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山火事にならない?「野焼き」が現代に復活の理由 春を告げる野焼きは全国で100カ所以上で実施

東洋経済オンライン / 2025年2月9日 7時15分

2月1日の野焼き作業が順調に終わったのは、その1週間前、1月25日の土曜日に約100人が集まり、防火帯作りなどの作業を済ませたからだ。利根川上流域の群馬県みなかみ町藤原で活動する「森林塾青水」などの市民団体、京都大学、東京農業大学、名古屋の名城大学など参加者は全国から駆け付けた。しかし、前日の雨で着火が難しいとの判断から、野焼き自体は1週間延期された。

生態系や生物多様性の保全に関心がある人たちの間で、1月末に行われる小貝川の野焼きは有名だ。2000年に始まり、今回で25回目になる。

主催者は、茨城県常総市の市民らがつくる「自然友の会」。茨城県自然博物館の強力なサポートのもと、常総広域消防署、下館河川事務所への野焼きの申請、河川敷にある畑など私有地の地権者や近隣住民の理解を得るなどの手続きを行う。

会長の的場伸一さん(72歳)によると、1986年8月の小貝川の水害を受け、河川敷のクヌギ林の伐採が計画されたことが発端。伐採は、大雨により川が増水した際の水の流れをスムースにするためだったが、ここには絶滅の恐れがある植物が何種類もあることがわかっていたため、反対の声が上がった。地元の高校の生物の教師などが中心になって自然観察を行っていた「自然友の会」は粘り強く署名活動や交渉を行った。

その結果、国土交通省の理解と協力を得て、核心部分の樹林が残された。その後、希少な植物の保全策の一環として、野焼きが始まった。もともと農家の人たちが病害虫駆除などのため、野焼きを行っていたのを復活させた形だ。

野焼き準備作業の参加者に配布されたもの

地元の水海道地区は、かつて鬼怒川を行き来する舟運の要所として栄えた街。的場会長は「『絶滅危惧種の植物を守れないようでは、水海道の市民の文化度が問われる』という私の前の会長の言葉を胸に会の活動を続けてきた」と話す。

1月25日の野焼き準備作業の参加者には、「常総市小貝川淵頭地先およびその周辺の絶滅危惧植物」として19科29種をリストアップした紙が配られた。茨城県のレッドリストで近く絶滅の危険性が高い「IA類」、環境省のレッドリストにも載るタチスミレやヒメアマナが含まれている。

準備作業では、生きもの観察を続ける地元の団体のメンバー親子や、茨城県立下館第一高校の生徒など子供たちが活躍。作業の指導をした西廣さんは50代、小幡さんは60代、的場会長は70代と各世代にまたがる人たちがリードし、大学生や小中高生がよく動いた。「次の世代が育っていることがなんともうれしい」と的場会長は声を弾ませた。

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