徴兵を逃れ、軍から脱走したミャンマー人の前途 現地ルポ ミャンマー・タイ国境での支援活動
東洋経済オンライン / 2025年2月11日 15時30分
CDM(市民不服従運動)をしていたミャンマー人たちが集まるシェルターで支援団体のMother Embraceが食事のサポートをしている様子。ここには100人ほどの人たちが共同生活をしていた(撮影:筆者)
この2月1日でミャンマーの軍事クーデターから4年が経過した。軍政が徴兵制を導入し、多くの若者が強制的に軍に招集される中、徴兵から逃れたり、軍から脱走したりした人々をタイ北部で取材した。彼らの証言から、ミャンマーの現状と前途を探った。
ミャンマーの最大都市ヤンゴンでタクシー運転手として生活していたナインさん(仮名・35歳)は2023年春、突然、徴兵を通知された。
「頭が真っ白になりました。なぜ自分が選ばれたのか、わけがわかりませんでした」
仕事で家を留守にしている間に役場の人が来て告知された。当時はまだ徴兵制が施行される前だった。
「おそらく民主化デモに参加していたことで役所にマークされていたのでしょう。私の家は貧しかったから、優先的に徴兵リストに載せられます。金持ちの家族よりも価値が低い。そう思われていたと思うとやるせないです……」
徴兵から逃亡、家族を守るために国外脱出
「妊娠中の妻を残して逃げるのは本当に心苦しかった。でも早く逃げないとすぐに追手が来て軍に連れていかれてしまう」
会社から借りていたタクシー車両をその日の夜に返し、バスを乗り継ぎ、ヤンゴンから西の方向にあるエイヤワディ管区(地域)の町中に隠れた。そして半年以上が経った後、数人の協力者に妻を連れてきてもらった。彼女は2023年11月に無事に男の子を出産していた。
「こんな事態とはいえ、我が子の出産に立ち会うことができなくて、妻には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした」。ナインさんは生まれたばかりの息子の小さな手を握り、家族のためにこの現状を抜け出すことを決意した。
その後、彼は家族を連れてタイとの国境の街ミャワディへ避難した。さらに「中国カジノ」があるシュエコッコの近くに移り、1年近くトウモロコシやサトウキビ、唐辛子の栽培をし、わずかな収入を得て生活していた。しかし、その地でも戦闘が頻発するようになり、2024年末にタイへ渡ることを決意した。
「国境を越え、知らない人ばかりの土地に逃げるのは本当に怖かった。仕事が見つかるのか、妻や息子を食べさせていけるのか。そんな不安でいっぱいでした」
徴兵から逃れてきたので、国境を越えるときに連れ戻されるのでは、との心配もあった。幸い、友人の紹介で「Mother Embrace」というミャンマー人支援団体が出国の際の援助を申し出てくれた。
タイに渡ったのは2024年のクリスマス。 持病の腎臓病に伴う身体の痛みが応えたが、はじめて自身が安全な環境に置かれたことを実感したという。
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