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「元リク」が日本サッカーを史上最強にした理由 人材輩出企業「リクルート」強さの秘密【前編】

東洋経済オンライン / 2025年2月6日 10時0分

きっかけになった出来事がある。村井氏は地元・浦和で「Jリーグの理念を実現する市民の会」を立ち上げて活動していた。2013年、村井氏の発案で、この会で初代チェアマンの川淵三郎氏に講演を依頼した。浦和のパルコに400人の聴衆が集まり、会は盛況に終わった。

このとき、川淵氏が語ったJリーグの理念に村井氏は大いに感動する。そのあまり、録音していた2時間のテープを手書きの文字で書き起こし、それを何度も書き写す“写経”を始めた。

ある日、理事会でJリーグ本部を訪れた時、本部にいた川淵氏に「その節は浦和までお越しいただき、ありがとうございました」と言って、その写しを渡すと、川淵氏はいたく喜んだ。

川淵氏は2002年にチェアマンを退任し、このときは名誉顧問であり、次のチェアマンを選ぶ立場にはない。しかしJリーグの創業者である川淵氏が隠然たる力を持っていたのは間違いない。

当時のJリーグは発足当初の熱気が冷め「代表戦は超満員だがJリーグは閑古鳥」という窮状が続いていた。Jリーグチェアマンに求められていたのは、サッカーの強化より、経営の強化だった。

経営者として文句なしの実績を持ち、自分が掲げたJリーグの理念を極めて正しく理解していた村井氏を川淵氏がチェアマンに推したのは想像にかたくない。

チェアマンになった村井氏が最初にやった改革が「役員の360度アンケート」。Jリーグの役員をチェアマンが評価するだけでなく、同僚や部下からも経営力や執務態度を評価してもらう制度だ。チェアマンの村井氏も、同僚の役員や本部長、部長などから評価を受けた。

これはリクルートの江副浩正氏が創業期から実施していた制度だ。村井氏は言う。

「自分が思う自分の姿と他人が見る自分の姿は随分と違う。自分を正すには鏡を見なくちゃダメなんですね。Jリーグ全クラブの経営者からも毎年1回、無記名で評価をいただき、結果を公表していました」

良いことも悪いことも全部、外部の目にさらす。これを村井氏は「天日干し経営」と呼ぶ。オーナーでもない人間が10年、20年、30年と組織のトップに君臨し、会社の意思決定がその人物への忖度でねじ曲がる事例が頻発する今、村井氏はこう指摘する。

「魚と組織は天日にさらすと日持ちがよくなる、なんて周囲には説明しています。人の目にさらすというのはつらいけど、組織を健全に保つにはやっぱり必要なんです」

「わからないことがあったらお客さんに聞け!」

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