ロシアがなんだかんだでしぶとさ保つ最大の武器 それは陸軍でも海軍でも、はたまた核兵器でもない
東洋経済オンライン / 2025年2月10日 15時0分
まもなく3年目に入るロシア・ウクライナ戦争。長期化する戦況の中で、あらためて見えてきたロシアの最大の武器とは何か。それは陸軍でもなく、海軍でもなく、はたまた核兵器でもなく、天然ガスと石油かもしれません。
地政学動画で平均150万回再生を記録する社會部部長が、不変の地政学の法則を解説した『あの国の本当の思惑を見抜く地政学』より一部抜粋、再構成してお届けします。
ドイツがウクライナを落胆させた理由
2021年末からロシア軍がウクライナ国境に続々と集結しつつあったとき、アメリカ、イギリス、バルト三国、ポーランドなどがすでにウクライナにミサイルや弾薬といった兵器を提供し始めていました。この流れで、誰もが期待を寄せたのがドイツです。ヨーロッパ最大の経済大国でNATOの中核を成すこの国が、一体どんな強い兵器を供与するのか。ウクライナとNATO加盟国は期待しました。
しかし、ドイツが供与したものに一同はがっかりしました。なんとドイツが供与したのは、ヘルメット5000個のみだったからです。元々ドイツが平和主義的で攻撃兵器の供与には慎重だったことを差し引いても、「もう少し踏み込んだ防御兵器を提供したり、ヘルメットにしてももっとたくさん供与できたりしただろう」と非難が殺到しました。
ウクライナ外相はドイツの対応について「失望した」と語り、アメリカでも一部の議員が「ドイツは信頼できない同盟国」と苦言を呈するほどでした。この展開は、日本が湾岸戦争の際に資金援助だけをしたときの各国の落胆を彷彿とさせます。
では、一体なぜドイツはここまで兵器を出し渋ったのでしょうか。その答えは、ロシアへのエネルギー依存です。ドイツは過去数十年、エネルギー資源をロシアから大量に輸入しており、ウクライナ侵攻前まで輸入全体に占めるロシア産エネルギーの割合は、石油が34%、天然ガスは55%に上っていました。
工業国であるドイツでは、大規模な電力と製造業にロシア産の安い天然ガスが大量に使われていました。また、厳しい冬にも暖房の燃料として天然ガスが欠かせませんでした。ドイツはハートランドからパイプラインを通って送られてくるこの必需品が、ロシアを刺激することで停止されるのを恐れたのです。
1904年に発表されたハルフォード・マッキンダーの地政学の古典『歴史の地理的枢軸』は、このハートランドの膨大な天然資源を分析の基礎としていました。「ユーラシア大陸の奥深くには石炭や石油などの資源が膨大に眠っており、ロシアはこれを使ってユーラシア大陸全体の征服を敢行する」と予言したのです。
この記事に関連するニュース
-
ロシアーウクライナ戦争が起こった歴史的な必然 「東欧を制する者が世界を制する」100年前の格言
東洋経済オンライン / 2025年2月5日 15時30分
-
トランプ大統領は本当に日本から米軍を引き上げるのか…「遠い国の戦争」に首を突っ込む米国の真の狙い
プレジデントオンライン / 2025年1月24日 8時15分
-
停戦に向けてウクライナに残された3つのシナリオ トランプ新大統領は早期停戦をまとめられるか
東洋経済オンライン / 2025年1月17日 8時0分
-
天然ガス世界5位の生産国カナダの「見事な決断」 ウクライナ侵攻によるエネルギー危機を救う
東洋経済オンライン / 2025年1月16日 16時0分
-
天然ガス最大手ガスプロムは収益半減、「影の船団」も制裁で、プーチンの軍資金が危機に
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月15日 19時16分
ランキング
-
1「元の生活に戻れるのか」…八潮の陥没事故から2週間、下水道利用自粛・電話不通・通学路変更
読売新聞 / 2025年2月10日 20時52分
-
2伊東地方創生大臣が「尿路感染症」で入院 今週中の閣議や国会審議欠席の見込み
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年2月10日 22時32分
-
3昨年6月から行方不明の52歳妻を遺棄した疑い、35歳男を逮捕…遺体は見つからず
読売新聞 / 2025年2月10日 20時43分
-
4市議宅が全焼し焼け跡から遺体、12歳長女と連絡取れず 大阪・大東、市議と次男も負傷
産経ニュース / 2025年2月11日 6時22分
-
5奈良県で道路下に空洞疑い38か所、レーダーで検査へ…大型下水管に異常なし
読売新聞 / 2025年2月10日 19時12分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)