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『獺祭』の旭酒造会長・桜井博志氏を直撃 72歳で米国移住を決断した理由は何ですか?

財界オンライン / 2023年3月24日 15時0分

桜井博志・旭酒造会長

「日本酒が生き残っていこうとしたら、日本という限られた市場だけでは生き残ることはできない。われわれは米国の東海岸で酒蔵をつくって、現地でトライ・アンド・エラーを繰り返しながら、米国のマーケットにがっちり入り込んでいく」

 人気の日本酒『獺祭』で知られる旭酒造が、米ニューヨークで建設していた酒蔵(醸造所)が完成。4月から稼働する予定で、会長自ら米国に赴き、1年程度移住する。2002年に『獺祭』を輸出し始めてから約20年。いよいよ米国での市場開拓に本腰を入れることになる。

 足掛け7年をかけての海外製造拠点建設。当初30億円と予想していた投資額は80億円へと膨らんだ。同社の22年度の売上高は165億円だから、その半分を投じる一大投資だ。

「日本人でも、米国人でも、中国人でも、上位5%の人たちの嗜好はある程度共通しているので、日本で絶対的に美味しい日本酒は向こうでも必ず売れる。ワインのような日本酒をつくっても、ワインには勝てない。わたしは日本で一番失敗した数の多い酒蔵。社員は失敗を恐れるものだからこそ、わたしが一緒になって挑戦していく」

 近年、日本酒の市場縮小が叫ばれて久しい。一方で海外では和食ブームも相まって、日本酒の輸出は右肩上がり。22年度の輸出額は475億円と、13年連続で過去最高を更新。『獺祭』は日本全体の輸出量の約15%を占め、今では売上高の約4割は海外向けとなっている。

 22年度より、製造部の大卒新入社員の初任給を21万円から30万円に引き上げ、話題になった。同社では5年で平均基本給を2倍に引き上げる計画だ。

「結局、酒蔵にとって最も大事な要素は〝人〟。一番大事なところにカネを投入しないのは経営者ではない。本当にいい酒を造るには、つくる人に経営資源を突っ込む必要がある」

 72歳での海外移住だが、同氏の挑戦者魂は衰え知らず。「まだ70代になった実感がない。海外の人たちに『WOW(ワオ!)』と言われる最高のお酒をつくりたい」と意気込んでいる。

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