期から、彼らは格差に気づくことになるし、その格差によって、生活すら変わってくるのだ。

若くない選手はアカデミーにとっては「負債」

他方で、有望でない選手や、年齢がそこまで若くない選手たちは、行き場に困ることがある。「若くない」と言うと、日本人の読者は20歳以上の選手を想像するかもしれないが、ドミニカではそうではない。

17歳~18歳の選手でも、この国では「若くない選手」扱いをされる現実がある。

前述したように、メジャーの下部組織を目指すアカデミーは千差万別であり、そこの経済状況はそれぞれによって大きく異なっている。

若ければ若いほど契約金が高くなる可能性がある一方で、成長が遅い選手は、アカデミーにとっても負担になる。1人ひとりにかかる食費など生活コストを賄わなければならないからだ。限られたリソースしか割くことができない零細コミュニティにとって、それはもはや「負債」なのだ。

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