貧困で「わずか13歳の少年」が売買される国の事情 日本の野球ファンは知らない、ドミニカ野球の現実
東洋経済オンライン / 2025年2月2日 8時50分
だからこそ、「売れる時に売る」という意味でも、選手の移籍(売買)はアカデミーにとって重要になってくるし、しっかりとしたアカデミーほど、「損切り」という感覚を持っている。
損切りされた若者たちのその後の人生
実際に、このリアルを私は身近な所で体感した。
帰国後に、私の所属していたアカデミーの練習風景をSNSを通じて見た。同じ時期にトレーニングをしていた16歳前後の選手たちの複数人が、すでにいなくなっていたことに気づいた。
アカデミーの方に彼らの行方について尋ねたところ、1人は進捗が遅いから他に送ったという連絡を受けた。
また、もう1人の選手は、もともと別のアカデミーから買ったと聞いていた選手だった。その選手はメジャーの下部組織を目指すアカデミーにおいて、2度も“人身売買”されたことになるのだ。
私は売られた選手とSNSで繋がっているため、彼のアカウントを覗いてみた。彼は私と出会った当時に過ごしていたアカデミーでは売られてしまったが、今でもマイナーの下部組織に買われるために夢を追いかけている姿を確認することができた。
彼は何度売られても、相変わらず大きな舞台に立つことを志していたのだ。
ポジティブな人身売買が、強い野球界をつくる
関係者の話を聞くと、20歳にしてはじめてマイナー契約を掴み取り、メジャーリーグの舞台に立つ選手も存在すると聞いた。もう若くない年齢でも、可能性はゼロではないのだ。
幼少期からのエリートであれば、潤沢な資産を元に成長することができるが、それがすべてではない。
彼はエリートの道から外れて、若い時にマイナー契約を勝ち取ることはできなかった。それでも、彼がメジャーリーグの舞台に立つ可能性はあるわけだし、私は彼の動向をこれからも追っていきたい。
人身売買と聞くと、大人のエゴだけで作られた世界を暗示させられる。しかし、ドミニカでは、人身売買によって多くの人が明日に対して希望を持つことができる。そして、夢やぶれた元野球少年たちの死屍累々の上に、美しい夢は次の世代へと紡がれていくのだった。
【もっと読む】貧困国ドミニカで「野球選手」夢見る少年の"悲哀" インスタに「お金の絵文字」が書かれているワケでは、ドミニカ共和国の少年たちがインスタに「お金の絵文字」を書く切実な理由についてライター・ナックルボーラーの赤川琉偉さんが詳細にお伝えしている。
赤川 琉偉:ライター・ナックルボーラー
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