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徴兵を逃れ、軍から脱走したミャンマー人の前途 現地ルポ ミャンマー・タイ国境での支援活動

東洋経済オンライン / 2025年2月11日 15時30分

「船の修理に携わっていたので、私は暴力を直接見たことはありませんし、市民に危害を加えたこともありません。それだけに、同じ仲間がひどいことをしているのを知って恥ずかしい思いで胸が一杯になりました」

ウェイさんは家族と相談のうえ、2024年12月に軍からの脱走を決意。上層部に知られないように慎重に準備を進め、わずか1日でタイとの国境の街ミャワディへ到達。そこからMother Embraceの協力を得てタイへ逃れた。

「脱走兵なので、見つかった場合の懲罰を覚悟していましたが、国境にたどり着くまで特に危ない目に遭ったことはなかった。軍のチェックポイントは15カ所以上だったでしょうか、数えきれないほどありましたが、身分証を見せることで問題なく通過することができました。家族旅行だと思われたのでしょう」

あえて変装などしないで、最小限の荷物で移動したことも功を奏した。ヤンゴンを出てから国境に着くまで計画的に非常に素早く動いたので、軍側に感づかれることがなかったという。

「ここに来た当初は、新しい場所で戸惑いがありました。また一から勉強です。でも本当にありがたいことに、団体が生活の支援をしてくれるので何とかやれています」

今も脱走兵から多くの相談が寄せられている

驚いたことに、かつての軍の同僚がここに来ていたことも知った。

「ここの案内や世話をしてもらえて、何より私と同じ気持ちで脱走した人がここにもいたことで希望を感じました」

ウェイさんは今、新たな環境での生活に適応しながら、次の仕事を探している。そして「誤った道を進めば国は滅びる」と断言した。

私はインタビューの最後に、「残してきた部下たちに伝えたいことはあるか」と尋ねた。

「人によって気持ちは違いますから、あれこれ言うつもりはありません。国民に対する行為が正しいと思っているのなら、それはそれで仕方がないことです。ただ、正しくないと思うなら軍を辞めて逃げてきてください」

今もMother Embraceには多くの相談が寄せられている。2022年、団体の立ち上げから今まで助けた脱走兵はその家族も含めて500~600人にもなる。徴兵から逃げてきた若者は400人以上という。

ナインさんやウェイさんのように実際にタイ側に渡る人もいれば、民主派勢力に加わって軍と戦う道を選ぶ人もいる。むしろそちらの方が多いとタンミインアウン代表は語る。

「私たちは活動資金を民間の善意に頼っています。ですので、状況によっては助けられず、哀しい判断をしなければならないこともあります。国際的なドネーションに頼れば救えた人もいる。そこがとても悔しい」

そして、国民が国を見限らなければならないこの現状は、ミャンマーの軍が倒れない限りずっと続くとタンミインアウン代表は予想する。同氏は「これからもできる限り、この活動を続けていく」と力を込めた。

武馬 怜子:報道写真家

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