「頑張って」の激励を〝パワハラ〟と受け止められた!説明してもダメなら〝ハラハラ〟で 識者が解説
よろず~ニュース / 2024年3月22日 11時30分
画像はイメージです(古永ユウカ/stock.adobe.com)
若い社員に「期待してる」と激励のつもりで投げかけた言葉を〝パワハラ〟と受け止められた。説明しても納得されない場合、どのような言葉で返せばいいのだろうか。「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏がその対応策を提言した。
◇ ◇ ◇
【今回のピンチ】
最近、ちょっと元気がない若い部下に「期待してるから頑張ってね」と言ったら「それ、パワハラとも受け取られかねない不適切なセリフですよ」と言われた。どう返すか?
◆ ◆ ◆
難しい時代になりました。しかし、「近ごろは何も言えないから」とスネて言うべきことを言わないのは、上司として無責任です。一方で「せっかくの助言や励ましを拒絶するヤツのことなんて、知ったことか」という気持ちも、よくわかります。
さて、元気がない部下を励まそうと「期待してるから頑張ってね」と言ったら、思いがけない言葉が返ってきました。「厳密な定義」とやらを持ち出してくれば、パワハラに当てはめられるのかもしれません。ただ、不適切よばわりにもほどがあります。
そりゃ、上司の励ましをうっとうしく感じることもあるでしょう。しかし、コンプラの威を借りてこっちを責めたり優位に立った気になったりするのは、ある意味、残念かつ卑怯な態度です。「ふざけるな!」と一喝したいところですが、それだと相手の思う壺。ますます「時代遅れのパワハラ上司に立ち向かう意識高い自分」に酔いしれたり、深刻な“被害”を受けたと社内の相談窓口に報告する決心を固めたりするでしょう。
かといって「いや、そうじゃないんだ。申し訳ない」と謝るのは、最悪の対応です。ここで謝ったら、部下は勘違いを増長させ、やがて使い物にならない迷惑社員になる可能性があります。何より、この程度でビクビクして保身のために心にもない謝罪をしていたら、自分の中の大切な何かが崩れてしまいます。
ここは、あくまでも穏やかな口調で、「なるほど。キミは私の言葉をパワハラと受け取ったんだね。それとも、気を付けろと忠告してくれたのかな」と尋ねてみましょう。たぶん口ごもりますが、もし「パワハラだと感じました」と言ってきたら、こう返します。
「それは残念だ。ところで、期待と励ましの言葉をパワハラだと言われて、私もたいへん傷ついた。これは、上司に対するハラハラ(ハラスメントハラスメント)ではないだろうか。もしよかったら、いっしょに相談窓口に行ってみないか」
こう持ちかけて「ご一緒させてください」と言える肝っ玉を持ったヤツだったら、最初から反抗ごっこなんかしません。
あるいは、思いっ切り残念そうな口調で、「そうやって相手の思いや言葉を悪意に取ることで自分を守って、成長のチャンスや可能性を自分でつぶすつもりなんだね……」と嘆いてみるのも一興。「おっと、思わず本音が漏れてしまった」と続ければ、叱責ではなく独り言のフリができます。
いずれにせよ、相手はますます自分の小さな殻に閉じこもるでしょうけど、そこから出てくる気がないなら、見放して距離を置くしかありません。心を入れ替えて殻から出てきたら、今回の発言は若気の至りということで水に流して、うわべはやさしく和やかに接してあげましょう。ずっとギスギスし続けるより、こっちもそのほうが楽です。
(コラムニスト・石原 壮一郎)
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