佐藤二朗、「芝居の垢を排除したい」 持つ者と持たざる者の境界線を描いた書き下ろし戯曲で宮沢りえと舞台初共演【インタビュー】
エンタメOVO / 2024年10月25日 8時0分
佐藤二朗が脚本を務める舞台「そのいのち」で宮沢りえと舞台初共演を果たす。本作で描かれるのは、持つ者と持たざる者の愛と憎しみの「境界線」。俳優としてもさることながら、演劇ユニット「ちからわざ」の主宰を務め、全公演で作・出演を担当する佐藤が、ミュージシャン中村佳穂の同名曲にインスパイアされ、12年ぶりに書き下ろした新作戯曲だ。佐藤に本作に込めた思いを聞いた。
-介護ヘルパーとして働く山田里見と、彼女の雇い主で障害のある相馬花とその夫・和清の関係を描いた本作で、主人公の山田里見を宮沢りえさんが演じます。宮沢さんの魅力をお聞かせください。
『紙の月』というりえちゃんが主演した映画を見て、なんて抑圧されるのが似合う俳優なんだと思いました。けれど内には熱く、強い何かを秘めている。そんな独特のオーラを持つ俳優だと思います。
-今回は、中村さんの楽曲からインスパイアされて書いた作品ということですが、それはいつ頃のことですか。
ちょっとはっきりは分からない。5年くらい前かな。
-そうすると、構想期間が長かったんですか。
これを書いたのは結構前なんですよ。構想から書き終わるまでは何年もかからなかったです。何カ月というレベルだと思います。
-「中村さんの曲が劇中でかかる、そんな物語を書きたい」とおっしゃっていましたが、こんなお話でここでかけたいというのはすぐに決まったのですか。
いやいや、全然。インスパイアとは言いますが、とにかくその曲にグワーンと衝撃を受けて、とにかくこれが流れる物語を書きたいと思ったはいいものの、もちろん物語は全然思いつきませんよ。ただ、僕は中村さんの「そのいのち」という歌は、人間への讃歌、命の讃歌だと受け取って。命の讃歌だと受け取ったこの楽曲が流れる物語としては、例えば、黒い部分や人間のきれいごとだけではないところ、生くさいところ、ドロドロしたところまで描かないと“命の讃歌”にはならないというくらいは思ってはいましたが、物語は全然その後に思いついたというところです。
-「持つ者と持たざる者の間の溝」というキャッチコピーがあり、そうした物語が書かれた作品になるのだと思いますが、佐藤さんご自身はそうした溝や境界線について何かお感じになっていることはありますか。
ごめんなさい、正直にいうとキャッチコピーは僕が考えたものではないんです。なので、いいキャッチコピーだとは思っていますが、僕自身はあまりこれに対しては何も思っていないです。もちろんこの時代なので、溝はない方がいいに決まっているし、共生できる社会がいいはずです。ただ、この作品では「負を力に」という思いがどうしても僕の中にあって。なので、僕個人は、境界線や溝どころか、負があるからこそ何かすごい力を発揮したりするところを見てみたい。溝や境界線の有無さえも超越した力を信じたい気持ちがあります。
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