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リーガ優勝だけは決まったけど…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2022年5月3日 20時30分

写真:Getty Images

「また壮絶な撃ち合いになるのかしら」そんな風に私が思いを馳せていたのは月曜日、お昼のTVニュースでリーガ優勝祝いの二日酔いなどどこの空、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でガンガン、シュートを撃っているレアル・マドリーの映像を見た時のことでした。いやあ、先週とは順序変え、火曜にCL準決勝リバプール戦2ndレグに挑むビジャレアルはそれこそ、復活したジェラール・モレノを中心に攻めまくって、1stレグ2-0負けの結果を跳ね返さないといけないんですけどね。

それに比べると、エティハド・スタジアムで4-3まで追い上げたアンチェオッティ監督のチームは1点取れば、延長戦に入れますし、リーガ優勝を決めた土曜のエスパニョール戦など見ると、得意のremontada(レモンターダ/逆転突破)を達成するのに必要な2点ぐらい、簡単に奪えるような気がするんですが、そこは敵もさるもの。プレミアリーグ首位とはいえ、リバプールと勝ち点差1で優勝を争っているマンチェスター・シティも土曜のリーズ戦ではロドリ、アケ、ガブリエウ・ジェズス、フェルナンジーニョがゴールを挙げて、0-4と大勝しているんですよ。

となれば、1stレグで負傷欠場したカセミロが戻るとはいえ、アラバはムリそうですし、マドリーも無失点とはいかないかもしれないんですが、逆にシティも1stレグの印象では守備にかなりの大穴が。今回はストーンズがケガでおらず、出場停止だったカンセロがSBに入るようですが、いざ、点の取り合いとなったなら、それこそサンティアゴ・ベルナベウのマジックが発動する?ええ、祝賀イベントの時から、スタンドやシベレス広場では、ファンたちの「Si se puede!/シー・セ・プエデ(Yes, you can!)」の掛け声がこだましていましたしね。水曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのシティ戦では、マドリー今季一番の熱いプレーが期待できるんじゃないでしょうか。

まあ、それは先の楽しみとして、まずは先週末のリーガの様子から話していくことにすると。私が最初に足を運んだのはベルナベウだったんですが、木曜に2位のバルサがマドリッドの弟分、ラージョに負けた時点から、あと勝ち点1獲得するだけで、マドリーの優勝が確定することはわかっていましたからね。CL準決勝2ndレグも近かったため、元々、今回の祝賀行事は簡素に済ませる予定とあって、クラブもマドリッド市も余裕で準備を整えることができたんですが、もちろん、それにはチームもしっかり協力。

ええ、午後4時15分からのエスパニョール戦はベンゼマ、ビニシウス、クロース、カルバハルらがベンチ待機、ナチョ、ミリトンの出場停止でバジェホとカセミロがCBコンビを組むという形でスタートしたんですけどね。残留がほぼ見えているせいか、どこか消極的だった相手から、早くも前半にはロドリゴが2ゴールを挙げてくれたとなれば、当局も早めにシベレス広場周辺や途中の道の交通整理を始められたかと。

ちなみにマドリーの得点はベンゼマの代わりに先発したマリアーノが2本程、ヘッドに失敗した後、まずは33分、普段はビニシウスが占めている左サイドでプレーしたロドリゴがマルセロからパスをもらい、エリア内からシュートを決めて先制。43分にも今度はマリアーノが敵から奪ったボールを受け、doblete(ドブレテ/1試合2ゴールのこと)をゲットしたんですが、スタンドを埋めたファンたちも気が早いですよね。すでに「Campeones, campeones(カンペオネス/チャンピオンたち)」と歌っていましたが、goleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)は後半も続くことに。

そう、その日は右翼を担ったアセンシオもライバルのロドリゴに遅れを取るまじと、10分にはカマビンガのアシストで今季自身通算12得点目、チームの3点目を入れてくれたから、もうこの辺で勝負はついたと言っていいでしょう。そこでアンチェロッティ監督も安心してプラン通り、15分にはカセミロ、モドリッチ、マリアーノをクロース、イスコ、ベンゼマに代えるローテーションを実施。残念ながら、27分にイスコが入れたゴールはロドリゴがオフサイドの位置にいたとVAR(ビデオ審判)でバレてしまったため、スコアには挙がりませんでしたが、大丈夫。

36分には最後の交代枠で入っていたビニシウスがベンゼマに折り返しのパスを送り、そのシュートが4点目に。まさしく今季のリーガ優勝の立役者が誰かをファンに思い出させるゴールとなりましたが、これでチームは4-0の大勝。ベンゼマはリーガ26得点、CL14得点と、シーズン40本の大台達成となれば、試合終了後、スペイン・サッカー協会のルビアレス会長から優勝トロフィーを受け取りに行く時、マルセロが第2キャプテンを伴って、パルコ(貴賓席)に上がったのも当然だったかと。

その後は素早く組み立てられた2021/2022 Campeonesの看板の前で、その日の朝、突発性の背筋痛に襲われ、スタジアムにも来なかったベイル以外、チーム全員揃ってトロフィーを掲げながら、通算35回目のリーガ優勝記念写真の撮影、更には選手、スタッフ全員で手をつないで回ってみたり、アンチェロッティ監督の胴上げなんかもあったんですが、いやあ。やはりスタンドにファンがいる優勝祝いは選手たちも気分が盛り上がるんでしょう。わらわらとピッチに出て来た子供たちが遊び始め、家族や友人ら、大人たちは歓談会に突入したお祝いが1時間以上続いていたんですが、まあ、昨季のアトレティコなど、優勝決定はアウェイ、無観客のホセ・ソリージャ(今季は2部のバジャドリーのホーム)でしたからね。

当時はコロナ流行による規制により、日を改めてワンダ・メトロポリターノで開催した祝勝行事にもファンは入れなかったため、比べようもないんですが、聞けば、お隣さんもベルナベウで優勝を決めるのは15年ぶりだそう。ちなみにこの日はピッチサイドにもTV各局のレポーターが待機していて、即席のミックスゾーンで選手たちにインタビューしていたんですが、夜のサッカー場番組などでは、ベンゼマとどちらが最大の貢献者か、議論されていたGKクルトワによると、このリーガ優勝は「Después del Clásico fue la clave/デスプエス・デル・クラシコ・フエ・ラ・クラベ(クラシコの後がカギだった)」とのこと。

そう、3月にベルナベウで0-4とバルサに惨敗した後、「誰かさんはまるでタイトルを獲ったように喜んでいたけど、ボクらは落ち着いて、次のセルタやヘタフェに勝った」(クルトワ)マドリーは、宿敵が躓くのを横目に勝ち点を確実に積み増し。そのおかげで、とうとう1990年以来という、シーズン終了5試合前の早期優勝を決めることができたのだとか。

そのクルトワが話していた頃はもう、ピッチもスタンドもすでに人が少なくなっていたんですが、ようやく午後8時ぐらいになってからでしたかね、マドリーのオープンデッキバスが、「祝うのはメンタル面にとってもいい。Somos profesionales. Esta noche celebramos todos juntos/ソモス・プロフェシオナレス。エスタ・ノッチェ・セレブラモス・トードス・フントス(私たちはプロだ。今夜は皆で祝うよ)」というアンチェロッティ監督を筆頭に選手たちを乗せて、シベレス広場に向かって出発したのは。

え、その延々と続くお祝いを私はずっとスタンドで見ていたのかって?いえ、コロナ禍以前から、こういう時には力強い味方がいて、テレマドリッド(ローカルTV局)が試合終了後から、ピッチやシベレス広場はもちろん、スタジアム周辺、カステジャーナ大通りの中間地点と各所にレポーターとカメラを配置。逐一、生中継してくれたため、早々に引き上げたんですが、メトロのサンティアゴ・ベルナベウ駅付近から、すでに祝勝パレードが進む道は車両通行止め、代わりにシベレスまで歩いて行く人々で埋まっていたのにはちょっと、圧倒されたかと。

実際、ベルナベウを出るバスの周りを走って追っていた体力自慢のファンも沢山いたんですけどね。とはいえ、いくら今ではコロナも下火とはいえ、さすがに26万人とも言われる大群衆が集まった祝賀会場に近づく勇気は私にはなく、一旦、家に帰った後、スマホで中継を見ながら、午後9時キックオフのアスレティックvsアトレティコ戦に合わせて、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に向かうことに。丁度、その試合が始まる頃、マドリーのバスが広場に着いたため、選手たちが噴水の周りに設けられた特設キャットウォークで騒いでいるのを眺めつつ、サン・マメスでの様子をチラチラ伺っていたところ…。

いや、もう最低です。疲労蓄積を理由にグラナダとスコアレスドローを演じてから、早や9日余り。体力を回復して、今度はアトレティコもいいプレーを見せてくれるだろうと期待していたんですが、前半8分にはウィリアムスを負傷明けのヒメネスが止められず、更に撃たれたシュートをエルモーソがクリアしようとして、オウンゴールにしてしまうとは!うーん、この日はサビッチが出場停止でおらず、今季はあまり出番のなかったエルモーソが前節から続けてスタメン入りしていたんですけどね。開始1分には累積警告となるイエローカードをもらい、マドリーダービーに出られなくなるわと惨々な出来で、おそらく使わないのには理由があったはずなのに、シメオネ監督がフェリペをベンチに置いて、彼を先発させたのが裏目に出た?

それだけでなく、スマホの画面ではマルセロがシベレスの女神像にマドリーのbandera(バンデラ/旗)とbufanda(ブファンダ/マフラー)を巻き付けている頃でしたでしょうか。「No sé dónde tenemos la cabeza, pero aquí en el campo no ha estado/ノー・セ・ドンデ・テネモス・ラ・カベッサ、ペロ・アキー・エン・エル・カンポ・ノー・ア・エスタードー(自分たちの頭がどこにあったのかはわからないが、ここ、ピッチにはなかった)」と後でGKオブラクも苦い顔をしていたように、17分にはレイニウドもイエローカードをもらい、次節出場停止になる始末。その上、この日は攻撃も繋がらすというか、お馴染みのパスが3度も続かない状態全開では一体、どうしたらいいものやら。

いえ、マドリーがシベレス広場で約30分間の滞在を切り上げ、ベルナベウに帰還。バスを乗り換えて、バルデベバスでの祝勝ディナーに向かっていた後半6分になって、ようやくグリーズマンのFKが惜しくもバーを直撃なんてこともあったんですけどね。その4分後には、こちらも復帰を待たれていたエレーラがムニアインをペナルティエリアのライン上で倒し、PKを献上。ウィリアムスがこれを決め、2点差になったとなれば、いくら20分には恒例の3人一斉交代、カラスコ、コンドグビア、エルモーソをクーニャ、コケ、デ・パウルにしてみたって、ゴール日照りのアトレティコにはどうすることもできませんって(最終結果2-0)。

いやあ、この敗戦にはシメオネ監督もマイッたようで、「hay que saber estar en los momentos complicados, que han sido pocos estos años/アイ・ケ・サベール・エスタル・エン・ロス・モメントス・コンプリカードス、ケ・アン・シードー・ポコス・エストス・アーニョス(ここ数年、あまりなかった難しい時期を過ごすことを知らないといけない)」と言っていたんですけどね。ここ数日は、日曜のダービーでリーガの新王者、マドリーをワンダに迎えるのにPasillo de campeones/パシージョス・デ・カンペオネス(チャンピオンの花道)を作るか、作らないかなんて些細なことが話題の中心になっているものの、辛くとも現実から目を逸らさず、来季のCL出場権ゲットに必要な4位以上を如何に死守するか、彼らには真剣に考えてもらいたいものです。

そして翌日曜はエスタディオ・バジェカスに行った私だったんですが、何なんですかねえ。どうやら、カンプ・ノウでの成功体験が尾を引いていたのか、序盤のラージョにはまったくらしさが見られず。ええ、後で「Nos hemos pensado que en bloque bajo íbamos a sobrevivir/ノス・エモス・ペンサンドー・ケ・エン・ブロケ・バホ・イバモス・ア・ソブレビビール(低い位置で待てば生き延びられると考えてしまった)」とイラオラ監督も反省していたんですね。主導権を握ったレアル・ソシエダに攻めまくられているんですから、たまったもんじゃありません。

おかげで33分にはとうとう、セルロートがライン前から放ったシュートで先制されてしまったんですが、逆にそれがラージョを目覚めさせることに。ウナイ・ロペスやアルバロ・ガルシアのシュートはGKレミロに止められてしまったものの、いよいよ時間は後半32分。スタンドからの拍手を受けて2カ月ぶりにピッチに入ったばかりのファルカオが、アルバロ・ガルシアのシュートからゴールポストに当たって戻ってきたボールを押し込んで、同点ゴールを挙げてくれたから、どんなにスタンドも沸いたことか。

ホント、彼のケガがなければ、ラージョが今年になって、先週まで1勝もできない大スランプに落ち込むこともなかったはずですけどね。結局、この日は1-1の引分けで、またしてもバジェカスのファンと共に勝利を祝うことはできませんでしたが、次のヘタフェとの兄弟分ダービーでは残留確定見込みとなれば、ファンももう安心ですよね。

そして6位のレアル・ソシエダから、勝ち点2をもぎ取るというラージョの援護射撃を受けた後、月曜にはヘタフェも5位のベティスをスコアレスドローに抑える健闘を披露。コパ・デル・レイ優勝したばかりの相手をコリセウム・アルフォンソ・ペレスのピッチに花道を作って称えた後は、何とか、前半は敵の猛攻を凌いだんですが、後半は形勢が逆転し、ロスタイムにエネス・ウナルのシュートが決まっていればという惜しいシーンも。実際、マドリッドの弟分たちはもう、上がりに近づいているため、勝ち点1ずつでも十分ですしね。やはり、一番心配なのは、兄貴分のアトレティコが踏ん張って、自助努力で勝ち点を増やせるるかどうかでしょうか。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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