特集2017年6月15日更新

人工知能が人類に勝利…AlphaGoの衝撃

囲碁の人工知能・AlphaGoが「世界最強」のプロ棋士を圧倒したニュースが話題となりました。そこで今回は、AlphaGoが世界に与えた衝撃、そして今後の技術応用などについてまとめてみました。

Googleの囲碁AIが“世界最強棋士”を圧倒

5月23日から27日まで中国・浙江省で開催されていた「The Future of Go Summit」で、囲碁の人工知能(AI)「AlphaGo(アルファ碁)」と中国の囲碁棋士、柯潔(カ・ケツ)九段が三番勝負で対戦し、AlphaGoが3連勝で柯潔九段を圧倒しました。

AlphaGoはDeepMind社が開発

AlphaGoは、Google傘下のDeepMindが開発した囲碁AI。これまでも何人かのプロ棋士を倒していて、「世界最強」「無敵」の囲碁AIとして注目を集めていました。

AlphaGoは2015年10月に、欧州大会で3回優勝した樊麾(Fan Hui)二段に5戦5勝し、ハンデなしで人間を初めて破った囲碁AIとして注目される。2016年5月には世界トップ棋士の李世ドル九段との5番勝負で4勝1敗し、その実力を知らしめた。

2014年にGoogleが買収したイギリスの企業

Google DeepMind (グーグル・ディープマインド)は、2014年にGoogleが買収した英国の企業で、買収前はDeepMind Technologiesという社名で2010年に設立された。ニューラルネットワーク(脳がどのように考えるかの特性を元にした数学モデル)に強く、人間がゲームに対してどのように対応していくのかなどを研究している。

生みの親は“天才”デミス・ハサビス氏

AlphaGoの生みの親は、「天才」と称されDeepMindの共同創業者でもあるデミス・ハサビス氏。

2014年にアルファ碁が生まれた。親となったのは英国出身のDemis Hassabis(デミス・ハサビス)氏。子供のころからチェスに優れ、若くしてコンピューターゲーム開発を手掛けたあと、大学で計算機科学、神経科学を研究し、やがて人工知能(AI)向け技術のひとつ深層学習(ディープ・ラーニング)にたどりつき、囲碁に応用した。

AlphaGoは「引退」 今後は別分野での活用を目指す

ハサビスCEO「人間との対局は終える」

米グーグルは2017年5月27日、傘下のディープマインドが開発した人工知能(AI)「アルファ碁(AlphaGo)」の囲碁AIとしての活用を終了することをブログで発表した。
今後の活用のされ方が気になるところだが、開発チームは、疾患の新たな治療法の発見やエネルギー消費の大幅削減、そして革新的な新素材の発明など、複雑な問題に取り組む科学者たちの一助となるような高度な一般アルゴリズムの開発に努め、次の新たな課題にエネルギーを投入する考えがあると伝えている。

突然現れ猛威を奮い去っていく――AlphaGoの歩み

すでに軽く触れましたが、もう少しだけ詳しくAlphaGoの登場から引退までの動きを見ていきましょう。

2016年1月に「プロ棋士に勝利」と発表

突然の発表に衝撃広がる

2016年1月27日、GoogleがAIとして世界で初めてハンデなしでプロ棋士に勝利したことを発表。囲碁はチェスや将棋よりも複雑なゲームとされていて、「コンピューターが囲碁で人間に勝つのは遠い未来」と思われていただけに、この発表は衝撃をもって受け止められました。

最先端の囲碁ソフトとトーナメント形式で対戦し、500戦中499勝し、さらに過去3回欧州王者に輝いたプロ棋士の樊麾(Fan Hui)氏と英国ロンドンで対局して5対0で勝利を収めたという。コンピュータが囲碁のプロ棋士に勝利するのは世界初だそう。

囲碁ファン「まさかこんな早く勝つとは」

「Alphago」勝利について囲碁ファンに話を聞くと...
「いずれは来ると思っていたけど、まさかこんな早く勝つとは思っていなかった。チェスは完全に超えられしまったし、将棋も怪しい。囲碁だけはなんとか踏ん張って欲しい」(30代男性)
(中略)
やはりコンピューターソフトが囲碁の世界でプロに勝利するのはかなり先と見られていただけに、驚きの声が多いようだ。

コンピュータ囲碁開発者からは悲嘆の声

何よりコンピュータ囲碁開発者(及び隣の分野のコンピュータ将棋開発者)を驚かせたのは、「既存の他の囲碁プログラムと対戦させた結果、495戦494勝だった」との報告でした。この報告は衝撃的で、これを読んだ他のコンピュータ囲碁開発者たちからは「俺の今までの努力が否定された」「目標を見失ってしまった」などの悲嘆の発言が相次ぐ始末でした。

16年3月、「囲碁界のフェデラー」に快勝

トップ棋士の李世ドル九段に4勝1敗

上記の1月の発表では、同時に韓国のトッププロ棋士、李世ドル(イ・セドル)九段との対戦も告知され、3月に韓国・ソウルで五番勝負が行われました。
李世ドル九段はGoogleが「過去10年間に渡り囲碁界の頂点に君臨」、DeepMindのハサビスCEOが「囲碁界のロジャー・フェデラー」と表現するトップ棋士で、当初は李九段が優位とみられていました。

当初、囲碁界は李九段が圧倒的優勢とみていたほか、李九段自身も「(5戦のうち)1敗するかしないかくらいになるだろう」と自信を示していた。
当初は人類代表のイ・セドル九段が優位とみられていたが、『Alphago』が第1局に勝利すると、立て続けに連勝し、一気に番勝負を勝ち越し。人間の感覚では「悪手」とも思える手がじつは妙手であることも多く、棋士を驚かせた。

韓国でショック広がる

李九段がAlphaGoに負けたことで、韓国人の間でうつや無気力症状を訴える「AI恐怖症」が広がったそうです。

「囲碁は高度な精神力の闘いだから、まだ人間が優勢だというぼんやりとした期待があった」と語る会社員の男性も、「人間としてのプライドが傷つき、一日中憂鬱(ゆううつ)だった」という。

日本のレジェンド棋士たちも驚く

日本棋院の副理事長も務めた小林光一名誉棋聖・名誉名人・名誉碁聖は、AlphaGoの快勝について次のように話しています。

こんなに速く、強いソフトが誕生するとは驚きです。ここ10~20年はたいして進歩していませんでした。僕が生きているうちは無理だろうと予想していたのですが……。

元・女流本因坊の小川誠子六段は…

アルファ碁の強さに驚きました。中盤から後半がとくにしっかりしています。コンピュータなのに、感情が入っている気がしたくらいで、李九段とは人間同士の碁のように楽しみました。

年末年始にかけてトップ棋士相手に60戦全勝

謎の強者「Master」が話題に

昨年末から今年の始めにかけて、囲碁のオンライン対局でトップ棋士に60戦全勝した謎のアカウント「Magister」と「Master」。この正体がAlphaGoであったことが、あとになって明かされました。

グーグルのAI開発の拠点であるDeepMind社の共同創立者デミス・ハサビスが5日、年末年始に「AlphaGo」の新バージョンで世界のトップ囲碁棋士と対局したことをツイッターで明らかにした。
2016年12月29日に登場して以来、「マスター」はこの1週間で、柯潔、朴廷桓(パク・ジョンファン)、古力、
(中略)
中韓両国の世界チャンピオンなどトップ棋士を次々と撃破し、60連勝を果たした。

ハサビスCEO「今年中には持ち時間の長い公式戦を行いたい」

DeepMind社のデミス・ハサビス氏は、先のツイートで「テストが完了したので、今年中には囲碁の団体やプロ棋士らと協力して持ち時間の長い公式戦を行いたい」と語っている。

これが5月の柯潔戦につながります。

4月、“世界最強棋士”との対戦を発表

4月10日、中国の囲碁棋士で「世界最強」と言われている柯潔九段とAlphaGoの対戦がGoogleの公式ブログなどで発表されました。

Google(グーグル)傘下のDeepMindが人工知能(AI)向け技術を用いて開発した「AlphaGo(アルファ碁)」と、中国のプロ棋士、柯潔氏がついに公式に試合を行う。

若干19歳の「世界ランキング1位」 

李世ドル九段を破って衝撃を与えたAlphaGoですが、囲碁ファンの間には世界ランキング「Go Ratings」で頂点に君臨する柯潔九段を倒さなければ「AIが人類に勝った」とは言えないという向きがありました。そんなファンの欲求を満たす最高のカードが発表されたというわけです。
なお、柯潔九段は現在でもランキング1位に君臨する最強棋士です。

かつて「私には勝てない」と強気の発言

柯潔九段はかねてより“ビッグマウス”で知られていて、昨年3月に李世ドル九段がAlphaGoに負けた際にも強気のコメントを残しています。

第1局でイ九段が破れた際には、「アルファ碁はイ・セドルに勝てても私には勝てない」と強気のコメントを残していたが、第2局終了後には「イ・セドルは人類を代表して(アルファ碁と)戦う資格はない」とバッサリ。

非公式ながらすでに負けていた

年末年始に正体を隠してオンライン対局で連勝していたAlphaGoに負けたプロ棋士の一人でもあります。

オンライン囲碁ソフト上では17年1月に「潜伏」の名で「Master」(AlphaGo)と非公式に戦い、投了で負けていた。

5月、ついに対決…結果はAlphaGoの3戦全勝

対戦の結果は、冒頭でもお伝えしたようにAlphaGoの3戦全勝。第3局では柯潔九段が対局中に涙を流したことも話題となりました。

「人類との対局はこんなにも楽しいものだったか…」

AlphaGoに負けたあとに行われた対局で韓国人棋士に大勝した柯潔九段。その際にSNSでつぶやいた言葉も話題となりました。

投了後、柯九段は中国版ツイッター・微博(ウェイボー)に「人類との対局はこんなにも気楽で自在、楽しいものだったのか…、囲碁は本当にいいものだ」と投稿した。

今回のハードウェアは1台構成

李世ドル九段と対戦した際は「これでもか」と言わんばかりのハードウェア構成だったAlphaGo。今回の柯潔九段との対戦では1台構成で、李世ドル戦に比べ、計算に必要な電力を10分の1に抑えたといいます。

この時のAlphaGoのハードウェアは、CPUサーバを1202台、GPUサーバを176台使用する構成だったという。 今回のAlphaGoは、年次開発者会議「Google I/O 2017」で発表された新世代の「TPU(Tensor Processing Unit)」を1台使用する構成で挑んだという。

“人間3連敗”でも「棋戦や棋士の価値が落ちるとは思っていない」

今回の対局について、昨年、史上初の七冠を達成した日本囲碁界の第一人者、井山裕太六冠は次のように述べています。

仮にAIが3連勝することになれば、「AI対人間」は一応の決着になる。目的を果たしたGoogle社が撤退するかもと、まことしやかな噂も流れている。
「そうなったとしても、棋戦や棋士の価値が落ちるとは思っていません。私個人の意見として、他のスポーツを見ていても、人間同士の戦いがおもしろいと思うのです。人間同士の極限の戦いが人を感動させる。ミスも含めてです」

AlphaGoの強さの秘密

AlphaGoの衝撃とは?

ここまで紹介してきたAlphaGoの歩みで、「突如として現れ、あっという間に“世界最強棋士”に圧勝」という流れがわかったかと思います。
ただ、「AIが人間に勝つ」というのであれば、古くは1952年に「三目並べ」 、次いで94年に「チェッカー」、97年に「チェス」と、AIが人間を上回る実力を示してきた歴史があります。また、近年では将棋のAIがプロ棋士を次々と倒していき、ついに「名人」を破るというニュースが駆け巡ったことも記憶に新しいところです。

それでもなおAlphaGoの登場と旋風が「衝撃」とされるのは、囲碁というゲームの複雑さにあります。

AlphaGoの衝撃は、将棋よりさらに難易度の高いゲームで、それもあと10年はプロ棋士に勝てないだろうという予測を覆し、世界最高水準のプロ棋士を破ったことにある。
将棋の世界でAIソフトが人間のプロ棋士に勝った2013年に、囲碁の世界でそれを実現するには時間がかかるだろうといわれていた。囲碁の局面数は、将棋の10の220乗と比較し、10の360乗と桁違いに多く、かつ駒の役割等がないため、形勢判断が難しいからである。

人間の敗北は「人類進化史の事件」

そして、囲碁は複雑であるがゆえに人間特有の直感や創造性などがより必要とされ、逆にコンピューターやAIはそれらの能力に乏しいとされていました。
以下は李世ドル九段が負けた際の科学哲学者のコメントです。

李九段の敗北は「大きな衝撃」とし、「人間だけの能力と考えられていた直感、創造性、意思疎通まで機械が超越できるということを示した人類進化史の事件」と表現した。

自己学習機能「ディープラーニング」を採用

「あと10年」をあっという間に埋めて世界に衝撃を与えたAlphaGo。そんなAlphaGoの圧倒的な強さの秘密は、AI業界で注目を集めている自己学習機能「ディープラーニング(深層学習)」を採用している点にあります。この機能により、対局すればするほど学習して腕を上げるようになっているといいます。

人工知能に人間に近い考え方をさせているのがDeepMindの「ディープラーニング」の技術だ。この技術は人工知能に膨大なデータを学習させて総合的な判断能力を高める技術で、将棋や囲碁でいうところの“大局観”を形成するものであるという。つまり一から順番にすべての手を高速で計算するのではなく、形勢に応じて“ざっくりと”有効な手と思われる範囲を限定してその中で集中的に計算するということだろう。

当初はトップ棋士の着手を模倣

DeepMindは最先端の方法をAlphaGoに備えさせた。サーチツリーと言われる従来の分析方法に加え、囲碁名人の3,000万通りの着手を分析して訓練したニューラルネットワーク(神経回路網)を組み込んだのだ。

李世ドル戦を前に「強化学習」

イ九段との対戦にあたり、AlphaGoは単に世界のトップ囲碁棋士を模倣するだけでは不十分だった。DeepMindは2015年10月から2016年3月までに、自らのニューラルネットワーク内で相当数の対局を持つようプログラミングした。そしてAlphaGoは新たな手を学ぶたびに、強化学習と言われる神経回路の調整をグーグルのクラウドプラットフォームで行った。

強化学習で人間と同じような「直感」を備える

李セドル九段との対戦までの数か月間で、アルファ碁はニューラルネットワーク間同士で何百万回も対局を繰り返し、勝者を予測する「バリューネットワーク」と、次の手を選択する「ポリシーネットワーク」を強化して世界トップレベルのプロ棋士が繰り出す手を直観的に予測することができるようになったという。

かつてのコンピュータは「総当たり」だった

1997年にIBMのスーパーコンピュータ「ディープブルー」が当時のチェス世界王者ガルリ・カスパロフを破った時には、「ブルートフォース」(総当たり)と呼ばれる手法が使われた。これは、コンピュータが瞬時に可能な手を全て計算し、最適な選択肢を選ぶというものだが、囲碁はチェスとは比べ物にならないほど複雑なため同じ手法は使えない。

「ディープラーニング」とは?

AlphaGoだけでなく、AI研究の世界で注目されているディープラーニング。一体、どういったものなのでしょうか?

「教えられなくても自分で学ぶ」人間の脳に近い情報処理を行う技術

ディープラーニングとは、ニューラルネットワーク(神経回路網)を使って人間の脳に近い情報処理を行う技術で、人間と同じように経験に基づいた学習ができる。アイデア自体は1980年代からあったが、ここ数年の技術革新によって、大量かつ高速でデータ処理ができるようになり、実現可能になった。
数年前、人工知能に動画共有サイト「YouTube」から抽出された1000万のイメージを見せることで、猫を認識させることに成功したというニュースが話題になったことがあった。これがなぜ話題になったのかといえば、人工知能に人間が猫の特徴を教え込むことなく、人工知能が勝手に無数の画像から猫がどういうものであるのかを学び、認識するようになったからだ。これは人工知能に人間とほぼ同じ学習スタイルである「ディープラーニング」を実装することで可能になった。

またディープラーニングは、従来コンピューターが苦手だった画像、動画、音声などの処理を得意とするAI技術ともいわれています。

直感を実現する仕組み

“直感”というと、普通は人間のほうが得意と思われているかもしれないですが、実はコンピュータのほうが得意で、一般的なイメージとは認識が少し異なります。ディープラーニングは、まさに直感を実現する仕組みと言えますね

ディープラーニングによって起きた「第3次AIブーム」

ディープラーニングによってAI開発は大きなブレークスルーを迎え、いま「第3次ブーム」が起きているといいます。

1950年代に研究が始まったAIは、いま第3次ブームを迎えている。これまでのブームと大きく異なるのは、ディープラーニングの飛躍的な進歩によって実用例が広がり、ビジネス活用への期待が高まっていることだ。

ディープラーニングが持つ可能性

AIの活躍の場を増やすディープラーニング

ディープラーニングによってAIの活躍の場が広がっていくことが予想され、大きく2つの方向が考えられています。

画像認識の自動化…防犯・監視への応用

すでに防犯・監視の分野では、米国でAIを活用した屋外監視カメラが登場し、年内には人や車の動きを検出してスマートフォンに通知するサービスが始まる。大幅なコスト削減につながるだけでなく、ここに感情理解や行動予測、環境認識といったマルチモーダルな認識を加えれば、監視カメラで怪しい人物を見つけ出すことも可能になる。

画一的作業ではない分野でのロボット

たとえばトマトを収穫する場合、「熟したトマトを見つけて」「もぎ取る」という作業は、人間にとって難しくないが、トマトの位置や状態、つかみ方を個々に判断しなければならないため、自動化が難しいとされてきた。しかし、画像認識の精度とロボットの運動能力が上がれば個別の対応が可能となり、いま人手をかけて行っている作業の自動化が実現できる。

すでに実用されているディープラーニング技術

ディープラーニングは、IT関連の分野ではすでに使われ始めています。

ディープラーニングに依存したプログラムは多岐にわたり、例えばFacebookのニュースフィードは、そのユーザに個人的に最も関連性の強いと思えるニュースをオーガナイズし、自動のタグ付けに関しても、同様のタイプのAIが使われています。

Googleの各種サービスにも応用

DeepMindの親会社であるGoogleも当然ながら人工知能、およびディープラーニングの導入には積極的です。

私たちが普段利用しているGoogleの各種サービスにも機械学習の技術が適用されています。例えばGoogle検索。検索結果のランクにはRankBrainという人工知能のアルゴリズムが使われています。最近では、Google翻訳に大幅な翻訳性能の改善が認められたことが話題となりました。ここにも機械学習の技術が使われており、誤訳は依然としてあるものの、流暢さは格段に上がってきています。

プロ野球の予想も!?

セ・パ両リーグの順位を予想したのは、広告大手・電通の制作チームが開発を担当した「ZUNO(ズノ)」というスポーツ解説システムだ。
(中略)
「ディープラーニング」という機械学習技術を応用。2004年から記録されているプロ野球公式戦の全打席データを学習することで、投手の配球などを統計的に予測できるという。

AlphaGoと人工知能の未来

AlphaGoの開発は何に活かさせる?

ハサビスCEOはAlphaGoの「引退」宣言と同時に次のように語っています。

「AlphaGoを育てた研究チームは次の難問に取り組む。難病治療法の発見や省エネルギー、新素材開発など、非常に複雑な問題に取り組む科学者を支援する高度な汎用アルゴリズムの開発に挑戦する。もしAIがこうした分野でも目覚ましい新知識と戦略を生み出せることを証明できれば画期的だ」

空調に活用し効率を40%も向上

CEOが言う「省エネ」に関しては、すでに結果を出しつつあります。

GoogleはDeepMindのAIエンジンを自社のデータセンターの空調に活用し、効率を40%も向上させ、電力消費量を15%削減した。

そもそも人間と対局した目的は?

そもそもAlphaGoが人間と対戦した目的は何なのでしょう?
この点について、李世ドル戦後の記事には以下のように述べられています。

今回の対局の真の狙いは、勝負に勝つことよりもトップ棋士と対戦することでプログラムの弱点を見つけ、性能をさらに向上させることにあったという。
(中略)
「ゲームは人工知能のアルゴリズムの開発やテストにうってつけだが、我々の究極のゴールは培った技術を気候モデリングや疾病分析など、現実世界の問題解決に役立てることだ」とハサビスは述べている。

期待される医療現場での活躍

AIの活用が期待されている分野は数多くありますが、中でも医療現場での活用に高い期待が寄せられているといいます。
そして、DeepMindはすでに腎臓病を診断するAIを開発していて、さらに糖尿病性網膜症を早期発見する診断ロボットの開発も進めているといいます。

最悪の場合失明するこの糖尿病性網膜症ですが、早期に発見することができれば今の治療技術で失明を防ぐことが可能です。しかし罹患しているかどうかは眼科医の判断が欠かせず、豊富な知識や経験が必要です。そこでイギリスで人工知能の研究・開発を行い、「AlphaGo」の開発も手掛けた、「Google Deep Mind」が早期発見と判読時間短縮が可能となる診断ロボットの開発に取り組んでいます。

チェス王者に勝利したAIもすでに活躍中

1997年にチェスの世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフ氏に勝利したIBMの「Deep Blue」は「Watson」という市販のAIシステムへと変化し、すでにさまざまな分野で活用され、莫大な収益を上げ始めています。その中には医療の分野も。

米ニューヨークのがんセンターでは、米IBMのAI型コンピューター「ワトソン」が医師に代わって医療判断をしている。60万件の医療報告書、150万件の患者記録や臨床試験、200万ページ分の医学雑誌などを分析し、患者個々人の症状や遺伝子、薬歴などをほかの患者と比較することで、AIが患者一人ひとりに合った最良の治療計画を作っている。

高まるAlphaGoへの期待

AlphaGoのシステムが汎用性を持ったAIシステムとして利用されていくのはほぼ間違いなく、IBMのWatsonを超えるAIシステムになっていくだろう。

AIの進化は人間にとって脅威なのか?

AlphaGoに限らず、急激な進化を見せているAI。その進化のおかげで「人間にとって役立つもの」として期待が寄せられている一方、AIは人間の行く末を脅かす存在だと警鐘を鳴らす人たちもいます。

Google共同創立者もAIの進化に驚き

AlphaGOと関係するGoogleの共同創立者もAIの進化の早さに驚いているといいます。

「AlphaGO」を開発したDeepMindの親会社であるGoogle(正確にはGoogleの親会社のAlphabet)をラリー・ペイジと共に創設したセルゲイ・ブリンだけに、誰もがその発言に注目したのだが、その内容は一瞬言葉を失うものであった。AIがここまで急激に進化することに「注意を払っていなかった」と、自分の認識の甘さを素直に認めたのだ。そしてAIが今後どのような方向に進化していくのかについて、まったく見当がつかないことも表明している。

ビル・ゲイツも…AIに警鐘を鳴らす著名人たち

AIの進化についてはネガティブな見解も多い。ホーキング博士やイーロン・マスクなどがAIの進化を危険視していることも知られている。ビル・ゲイツもまた昨年の講演会で著しく進化を遂げるAIがきわめて危険であると警鐘を鳴らしている。

「将棋界のレジェンド」もAIの“危うさ”に言及

21年前に史上初の七冠独占を果たし、いまだに第一線で活躍する将棋界のレジェンド、羽生善治三冠はAlphaGoやAIの進歩に驚きを示しつつ、次のようにAIの“危うさ”にも言及しています。

「ターミネーターのようにはならないとしても、倫理の面ではどうするのか? ルール作りはどうするのか? 非常に大事なことだと思います」と案じ、その上でコンピューターが人間の脳を超えるという予測、いわゆる“2045年問題”に関しては、「技術的なことで遮るものはなくなっている」との見解を述べた。

「2045年問題」いよいよ現実味?

羽生さんが言及した「2045年問題」とは、著名な科学者が「AIが人間の頭脳を越える時期」を2045年と予測したことに由来します。

アメリカのフューチャリストであり人工知能研究の世界的権威として知られるレイ・カーツワイルは、2005年に『The Singularity Is Near(シンギュラリティは近い)』という書籍を上梓しました。シンギュラリティとは、人工知能があらゆる点で人間を超越し、自ら技術開発を行い行動する技術的特異点のことで、2045年にそれは訪れるとのこと。

肯定的な意見が過半数…「脅威」より「期待」

昨年、BIGLOBEが実施した「AIに関する意識調査」では、「AIに期待しますか?それとも脅威に感じますか?」という質問に対し、「かなり期待する」と「どちらかと言えば期待する」が合計で54%と、肯定的な意見が半数を上回りました。
一方で、「かなり脅威を感じる」「どちらかと言えば脅威に感じる」は合計28%で、3割の人がAIに「脅威」を感じているようです。

さらに「脅威と感じること」を尋ねたところ、「システムエラーによる事故や社会混乱」が58%で最多、続いて「知能が人類を超え、制御不能になる」となりました。
「自我を持って人類の敵になる」も24%で、SF映画のように「AIが人間に敵意を持つのではないか」と不安を抱く人も少なからずいるようです


驚異的な強さでAIの可能性を見せつけたAlphaGoですが、ハサビスCEOは柯潔九段との対戦が終わった時に「AlphaGoの物語は始まりに過ぎない」と述べています。つまり、いまだにスタート地点ということで、一体どこまで進化するのか想像もつきませんし、それだけに期待もふくらみます。
AIが学術研究分野として確立されて今年で61年。その歴史の中でも今が最もAIが進化している時期かもしれません。進化の早さに期待がふくらむ一方で脅威を指摘する声も高まりつつあり、「AIは人類の味方か、敵か」の結論も含めて、私たちは歴史の生き証人になる可能性が高そうです。これからもAIの進化に目が離せません。