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元経済産業事務次官・日立製作所前取締役会議長 望月晴文が語る「日立のガバナンス改革」

財界オンライン / 2024年4月24日 7時0分

望月晴文・元経済産業事務次官

世界を目指そうと考えた瞬間ライバルが変わった

 ─ 望月さんは2012年から10年間、日立製作所の社外取締役をつとめ、2018年からは取締役会議長も歴任しました。日立の改革を一貫して見てきたわけですが、何が成功の秘訣だったと思いますか。

 望月 やはり、川村隆さん、中西宏明さん、東原敏昭さん(現会長)と、3代にわたるトップが同じベクトルを向いて、改革を実行してきたことだと思います。川村さんの時代に二度と危機を繰り返さないような体制をつくり、中西さんがグローバル企業になる地歩を固め、東原さんがグローバルリーダーになって、世界の勝ち組になると。その辺の役割分担というか、バランスが良かったと思います。

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 ─ 読者のために補強すると、日立はリーマンショック後の2009年3月期に当時の製造業で過去最大となる7873億円の最終赤字を計上。子会社の会長だった川村さんが本体の会長兼社長となり、再建を託されたところから始まりました。

 望月 わたしが取締役に就任した2012年というのは、沈む巨艦と言われた日立が大赤字からの脱却を進めているところで、川村さんが頑張って財務体質を改善していった。一瞬つぶれないようにはなったけれども、もう一度リーマンショックのようなことがあっても、つぶれないような体制を目指そうと考えたわけです。

 当時、日立の売上高の7割が国内、3割が海外だったんですが、日本のマーケットに依存したままではいけないということで、これを海外7割、国内3割に逆転させようと考えました。

 実はこれが大きな転換点で、世界を目指そうと考えた瞬間に日立のライバルが変わったんです。従来のような東芝、三菱重工業ではなく、シーメンスやGE(ゼネラルエレクトリック)、IBM、そして、アクセンチュアになったんです。



 ─ 海外の巨人と真っ向勝負できるようになろうと。

 望月 ええ。当時から日立の売上高は10兆円くらいありましたので、規模では負けない。でも、利益率がゼロから5%の間を行ったり来たりしている状態でしたので、同じ事業をやっていても勝負できません。海外のライバル企業は利益率2ケタ、十数%は当たり前ですから、営業利益率を上げられるような体質にしないといけない。そこから日立の改革が始まりました。

 まずはガバナンス(企業統治)改革。日立はわたしが取締役に就任した2012年にガラッと役員構成を変えまして、13人いる取締役のうち、社外取締役を4人から7人に増員。しかも、外国人を2人増やして3人にしました(現在は取締役12人のうち社外が9人、外国人は5人)。

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 海外で成功した経営者を集めてきて、ジョージ・バックリーさん(スリーエム元会長)を始めとして皆ガンガン議論し、10年かけて改革をしていった。その結果、昨年(23年3月期)はちょっと下がったんだけど、調整後営業利益率6.9%、海外売上比率58%まで来ました。

 まだ目標とする利益率2ケタ、海外売上高比率7割には達していませんが、もう目標達成は十分に視野に入っています。

 日立の取締役会は本当に真剣勝負なんですよ。先ほど言ったように、外国人の取締役も多いので、日本人のように変な空気を読んだり、忖度したりするのではなく、良いならいい、悪いならダメだと、自分たちの言いたいことをはっきり言うわけです。だから、トップの意見に対してしょっちゅう反論も出るし、時には6時間以上議論を続けることもある。

 いつも真剣勝負ですから、常に緊張感があるし、昔のシャンシャン総会ではないけど、お友達役員同士が集まった形式的な議事進行ではありません。その意味では、本当にわたしも勉強になりました。


続きは本誌で

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