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週末は皆、試合があるけど…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2023年4月5日 21時0分

写真:©Atlético de Madrid

「楽観的でいいわよね」そんな風に私が感心していたのは火曜日、コパ・デル・レイ準決勝2ndレグ前日会見でアンチェロッティ監督がここ3回のクラシコ(伝統の一戦)でレアル・マドリーが3連敗していることについて訊かれ、「Mañana nos toca ganar a nosotros/マニャーナ・ノス・トカ・ガナール・ア・ノソトロス(明日はウチの勝つ番が回ってくるだろう)」と言っているのを聞いた時のことでした。いやあ、確かに今季のマドリーは昨年10月、サンティアゴ・ベルナベウでのリーガ・クラシコでこそ、3-1とバルサに完勝。

それがW杯を経て、年が変わってみれば、1月のスペイン・スーパーカップ決勝で1-3と負け、3月初旬のコパ・クラシコ1stレグもアセンシオのゴールがミリメートル単位のオフサイドVAR(ビデオ審判)判定で認められない不運もあったものの、ミリトンのオウンゴールで0-1の敗戦。代表戦週間直前のリーガ・クラシコでもカンプ・ノウで2-1と遅れをとり、とうとう勝ち点差12で逆転優勝を諦めなければならなくなったというのが3連敗の内容なんですけどね。何せ、チャビ監督も「Están acostumbrados a remontar/エスタン・アコストウンブラードス・ア・レモンタール(彼らは逆転するのに慣れている)」と言ってように、マドリーにはお家芸の根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)がありますからねえ。

近くは昨季のCL決勝トーナメント3連続逆転突破した試合を思い出せば、もうこれは理屈で説明できるようなものではなく、ただただ、「マドリーにはレモンターダのDNAが連綿と受け継がれている」という、当時者たちの言葉に頷くしかないんですが、折しも先週末のリーガ戦はどちらのチームもgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)で大勝。どうせなら、今季見納めとなる水曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのクラシコでは華々しく撃ち合って、火曜に一足早く、アスレティックとの2ndレグ延長戦後半11分にパブロ・イバニェスが同点ゴールを挙げ、総合スコア2-1で準決勝を制したオサスナと当たる5月6日の決勝進出チームを決めてほしいものですが、果たしてどうなるんでしょうか。

まあ、そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢の試合がどうだったかもお伝えしていくことにすると、土曜はサン・マメスでヘタフェがアスレティックに挑み、コパで頭がいっぱいだった相手に降格圏と勝ち点3を維持する、殊勲のスコアレスドローを勝ち取っていた頃、私はブタルケにカルタヘナを迎える2部の弟分、レガネスを応援に。それがまた、しばらく行かないうちに7試合連続白星なし。直近は4連敗中という、6位の昇格プレーオフ圏到達どころか、残留争いに巻き込まれる恐れまで出てくる程の大スランプにチームが陥っていたせいでしょうか。

そう、まるでいつぞや、エスタディオ・バジェカスでブカネーロス(ラージョのウルトラグループ)がやっていたように、この日は試合がキックオフしても応援団のスタンドがガラガラだったんですよ。前半11分になって、ようやく入って来たんですが、まあこれは39分にカルタヘナのカレロがエリア内でボールを腕に当て、ハンドで得たPKをアルナイスが6試合ぶりとなるレガネスのゴールに変えてくれるのには間に合ったため、別にいいんですけどね。久々に得点を祝うことができて、ファンも一息ついたはずだったんですが、まさか後半、前節のマラガ戦を負傷欠場した柴崎岳選手がその日、ピッチでケガをしたウンダバレナと交代で入った後、試合もすでに終盤となった33分から、あんな悲劇が起きるとは!

ええ、フェレイラのクロスをオルトゥーニョにヘッドされ、同点ゴールを入れられただけだったらまだマシだったんですが、その3分後にはFK攻撃から、敵のカウンターを喰らい、ピッチを縦断したフランチュに勝ち越し点を奪われてしまったから、さあ大変。もうこれには速攻、スタンドから「Idiakez vete ya!/イディアケス・ベテ・ジャー(イディアケス監督、もう出て行け)」のカンティコが始まったんですが、それだけには留まりません。ロスタイム1分、オルトゥーニョのシュートはGKリエスゴが弾いたものの、ゴール前に守りに来ていたニヨムに当たってオウンゴールとなった日には、「Jugadores, merecenarios/フガードーレス、メレセナリオス(金目当ての傭兵選手)」と、批難の矛先はとうとう選手たちへも向かうことに。

結局、1-3の逆転負けで5連敗となったレガネスですが、週明けには降格圏と勝ち点差5の17位まで落ちてしまいましたからね。何せ、1部では先週末の試合の後、エスパニョールのディエゴ・マルティネス監督、バジャドリッドのパチェタ監督と低空飛行を続けているチームの指揮官が2人も解任。同様にイディアケス監督もかなり危うい状態だと思うんですが、2部は残り試合が1部より少なく、あと8試合だけなんですよ。そんな短期仕事では、引き受けてくれる指揮官がなかなか見つからないため、ギリギリ残留の線に懸けて続投もありえるんですが、お願いですから、来季は2部にマドリッド勢が1チームもないなんてことにはしないでくださいね。

え、そのバジャドリーのパチェタ監督解任の原因は翌日曜のマドリー戦が原因だったんじゃないかって?その通りで、お日様の燦々と輝く午後4時15分にキックオフだったサンティアゴ・ベルナベウでは、Semana Samta/サマナ・サンタ(イースター週間)のバケーションで訪れた大勢の観光客も大満足のゴール祭りが開催。いえ、「Empezamos en un 4-4-2 con Rodrygo y Benzema arriba/エンペサモス・エン・ウン・クアトロ・クアトロ・ドス・コン・ロドリゴ・イ・ベンゼマ・アリバ(ロドリゴとベンゼマを前線に置いて、4-4-2で始めた)」(アンチェロッティ監督)序盤はロケ・メサのシュートがゴールポストを直撃するなど、バジャヤドリーにもチャンスがあったんですけどね。

それを見て、「敵CBのプレスが上手かったから、ロドリゴをサイドに行かせて、アセンシオを自由にプレーさせた」アンチェロッティ監督の素早いシステム変更が功を奏し、22分にはアセンシオが抜け出して、エリア外から送ったパスをロドリゴがゴールに撃ち込むと、いよいよフィエスタがスタート。実際、これは前座のようなもので、29分からの7分間にはいよいよ真打の登場となりました。ええ、まずはビニシウスのクロスがゴール前でバウンド、かがんだ姿勢からヘッドして決めたベンゼマが、32分にはライン前からGKアセンホの守るゴール左隅に吸い込まれるゴール。更に36分にも今度はロドリゴが右から上げたクロスをジャンプしないchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)で叩き込んでいるって、こんな効率的なハットトリック、あっていい?

前半だけで4-0ともなれば、もう勝負は決まりですが、マドリーは後半にも飽くなきゴールへの執念を披露。もちろん、これには後半頭から選手を3人代え、1分にはオスカル・プラーノのシュートが前半のロケ・メサ同様、ゴールポストに弾かれたことから、再び、「Cualquier problema nos deshace como un azucarillo/クアルキエル・プロブレマ・ノス・デスアセ・コモ・ウン・アスカリージョ(問題が起きるとウチは角砂糖のように溶けてしまう)」(パチェタ監督)という状態になった、残留争い真っ只中にあるバジャドリーの協力もあったんですけどね。20分過ぎからベンゼマ、ビニシウス、アラバら、主力選手の温存を始め、ピッチにはアザールやバジェホなど、普段、あまり見られない選手が入った後の28分には、ロドリゴのパスからアセンシオが5点目をマーク。

おまけに後半ロスタイムなど、アセンホがゴールキックを3カ月ぶりの出場となるアザールに贈り、6点目のアシストをしてもらったルーカス・バスケスを「Me alegro mucho por él!/メ・アレグロ・ムーチョ・ポル・エル(彼のためにボクも嬉しいよ)」と喜ばせることに。いやあ、この6-0の勝利で何より良かったのは、水曜のクラシコに向けて、エースのベンゼマを始め、FW陣がゴールづいてくれたことだったんですが、いえ、カンプ・ノウでは0-2で十分なんですけどね。ただ、あちらも土曜には最下位のパブロ・マチン監督から、ベッカセセ監督に代わったばかりのエルチェに0-4と大勝しているため、量産体制でいるに越したことはありませんって。

そして日曜は珍しく、マドリッドの2強のホームゲームが被り、午後9時からのベティス戦に備えて、メトロでシビタス・メトロポリターノに向かった私だったんですが、アトレティコもこのところ、セビージャ、バレンシアにそれぞれ6点、3点を取って、ホーム2連勝していましたからね。お隣さんに負けないゴールラッシュを期待していた向きのファンも多かったかと思いますが、残念ながら、週1試合ペースになって以来、じっくり練習時間が取れるミッドウィークに磨いたワンタッチパスを景気よく繋いで攻めていた彼らながら、前半はGKルイ・シウバを破ることができず。

逆にサビッチが自陣エリアからのパスを敵目掛けて真っ直ぐ蹴って、アジョセにシュートされていたりしたんですが、幸い0-0のまま、ハーフタイムを迎えます。後半序盤、CKからのヒメネスのヘッドがゴールバーに嫌われると、うーん、こういう渋い展開となったW杯後のアトレティコは交代選手が活躍してくれますからね。シメオネ監督も14分から早速、まずはナウエル・モリーナ、レマルをデ・パウル、コレアと入れ代え、マルコス・ジョレンテを右SBに下げて、システム調整を行ったんですが、よくわからなかったのは23分にはCFモラタを19才のカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)、MFバリオスに代えてしまったこと。

だってえ、この日はオランダ代表で太ももをケガして帰ってきたメンフィス・デパイがお休みで、ベンチにはもうFWが1人もいなかったんですよ。おまけにモラタはスペイン代表2試合目のスコットランド戦でプレーしておらず、体力切れにはとても見えなかった上、その間、ペジェグリーニ監督は前線をホルハ・イグレシアス、アジョセから、ファンミ、ウィリアム・ホセにリフレッシュ。26分にジョレンテがルイ・シウバに弾かれた後、コケが蹴り込んだゴールもオフサイドで認められず、39分の最後の交代枠ではサウール、ビッツェルのMF2人が入るしかなったとなれば、今季は10月のCLクラブ・ブルージュ戦だけだったスコアレスドローを覚悟してしまったのは私だけではなかった?

でも奇跡が起こったんです!それは41分、「Necesitábamos encontrar algo diferente con un Betis bajo y Correa lo tiene/ネセシタバモス・エンコントラール・アルゴ・ディフェレンテ・コン・ウン・ベティス・バホ・イ・コレア・ロ・ティエネ(ウチは低い位置で守るベティス相手に何か違うものが必要だった。コレアはそれを持っている)」とシメオネ監督の期待を背負ってピッチに立っていた彼が、うーん、スタンドからはどうやってあれだけの敵選手をかき分けて、シュート態勢まで行けたのか全然、わからなかったんですけどね。当人に言わせると、グリーズマンからパスをもらった後、「ちょっと見て、ペッツェッラの動きを読んで、luego recorté y pateé porque estaba ya en el área/ルエゴ・レコルテー・イ・パテエ・ポルケ・エスタバ・ジャー・エン・エル・アレア(それから切り返して、もうエリア内にいたからシュートした)」のだとか。

それが見事に決まってくれたから、諦めかけていた場内のファンたちも大歓喜。ベンチから駆けつけた選手たちも一緒にスタンドになだれ込む勢いで盛大にお祝いしていましたが、こうなればもう残り時間、ロスタイムも入れての9分は守り倒すしかありませんって。シメオネ監督も先頭に立って、最後まで選手たちを励ますよう、ファンをアジっていたんですが、大丈夫。試合はそのまま1-0で終わり、GKオブラクもゴディンと並ぶ、アトレティコの外国籍選手として最多出場記録となる389試合目を無失点勝利で飾ることができましたっけ。

え、それにしてもアトレティコ8年目と長い選手なのにこれまで絶対レギュラーにはなれず、3月の代表戦週間も遥々アルゼンチンまで行きながら、W杯優勝記念親善2試合で出場機会がまったくなくても決して不貞腐れることはなし。「No es nada fácil, uno siempre quiere jugar, pero el míster decide/ノー・エス・ナーダ・ファシル、ウノ・シンプレ・キエレ・フガール、ペロ・エル・ミステル・デシデ(誰でも常にプレーしたいものだから、全然簡単じゃないよ。でも決めるのは監督だ)。前線にはポジション争いがあるから、自分にできるのは常にプレーする準備をしておいて、チームメートを助けることだけさ」というコレアは凄く、健気じゃないかって?

そうですね、実際、今季はアトレティコの交代選手がゴールを挙げるのはもう14回目と、今のチームはそれだけ皆、試合に勝つことに集中しているということでしょうが、ホント、返す返すもこの結束状態が昨年中に現れてくれていればねえ。そうであれば、ファンも2週間おきでなくて、もっと頻繁にCLなり、ELなり、コパなりでメトロポリターノに応援に来られたはずでしたが、まさに後悔先に立たず。今はリーガで2位のお隣さんとの差が勝ち点5から広がらず、4位のレアル・ソシエダとは6差に、5位のベティスとも9差になって、来季のCL出場権ゲットがほぼ確実になってきたのを喜ぶしかありません。

そしてもう1つの弟分、ラージョは月曜試合でバレンシアと対戦したんですが、せっかく前半9分にはアルバロ・ガルシアのクロスをコメサニャが決めて、メスタジャで先手を取りながら、後半36分にはサムエル・リノのヘッドがバリウの腕にエリア内で当たったとして、VAR注進でペナルティを取られてしまうことに。今季7回PKをもらいながら、4回も失敗しているイラオラ監督のチームとは違い、クライファールトがしっかりPKを決めたバレンシアと1-1の引分けで終わったんですが、これで彼らの白星なしもとうとう7試合目。いえ、7位のアスレティックと同じ勝ち点の8位というのは変わらないんですが、何せ次節の日曜はホームに兄貴分のアトレティコを迎えないといけないですからね。そこを越えるまで、再び勝利を掴むのは難しそうですが、目標の残留達成まではあと勝ち点3程というのは気休めになりますでしょうか。


スペイン復権への道は遠い…/原ゆみこのマドリッド
2023.03.31 20:00 Fri
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photo©︎RFEF
「また地獄のハードスケジュールが戻ってくるのね」そんな風に私が同情していたのは木曜日、そろそろ代表戦気分を返上すべく、4月の試合予定を眺めていた時のことでした。いやあ、1月から9週連続週2試合ペースを継続していたレアル・マドリーでしたが、3月第2週にはようやく今年初めてフリーとなるミッドウィークが到来。翌週はCL16強対決リバプール戦2ndレグがあったものの、週末のリーガ・クラシコ(伝統の一戦)の後はインターナショナルマッチウィークのparon(パロン/リーガの停止期間)に入ったため、とりわけベンゼマ(フランス代表を引退)、クロース(同ドイツ)、リュディガー(公式戦がないためドイツ代表をお休み)、アセンシオ(スペイン代表非招集)ら、各国代表のお勤めがなかった選手たちにはいい息抜きになったかと。

それが4月に入った途端、いえ、まずこの日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)、サンティアゴ・ベルナベウに残留争い真っ只中にいる16位のバジャドリーを迎える24節は何せ、もうリーガは先日、首位バルサに負けて差が勝ち点12まで拡大。ほとんど追い越せる可能性がなくなってしまったため、それこそ来週水曜のコパ・デル・レイ準決勝クラシコ、0-1負けの1stレグの結果をカンプ・ノウで引っくり返すという、根性のremontada(レモンターダ/逆転突破)に向けた足慣らしになりそうなんですけどね。

実はその先もマドリーの週2試合ペースは続き、5回ある4月の週末全てにリーガが入るのは当然ですが、12日と18日にはCL準々決勝チェルシー戦がセットアップ。最終週にはミッドウィーク開催リーガもあって、要は30日間で9試合をこなすことに。これはEL準々決勝マンチェスター・ユナイテッド戦があるセビージャの8試合とあまり差がないように見えますが、他のマドリッド勢など、4月は6試合だけですからね。そして5月第1週もミッドウィークリーガがリピートし、あとは勝者の自己責任となりますが、コパ決勝は5月6日。そして第2、第3週はCL準決勝、5月最終週はまたミッドゥークリーガとなるため、アンチェロッティ監督のチームは再び、9週連続で週2試合ペースになることもありえるって、いやホント、私まで気が遠くなりそうですよ。

まあ、あまり先のことまで考えてクラクラしていても仕方ないので、今は火曜にスペインがグラスゴーでプレーしたユーロ2024予選2節がどうだったのか、お話ししていくことにすると。いやあ、これが初っ端から驚かされっぱなしで、まずはスタメン。U21代表時代から、デ・ラ・フエンテ監督はローテーションを習慣にしているとは聞いてはいたものの、まさか土曜に3-0と快勝したノルウェー戦から、一気に8人も変えてくるとはこれ如何に。

要はリピートしたのがGKケパ(チェルシー)、ロドリ(マンチェスター・シティ)、ミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)の3人だけだったんですが、うーん、ラ・ロサレダ(2部マラガのホーム)で終盤ピッチに入り、2ゴールを挙げたホセル(エスパニョール)の先発抜擢はわからないでもないんですけどね。DFラインまでカルバハル(マドリー)、ラポール(マンチェスター・シティ)、ナチョ(マドリー)、バルデ(バルサ)から、ペドロ・ポロ(トッテナム)、ダビド・ガルシア(オアスナ)、イニゴ・マルティネス(アスレティック)、ガヤ(バレンシア)へと完全に面替わりしていたのには私も懸念しか沸かず。案の条、開始早々の7分、ポロがエリアのすぐ外で転倒してロバートソン(リバプール)を逃がすと、エリア内奥からラストパスを出され、マクトミネイ(マンチェスター・ユナイテッド)に先制ゴールを決められてしまうって、一体、どうなっているんでしょう。

それでも前半残りは積極的に攻めて、ホセルがヘッドを2度程、撃ったスペインだったんですが、1本はバーを直撃、もう1本はGKガン(ノリッジ・シティ)にキャッチされてしまってはねえ。1-0で始まった後半頭から、デ・ラ・フエンテ監督はポロとオジャルサバル(レアル・ソシエダ)に代え、カルバハルとニコ・ウィリアムス(アスレティック)を入れていたんですが、もうこの日は右SBに呪いでもかかっていたとしか思えません。だってえ、6分にはカルバハルが自陣でティアニー(アーセナル)にボールを奪われた上、相手の独走を許し、エリア内奥からのラストパスが今度はダビド・ガルシアを経由して、再びマクトミネイがゴールを挙げているんですよお。これでキプロス戦での2ゴールと合わせて2試合4得点って、もしや彼、負傷で泣く泣くスペイン戦を諦めたハーランド(ノルウェー、マンチェスター・シティ)に憑依でもされていた?

その後はミケル・メリーノをイアゴ・アスパス(セルタ)に、ホセルをボルハ・イグレシアス(ベティス)にと手持ちのサラ(スペイン人の得点王)たちを投入して、反撃を図ったデ・ラ・フエンテ監督だったんですが、まあ、ハムデンパークの芝が伸びていたため、「El balón rodaba muy lento/エル・バロン・ロダバ・ムイ・レントー(ボールの転がる速度がとても遅かった)」(セバージョス/マドリー)という事情もあったようですけどね。更にアトレティコからマンチェスター・シティに移ってすでに4年目、流暢になった英語でロドリも「It's the way they play, but for me it's rubbish, always wasting time, provoking you, always they fall. For me, this is not football(それが彼らのプレースタイルなんだろうけど、ゴミみたいなもんだよ。常に時間稼ぎして、ボクらを挑発して、すぐ倒れる。自分にとって、あれはサッカーじゃない)」と怒っていたんですが、いやいや、この世界はゴールが入って何ぼ。

それどころか、試合も終盤になるともう、スペインは右往左往するばかりで、ええ、昨年中など、絶不調のアトレティコの試合で酷いプレーには慣れていたはずの私まで、目が点になる程だったんですけどね。おまけに34分、スペイン最後の交代カードが18才のMFガビ(バルサ)って何?ええ、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)は筋肉痛でベンチ外でしたが、2月から週1ペースになり、しかもここ数試合は控えスタート。体力が余りまくっているモラタ(アトレティコ)を温存する理由が一体、どこにあるんでしょう!そのまま2-0で負け、試合前に「スペインのパフォーマンスがちょっと落ちてくれたら、ウチはポジティブな結果を得られるだろう」と発言。実はFIFAランキングではノルウェーより1つ上の42位だったスコットランドのクラーク監督の予告通りになっているんですから、まったく困ったもんじゃないですか(スペインは10位)。

うーん、それでもデ・ラ・フエンテ監督は「Con el resultado no estoy content/コン・エル・レスルタードー・ノー・エストイ・コンテントー(結果には満足していない)が、この4日間で練習したプレーをチームが見せてくれたことには満足している」と話していたんですけどね。どうもこれまで、スペインマスコミはルイス・エンリケ前監督に対する反感から現監督を持ち上げていたようなところもあったんですが、結局、効率的な攻撃ができなかったり、ゴールが決まらないという、前任者の時代と同じ欠点が露呈してしまった今は少々、風向きが変わりそうな気配も。

まあ、ユーロ予選に関してはその日、ノルウェーがジョージアと1-1で引き分けたのもあって、スペインは2連勝したスコットランドの下で2位ですし、6月のネーションズリーグ・ファイナルフォーを挟んで、9月から再開する残り6試合で3位以下に終わったとしても、彼らにはネーションズリーグのグループ1位特典、12チーム中3チームがユーロに行けるプレーオフ参加権がありますからね。よってそれ程、心配することはないんですが、どうにもU代表から昇格してきた監督には私もいい思い出がなくてねえ。

そう、スペイン黄金期の礎を作った故ルイス・アラゴネス監督の前、2002-04年を担当したイニャキ・サエス監督は1998年U21ユーロ、1999年U20W杯、2000年シドニー五輪優勝と輝かしい経歴の持ち主だったんですが、その業績を支えたチャビ(現バルサ監督)やカシージャス(元マドリー)もA代表に上がっていたユーロ2004にはプレーオフ経由で出場して、グループ敗退する惨状。今はウォルバーハンプトンを率いているロペテギ監督も2013年U21ユーロで優勝したものの、2016年から率いたA代表では2018年W杯開幕直前、マドリーの監督就任発表に怒ったルビアレス会長にクビにされてしまったなんてこともありましたっけ。

その前例を鑑みると、U19やU21でユーロ優勝、東京五輪でも銀メダルを獲ったデ・ラ・フエンテ監督も大人の代表で果たして、上手くいくのかどうかわからないんですが、とにかく次の試合は6月ですからね。その時までには今回、ケガで来られなかったペドリ(バルサ)、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)らも治っているはずですし、逆にシーズン残り試合で負傷する選手もいるかもしれないとなれば、今、あれこれ悩んでも仕方ないってことでしょうか。

そしてマドリッド勢の週末の試合についても触れておくと、土曜に先陣を切るのは弟分のヘタフェ。代表戦直前のセビージャ戦で勝利して、降格圏から一気に13位までジャンプアップしたキケ・サンチェス・フローレス監督のチームですが、まだ18位とは勝ち点3差しかないとあって、サン・マメスでのアスレティック戦には500人のファンが応援に行く予定だとか。幸いトルコ代表のアルメニア戦で負傷したと言われていたエースのエネス・ウナルも大丈夫だったようで、2試合目のクロアチア戦でも先発していましたからね。相手は来週火曜のコパ・デル・レイ準決勝、1stレグでオサスナに1-0と先勝されて迎える2ndレグの方が大いに気になっているはずなので、きっと勝機はあるはずです。

一方、兄貴分は両方とも日曜試合で、先にベルギー代表予選1節だけで早退してきたクルトワも回復。2月21日のCL16強対決リバプール戦1stレグでハムストリングを痛め、そこからずっと休んでいたアラバ(オーストリア)もエストニア戦で復帰したマドリーが累積警告のナチョ抜きでバジャドリー戦を済ませた後、通常はホームゲームとアウェイに分かれて重ならないようになっているため、かなり珍しいんですけどね。午後9時(日本時間翌午前4時)から、アトレティコもメトロポリターノでベティス戦を迎えることに。

いやあ、お隣さんと違い、彼らはもう今季のホームゲームがリーガの6試合しかないためか、今週火曜にはモロッコvsペルーの親善試合なども開催していたんですけどね。丁度、メトロポリターノの直近2試合ではセビージャ、バレンシアにgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)で勝っているだけにファンも期待して駆けつけてくれかと。ただ、今回の代表戦週間では1人だけ被害者が出ていて、メンフィス・デパイ(オランダ)がジブラルタル戦でゴールを挙げた後、試合終盤に負傷。水曜に検査を受けたところ、太もものケガで全治2週間だそうですが、え?ならば、デ・ラ・フエンテ監督がモラタをスコットランド戦で使わなかったのはラッキーじゃないかって?

まあ、結果的にそうなりますが、予選2戦目のアイルランド戦では0-1の勝利と苦労したものの、オランダ戦ではゴールを挙げるなど、相変わらずグリーズマンも好調ですからね。カラスコもドイツとの親善試合で得点しましたし、アルゼンチンのW杯優勝祝勝親善試合パナマ戦、キュラソー戦のどちらも出番がなかったコレアはちょっと気の毒でしたが、その分、アトレティコに集中してもらえるかと。ちなみに相手のベティスは6位でCL圏内入りを狙っているんですが、もう3位の彼らとは勝ち点6差になってしまいましたからね。

おまけにカナレスが10月のカディス戦で2枚イエローカードをもらい、退場させられたのはマテウ・ラオス主審の企みだったと、2月のバジャドリー戦の後で蒸し返した件について、いきなり4試合の出場停止処分の裁定が下ったり、フェキルは負傷中だったりと、やや戦力的に苦しいようですが、アトレティコも油断は禁物。せっかくリーガ11試合無敗を続けているのですから、この調子を維持して、過密日程が始まる2位マドリーとの勝ち点5差を少しでも縮める方向で行ってもらいたいものです。

そしてもう1つの弟分、現在8位とヨーロッパの大会出場圏から落ちてしまったラージョは月曜試合でバレンシアにメスタジャで挑むんですが、とにかく今はここ6試合白星なしというスランプを抜け出さないと。ええ、7位のアスレティックとは勝ち点が同じなので、弟分仲間が善戦してくれれば、コンフェレンスリーグ出場圏にはすぐ戻れるんですけどね。U21スペイン代表の親善試合に駆り出されていたカメージョ、遥々日本までコロンビア代表の親善試合で行ったファルカオら、各国代表選手の負傷も聞かれてないため、18位と降格圏に沈むバレンシアとの試合を利用しない手はないかと。実際、勝ち点が39になれば、もう1部残留達成も見えてきますし、イラオラ監督のチームもここが踏ん張り時ですよね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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