秋の味覚「栗」 食べているのは果肉ではなく種だった？

ウェザーニュース

焼き栗、ゆで栗、栗ごはん…秋を代表する食材のひとつが栗です。鋭いイガに包まれた栗の実は、一般的にひとつのイガに3つ入っているそうです。イガから取り出したら、さらに皮をむいてから食べるのですが、ふだん食べているものは果肉か、種か不思議に思ったことはありませんか？　詳しい話を茨城県の栗生産農家、星政和さんにお話を伺いました。

果肉だと思っている部分、じつは種

栗は「ブナ科クリ属」の木で、原産地はアジアからヨーロッパ、北アメリカなど広く分布しているそうです。

「イガから取り出した栗は、さらに鬼皮と渋皮という2重の皮に包まれていて、ふだん私たちがむいているのは鬼皮。他の果物でいうと、イガが皮にあたる部分なので、皮と思われがちな鬼皮は果肉にあたります。だからいつも食べている部分は渋皮つきの種(種子)ということになります」(星さん)

つまり、栗はアーモンドやクルミなどと同じように種子を食べる種実類なのです。

スーパーで出回っている、ツルツルした鬼皮はきれいな栗色をしていますが、まだイガが緑色で開いていない時は真っ白で、少しだけ果肉の名残が感じられると言います。

「これを天日干しすると見慣れた栗色に変化します。台風などで青いまま落ちてきたイガを開けると、白い栗を見ることができますよ」(星さん)

女性にうれしい栄養がたっぷり

種実類の栗には、多くの栄養素が含まれているそうです。栗の栄養について、管理栄養士の柴田聡美さんに伺いました。

「栗は、糖質やビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、食物繊維などが豊富に含まれた栄養の優れた食材です。

糖質はほとんどがでんぷんで、食べるとブドウ糖に変化し、エネルギー源となるので多くのエネルギーを摂ることができます。

ビタミンCには抗酸化作用があり、紫外線の悪影響を軽減して肌の老化を防ぐ働きがあります。またビタミンCはコラーゲンの合成にも必要なので、美肌を目指す女性にはうれしい成分ですね。さらに栗のビタミンCはでんぷん質に包まれているため、加熱してもその効果が損なわれにくいというメリットがあります。

ビタミンB1とB2は、疲労回復や肌・粘膜の健康維持に役立ちます。食物繊維は腸内環境を整え、善玉菌を増やして、体を中からきれいにしてくれます」(柴田さん)

栄養素を十分にいかすために、調理の仕方も工夫すると良いそうです。

「栗の内側の渋皮は、むいて食べることが多いと思いますが、この渋皮の部分にはタンニンというポリフェノールの一種が豊富に含まれています。タンニンには強力な抗酸化作用があり、ビタミンCと同じように肌の老化を防止する効果があります。渋皮煮にすれば、皮の渋さも気にならないので、おいしくタンニンを摂ることができます」(柴田さん)

秋が旬の栗は、生栗や甘栗のほか、水煮やペースト、バターやジャムなどさまざまに加工されています。優しい甘さやコクのある味を楽しみながら、栗の“種”を存分に味わってみてはいかがでしょうか。