<Wコラム>康熙奉(カン・ヒボン)の「日韓近世史は面白い! 」朝鮮出兵後の国交回復(前編)
Wow!Korea / 2016年7月26日 22時53分
惟政は、1604年12月に京都にやってきて、伏見城で家康と会った。
その場で家康は、朝鮮王朝と平和な関係を築きたい、ということを力説した。
惟政も「家康なら信頼に足る」と思った。その好印象は、朝鮮王朝が日本に対する警戒心を解く上で効果的だった。
惟政が母国に戻ったあとも、対馬藩は関係回復を求める使節を重ねて釜山に送った。朝鮮王朝は、正式な使節を日本に送るかどうかを真剣に検討し始めた。
■対馬藩の策略
日本との修好に前向きになった朝鮮王朝は、その条件として、対馬藩を通して徳川幕府に2つのことを要求した。
1つは日本側からまず国書を出して使節を招聘すること。もう1つは、戦乱の中で王室の陵墓を荒らした犯人を送ることである。
犯人を差し出すことはさしたる問題がないように思えた。実際、誰が陵墓を荒らしたかはわからないのだ。適当な罪人を陵墓の犯人に仕立てあげれば済むこと、と対馬藩は考えた。
ただし、家康から国書を送ることは難航が予想された。これは面子の問題である。先に国書を出すということは、立場的に格下と思われても仕方がない。
それを家康が納得するかどうか。どちらにしても、かなり時間がかかることは間違いなかった。
そのことを案じた対馬藩は、苦しまぎれの策を講じた。それは国書の偽造である。徳川幕府に知らせず勝手に国書を作り、1606年11月に対馬藩の家老が釜山に出向いて朝鮮王朝に渡した。
同時に、陵墓を荒らした犯人として、麻古沙九(孫作のこと)と麻多化之(又八のこと)の2人を朝鮮王朝に引き渡した。
この2人はもともと対馬島内の罪人であったのだが、陵墓を荒らした犯人に仕立てあげられた。
■罪人の陳述
朝鮮王朝は驚いた。想定よりずっと早く日本側が対応したからだ。
しかし、罪人に関しては、偽者であるとすぐにわかった。取り調べの段階で2人の罪人があらいざらいをぶちまけていたからだ。
「朝鮮王朝実録」の1606年11月17日の項には、罪人の陳述が次のように記録されている。まずは、麻古沙九(37歳)の発言から。
俺は対馬の人間です。壬辰年(1592年)に藩の家臣の使用人として釜山の船着場にいただけで、都には行ったこともなく、陵も荒らしていません。ただし、罪をおかして対馬の田舎に逃げていたところ、去る10月8日の夜につかまり、ここに引っ張りだされてきたわけです。いったい、何を知っているというのですか。どうやって、知りもしない話をしゃべることができますか。もし誓約することを許してもらえるなら、3日以内に死ねという誓約でも固く守ってみせます。俺が抱えている事情はきわめて曖昧だけど、対馬に一度帰してくれるなら、またここに連れてこられて死んだとしても恨みはありません。
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