これからの季節を彩る名花、牡丹と芍薬の見分け方
ウェザーニュース / 2024年5月7日 9時0分
花の中にはツツジとサツキ、モクレンとコブシのように、判別が難しいものがあります。これからの季節に華やかな大輪の花を咲かせる牡丹(ぼたん)と芍薬(しゃくやく)も、見分け方が難しい花といえるでしょう。
牡丹と芍薬はどう見分けたらいいのか、またそれぞれの特徴を、公益財団法人日本花の会研究員の小山徹(こやま・とおる)さんに伺いました。
牡丹はどんな植物なのか
牡丹はどのような植物で、原産地はどこなのでしょうか。
「牡丹はボタン科ボタン属の落葉低木(木本)で、樹高は100~150cmくらいです。耐寒性は強く、耐暑性は弱いという特徴があります。開花期は4月から5月で新しい葉が出てから咲き、晩春の花といえるでしょう。
原産地は中国。8世紀ごろに、中国から薬用植物として日本に伝わったそうです。その後、鑑賞目的で栽培されるようになり、江戸時代には数多くの園芸品種が作出されました。残念ながら現在栽培されている品種の多くは、明治以降に作出されたものです」(小山さん)
芍薬はどんな植物なのか
芍薬はどのような植物で、原産地はどこなのでしょうか。
「芍薬もボタン科ボタン属ですが、木本(もくほん)ではなく草本(そうほん)です。樹高は60~120cmと、やや低くなります。耐寒性は強く、耐暑性は普通。開花期は5月から6月で新しい葉が出る前に咲き、初夏の花といえるでしょう。
原産地は中国東北部からシベリア(ユーラシア大陸の東北部)。平安時代に薬草として伝えられたとされ、その後鑑賞目的に多くの園芸品種がつくられました。日本ではすっきりとした一重咲などの花形が多く、ヨーロッパでは華やかで香りの強いものなどがつくられています」(小山さん)
牡丹と芍薬の見分け方
同じボタン科ボタン属の植物であっても、牡丹と芍薬はまったく別の花なのですね。では、どうやって見分ければいいのでしょうか。
「葉、香り、散り方に違いがあります。まず、葉の違いから見ていきましょう。牡丹の葉はツヤ(光沢)がなく、切れ込みが入っています。芍薬の葉はツヤがあり、切れ込みが入っていません。
次に香りですが、牡丹はほとんどの品種で香りがありません。一方の芍薬はバラ風の香りがします。咲いている花を見分けるには、最大の違いといえるでしょう。
散り方にも違いがあります。牡丹の花は、花びらが1枚ずつ散り、その群生は一気にぱっと散るのに対して、芍薬の花は、開花した状態で花の頭ごとそのまま下に落ちて、群生は牡丹よりも時間をかけて少しずつ散っていくといった感じです」(小山さん)
美しい女性の容姿を花にたとえて「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と言いますが、芍薬は枝分かれせずまっすぐ伸び、牡丹は枝分かれして横に広がるので、こんな表現が生まれたのかもしれません。
化粧品の成分に使われることも?
大手メーカーでは植物成分を使用した化粧品が出されていますが、牡丹や芍薬が使われることもあるのでしょうか。
「牡丹や芍薬の根から抽出されたエキスには、血行促進(牡丹)、美肌(芍薬)などの効用があるとされ、多くの化粧品に用いられています」(小山さん)
最後に、牡丹と芍薬の花言葉を教えてください。
「花言葉は出典や花色によっても異なりますが、ここでは一般的とされる花言葉を紹介します。牡丹は、別名花王(かおう)と称されるように、代表的な花言葉に“風格”があります。そのほかの花言葉は“富貴”、“恥じらい”です。
芍薬の花言葉にも“恥じらい”があり、そのほか“はにかみ”、“謙遜”があります」(小山さん)
これからの季節を彩る2つの名花、牡丹と芍薬の見分け方を覚えて公園や花壇を散策すると、季節の楽しみがまたひとつ増えることでしょう。
冒頭の写真は「芍薬」
ちなみに、冒頭の写真は葉に切れ込みがなく、ツヤ(光沢)があるので芍薬。写真だけだとなかなか難しいですが、あなたは見分けられましたか?
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