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医師不足に拍車をかける「偽りの働き方改革」 "自己研鑽""宿日直"で働かせ放題という現実

東洋経済オンライン / 2025年2月7日 8時0分

(写真:sasaki106 / PIXTA)

コロナ禍を経て、巨額赤字を抱えた病院の姿が露呈しつつある。『週刊東洋経済』2月8日号の第1特集は「病院 大淘汰」だ。閉院が相次ぐ都市部や地方の実態に加えて、改革が成功し高成長を遂げた病院の実例など、医療の現場の今に迫る。

「晨伍(しんご)が命を絶った日、警察が撤収し深夜に残された家族3人、私たちは床にひざと手を突き茫然とするばかりでした。専攻医になり職責に邁進していた晨伍が26歳で過労死被害者になるとは思いも寄りませんでした」

【図解】線引きが曖昧な「自己研鑽」と「労働」

神戸市の病院「甲南医療センター」の髙島晨伍医師(当時26)がうつ病に罹患(りかん)し自殺したのは長時間労働が原因だとして、病院を運営する公益財団法人と理事長に対し損害賠償を求める裁判が係争中だ。

2024年4月、大阪地方裁判所で開かれた第1回の口頭弁論で、原告で髙島さんの母の淳子さんは、当時を振り返り、涙ながらに意見陳述した。

病院側は「自己研鑽」と主張

髙島さんは神戸大学卒業後の2020年、甲南医療センターに研修医として採用され、2022年4月から消化器内科の専攻医(後期研修医)として勤務。病院の専攻医研修プログラムに従事しつつ、先輩医師と同じように通常の診療に当たっていた。

ところが「もう限界です」と遺書を残し、2022年5月、自死した。さまざまな業務のほかにリポート作成や学会発表の準備なども重なったことが影響したとみられる。

西宮労働基準監督署は亡くなる直前1カ月の時間外労働は207時間、3カ月平均でも月185時間を超えるなど、国の認定基準を大幅に超過し、長時間労働で精神障害を発症したのが原因だとして労働災害の認定をした。病院が設けた第三者委員会の認定した時間外労働時間も、労基署のものとほぼ同様だった。

だが、損害賠償訴訟の答弁書で病院側は、髙島さんの業務量は「標準的なものだった」と主張。病院の記録では時間外労働時間は亡くなる前の月が30.5時間、亡くなった月はゼロとした。この数字は労基署や第三者委の認定したものと懸け離れる。

病院側は、専門医資格取得のための研修プログラムや学会発表の準備は、あくまで医師が知識や技能を習得するための「自己研鑽」であって労働には当たらず、「在院時間すべてを機械的に労働時間と考えることは大きな誤り」などと主張している。

2024年4月から医師の働き方改革が始まり、勤務医に残業時間の罰則付き上限規制が導入された。上限は年960時間(月平均80時間)で、研修医などには特例で年1860時間(月平均155時間)まで認められる。

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