「中東の近代化」日本との共通点で見えること 歴史を通して緊迫する中東情勢の今を考える
東洋経済オンライン / 2025年2月10日 16時0分
日本では、19世紀前半はまだ鎖国時代であるが、長崎の出島で活動した人たちが記録を残している。最も有名なのがフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(1796~1866)である。
彼が最初に来日したのが1823年だったので、ナポレオンのエジプト遠征より20年ほど後だが、19世紀前半という意味ではほぼ同時代といってよいだろう。シーボルトはドイツ人であるがオランダの使節に紛れ込んで入国し、江戸にも随行しており、その際に資料を収集したようである。
最終的には日本の地図を持ち出そうとした「シーボルト事件」(1828)で追放処分になったものの、開国後の1859年に再来日を果たしている。彼が残した『日本博物誌』(1823)は、日本の当時の状況を知るための貴重な資料である。同じようなかたちで西洋の技術を使って現地を描写することが、エジプトでも行なわれたのだ。
だが、『エジプト誌』の方が、『日本博物誌』よりもはるかに組織的な学術調査に基づいている。
西洋との遭遇を技術の受容という観点から見るとすれば、アラブ世界、もっと広く言えば中東も日本とよく似た体験をしている。ただし、中東は地理的にヨーロッパとは地中海を挟んだ裏庭的な位置にあることもあり、西洋との遭遇は時期的には日本より半世紀近く早いのである。
出発点は似ていたエジプトと日本だが
エジプトと日本の両者の出発点は似ていたが、その後の過程は大きくかけ離れていった。中東においても、西洋の圧倒的な技術力を前にどのように対応するかということで、様々な議論が起こり、実際に改革も行なわれた。
しかし、結果的にはそのような試みは失敗して植民地化されていった。対照的に、日本の場合は独立を保ち、むしろ逆に明治以降は列強諸国の仲間に入っていった。2つの国の分かれ目はどこにあるのか? この問いが、19世紀における開国という事態を考える際に非常に重要になる。
実際に現地の人たちの間でも、なぜ日本が「近代化(西洋化)」に成功し、中東は失敗したのか、と対比されて問題が語られることもあることを改めて強調しておきたい。
臼杵 陽:日本女子大学教授
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