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真の読解力を鍛えるために真っ先にするべきこと 読解力を構成する「3つの力」とは?

東洋経済オンライン / 2025年2月11日 16時30分

もう少し実際に即して表現すると、こうなる。

抽象化とは、絵に描きにくいような表現に言いかえること。

具体化とは、絵に描きやすいような表現に言いかえること。

「言いかえる力」とは、単語レベル、文レベル、文章レベルで抽象化・具体化することにより、発信者の抱いているイメージを受信者に対しありのままに届ける(あるいは受信者がありのままに受け取る)ための力である。

「どう違うか?」くらべる力──対比関係整理力

東京都と北海道は、どう違うか。これを説明した次の4つの文のうち、「分かりやすい」と言える文は④だけである。

①「東京都は狭いが、北海道は涼しい」

②「東京都は狭いが、北海道は広くて涼しい」

③「東京都の面積は約2200平方キロメートルだが、北海道は広い」

④「東京都は狭いが、北海道は広い」

①は、「対比の観点」が統一されていない。「面積」の観点と「気温」の観点とが混在している。「対比の観点」とは、くらべる際の「見方」のことである。「どのような点でくらべているか」ということだ。

②は、対比の観点のバランス(パーツの数のバランス)が悪い。後半だけ観点が2つある。

③は、対比の観点が面積に統一されてはいるが、前半は具体的、後半は抽象的であり、これも対比の観点のバランス(抽象度のバランス)が悪い。

④は、観点が統一され、パーツの数も抽象度も、バランスがよい。

①~③のような形を避け、④のように整理する力を、「くらべる力」と呼ぶ。

会話なら伝わっても、文章では不十分

「なぜか?」たどる力──因果関係整理力

「たどる」というのは、次の図のように、各地点を一つずつ進んでいくイメージである。

「なぜ遅刻したんだ?」という教師の問いかけに「朝、寝坊したからです」と生徒が答える。普段の会話なら、これでも伝わるかもしれない。しかし、文章をより正確に読み解こうとする場面や、相手を説得するための文章を書くような場面では、不十分である。

私たちは、ついつい、結論「ウ」から遠いところにある「ア」を答えてしまう。しかし、たとえ寝坊しても、遅刻せずに間に合うことが多いのではないか? 実際のところ、寝坊して遅刻に至る確率は、せいぜい10パーセント程度ではないのか。ならば、妥当な「遅刻の理由」は、ア「寝坊したから」だけではなく、「朝、寝坊したことで、家を出るのが遅れたから」(ア+イ)ということになる。

このように、相手の常識に頼ってしまい抜けがちになる「イ」を入れて、より丁寧に要素をたどっていくのが、「たどる力」の基本である。いわば、急行列車を各駅停車にする力、それが「たどる力」である。

ここで説明したのは発問力・読解力の根幹となる3つの技能についてだ。私たちの世界には、もともと傍線など引かれていない。その世界を見ている、感じている人間が自ら、「これは、どういうことなのだろう?」「これは、あれとはどう違うのだろう?」「これは、なぜなのだろう?」と疑問を持ち、問いを投げかけ、その答えを自ら見出すことで、発問力・読解力は高まっていくのだ。

福嶋 隆史:横浜国語研究所代表取締役

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