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内田樹「日本には"お節介な人々"が一定数必要だ」 関東と関西で"おせっかい人口"には差もある

東洋経済オンライン / 2025年2月7日 12時0分

――PTAは縮小傾向という学校もあるのですが、世の中のお節介も縮小されてもいいのでしょうか?

そうですね、でも、どんな集団でも、一定数のお節介な人は必要だと思うんですよ。全員がお節介になる必要はありませんが、一定数は要る。昔からお節介なおじさん、おばさんというのは必ずいたわけですよ。

全体の15%くらい、大人7人に1人くらいの割合でお節介な人がいた。「早く結婚しなさいよ」とか「子どもはまだなの?」とか「仕事はうまくいってるの?」とか、よけいなことを訊いた。

お節介は「一定数」必要

もちろん多くの人は、そういうのを「余計なお世話だ」と思って聞いていました。だから、周りの全員がお節介だったら、ほんとうに迷惑だと思うのです。でも、一定数は必要だと思うんです。お節介な人は差し出がましいことを言いますけれど、言った責任はとってくれる。見合いの相手を探してきたり、仕事を紹介してくれたりする。

こういう議論をするときは、どうしても「善いか悪いか」の議論になるのですけれど、これは「善し悪しの問題」ではなく、「程度の問題」なんです。ゼロか100かという話じゃなくて、さじ加減の問題だと思うんですよ。お節介な人はいすぎても困るし、いなくても困る。

僕の知り合いに、奥田知志さんという牧師がいます。北九州でホームレスの人を支援する抱樸(ほうぼく)というNPO法人をやっている人です。奥田さんはホームレスの人のところに行っては「お弁当いる?」とか、「住むところあるよ」とか「仕事紹介しようか」と話しかける。

でも、始めのうちはほとんど「余計なお世話だ」と断られるんだそうです。次に訪ねてもまた断られる。でも、奥田さんは止めない。これを奥田さんは「助けたろかのインフレ」と言っているんですが、とにかく断られても断られても「助けたろか」と言い続ける。

すると、そのうち向こうが根負けして、ある日「助けて」って言うんだそうです。一度声がけをしたときに「助けなんか要らない」と言われて、「ああ、そうですか」と引き下がったらそこで終わってしまう。でも、奥田さんは止めない。

誰がどのような種類の支援を必要としているのか

奥田さんに伺ったら、助けてほしいと心の中で思っている人でも、「助けて」と口に出すには覚悟が要るんだそうです。ホームレスの人はしばしば自己評価が低すぎて、自分は誰かの支援を受けるに値しないと思っているから。だから、しつこく「助けたろか」とお節介を続けるしかないんだ、と。

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