特集2017年4月17日更新

見直しの時期に?ふるさと納税

全国各地の様々な自治体に寄附を行う制度「ふるさと納税」。寄附の「返礼品」としてその地域の特産品などがもらえたり、税金の控除を受けられたりできるため年々人気が上がっています。一方で人気の返礼品を提供する自治体には多大な税収があるため、豪華な「返礼品競争」の加熱が危惧されています。先日、ついに総務省から全国の自治体に自粛を通達する事態になりました。見直しの時期に来ている(かもしれない)ふるさと納税の現状をまとめました。

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「ふるなび」が、令和6年 4・5月 山林火災の災害支援として山形県南陽市の寄附受付を開始

PR TIMES / 2024年5月8日 19時15分

このたびの令和6年4・5月山林火災により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。株式会社アイモバイル(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:野口哲也、東証プライム市場)が運営するふるさと納税サイト「ふるなび」(https://furunavi.jp/)は、令和6年4・5月山林火災により、甚大な被害を受けた地域を支援するために、ふるさと納税制度を活用した緊急災害支援窓口を5月8日より開設し、山形県 [全文を読む]

加熱する「ふるさと納税」の返礼品競争

総務省が自粛を求める

4月1日、総務省がふるさと納税の返礼品を寄附額の3割以下に抑えるよう全国の地方自治体に通知しました。近年、地方自治体の競争が過熱し、「ふるさと納税制度」の本来の趣旨・目的に反するような高額の返礼品が送られていることが指摘されていたことを受けた対応です。
また、「金銭類似性の高いもの」や「資産性の高いもの」は返礼品として送付しないことも求めています。

また金銭類似性の高いもの(プリペイドカード、商品券、電子マネー・ポイント・マイル、通信料金等)や、資産性の高いもの(電気・電子機器、家具、貴金属、宝飾金、時計、カメラ、ゴルフ用品、楽器、自転車等)、価格が高額のものについても、換金の困難性や地域への経済効果等にかかわらず、送付しないよう求めている。

近年指摘されていたふるさと納税の問題点

都市部の税収落ち込みの原因

近年は豪華な特産品や金券、家電を用意する自治体に人気が集まり、東京23区では2017年度200億円以上の減収が見込まれるとして、都市部を中心に一部自治体からは、税収落ち込みの原因になっていると批判の声も。
ふるさと納税による2015年度の寄付の受け入れ額から2016年度の市町村税の減額分を引いた市町村の「収支」を計算した。
(中略)
「赤字」の自治体は都市部に多く、横浜市が約28億円、名古屋市が約18億円、東京都世田谷区が約16億円などと続いた。

半分は費用に…

下の記事は昨年6月のものですが、「せっかくのふるさと納税も半分は費用に使われている」という現状を指摘しています。

当然のことだが返礼品を送付するのには費用がかかる。返礼品と送付費の合計額は約675億円にものぼる。これは、ふるさと納税の全体額約1653億円の約40%を占める。このほかにも、広報費用、決済費用、事務費用などを含めた費用は全体で約793億円となっており、ふるさと納税全体額の約48%にものぼっている。つまり、せっかくの寄付金であるふるさと納税も半分は費用に使われているということだ。

返礼品の換金&転売

高額な家電や換金しやすいプリペイドカード、金券を送る自治体もあり、返礼品の換金や転売も問題となっているようです。

批判を集めたのが、千葉県勝浦市の「かつうら七福感謝券」や千葉県大多喜町の「大多喜ふるさと感謝券」だ。どちらも自治体の指定する市内または町内の業者でしか使えないと限定されている。しかし、ヤフーオークションなどで転売されたり、業者が自治体と関係ないブランド品をネット販売したりして問題になった。

富裕層の節税対策との批判も

制度が利用しやすくなったこともあり、富裕層の節税・減税に使われているなど、税の公平性の観点から制度そのものへの疑問を呈する意見も増えた。

下の記事では、千葉県大多喜町の「ふるさと感謝券」を税の「抜け穴」の例として紹介しています。

2016年4月末の大型連休中に町を訪ねた。町の中心部にあるスーパー「いなげや」に行くと、夫婦が買い物カートを連ねて、4つのかごに山盛りの買い物をしていた。レジで取り出したのは分厚い「ふるさと感謝券」の束だった。
取材するうちに、感謝券で自動車を買う人までいることがわかった。

上に挙げた問題に加えて、iPadといったその土地に関係のない品物が返礼品になっていて物議をかもしている自治体も。そういった中、一番の問題は冒頭で言及した返礼品競争の激化とされています。
これについては、ちょうど1年前の4月1日付けでも「返礼品(特産品)送付への対応について」総務大臣通知が出されていて、この通知で実際に見直しを実施した団体はわずか1.9%だったようです。改善が見られないことから、今回の「3割以下」といった具体的な水準を示した通知が出される事態となりました。

あらためて「ふるさと納税」とは?

年々増加 2016年度は2000億円を超える見通し

都市部に集まる税を地方に還流させる制度

 ふるさと納税は、生まれ故郷やかつて住んだことのあるまちなどに寄付をした場合、その相当額を住民税・所得税から控除できることで、寄付者の負担を増やすことなく、都市部に集まる税を地方へ還流できる仕組みとして2008年に導入。

「ふるさと」は自分で決められる

どこをふるさとと考えるかは納税者の意思に任せることにし、ふるさとは日本全国とすることとなりました。生まれ育った地域や住所地であるかどうかにかかわらず、日本全国どこでもふるさととして寄付することができます。また、複数の地域に同時に寄付することもできます。

2015年度は前年度比4.3倍の1653億円

ふるさと納税の受入額は年々増加しています。2015年には控除額の上限引き上げもあったことで前年度の約4.3倍となる約1653億円にまで急増しています。16年度はさらに増加し、2000億円を超える見通しだと言われています。

被災地支援で成果も

問題点も指摘されているふるさと納税ですが、上記のように地方へ税金を回すという利点のほかにも、東日本大震災や熊本地震、糸魚川大火災などの被災地支援で成果を挙げているという報道もあります。返礼品なしでも多額の支援が集まっているといい、返礼品があっても断る人が多いそうです。

都内屈指の桜の名所を守るために活用

都内屈指の桜の名所である目黒川などを抱える目黒区。ソメイヨシノの寿命は60年との説があり、目黒区内の桜2300本のうち1000本以上は間もなく樹齢60年を迎えるということで、区は桜の保全対策に乗り出し、桜を守るために「目黒のサクラ基金」を創設しました。

 2014年に創設された“目黒サクラ基金”には、2016(平成28)年2月末時点で約800万円の寄付が集まりました。これらは、ふるさと納税として扱われるため、目黒区は2016年1月から1万円以上の寄付者に“さんまペーパーナイフ”を贈呈しています。

納税者側には税の控除が受けられるメリット

「納税」だが実際には「寄付」

ふるさと納税は、「納税」という言葉がついているものの、実際には地方自治体への「寄付」です。
一般的に自治体に寄付をした場合には、確定申告を行うことで寄付額の一部が所得税と住民税から控除されます。ただ、ふるさと納税の場合、原則として自己負担額の2000円を除いた全額が控除の対象となります。

ふるさと納税の控除額、還付の算出法は以下の通りだ。(住民税については基本分のみ)
①所得税から控除する場合 (ふるさと納税額-2000円)×所得税率で求めた金額が還付
②住民税から控除する場合 (ふるさと納税額-1000円)×10%で求めた金額が還付

2015年の「ワンストップ特例制度」導入で普及促進

2015年4月1日以降、確定申告が不要な給与所得者等で、ふるさと納税先の自治体数が5団体以内である場合に限り、ふるさと納税を行った各自治体に申請することで確定申告が不要になる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が始まった。

人気の自治体&変わりダネの返礼品

返礼品を選ぶポイント

「ふるさと納税」は通年で行われているが、返礼品の追加は随時、しかも突然されたりする。このことからも、一度に寄付してしまわず、こまめにポータルサイトをチェックしながら、欲しい返礼品が見つかったときに寄付するのが、より賢く楽しむコツなのだそう。

人気の返礼品は肉と魚介類

ふるさと納税でどんなお礼品を希望しているのか具体的に聞くと、全体で「肉」(58.2%)が最も多く、次いで「魚介類」(41.8%)、「米・パン・麺類」(32.6%)と続いた。

旅行でもそうですが、地方の魅力といえばやはり美味しい食べ物とお酒。上記のアンケート調査でも1位の「肉」から8位の「調味料・加工食品」まで、上位は食べ物かアルコール飲料で占められています。
そういった傾向を踏まえて、ふるさと納税で人気の自治体や返礼品を紹介していきましょう。

ふるさと納税で人気の自治体は

宮崎県都城市

都城市は、牧畜業が盛んで肉牛、豚、鶏が特産品。また、全国的に有名な焼酎「霧島」で知られる霧島酒造もある。同市の特設サイトによれば、2017年2月の人気特典は1位「宮崎牛ロース焼肉用(500g)」、2位「宮崎牛リブローススライス(600g)」、3位「宮崎牛リブロースステーキ(300g×2)」(※3つすべてA4ランク以上)。

山形県天童市

 そんなふるさと納税で今、山形県天童市が注目を浴びている。肉とお酒で圧倒的人気を誇る宮崎県都城市に続き、年間申し込み数は約18万件で全国2位、寄付金額は32億円を超えて3位(2位は静岡県焼津市)という好調ぶりだ。

静岡県焼津市

“選べるお礼品目の数が全国No.1(600点以上)”の焼津市。「品目は現在も増加中です。焼津は遠洋漁業が盛んで、本まぐろやかつおなどの水産加工品が充実。ミナミマグロもおすすめです」(財政課・松永雅樹さん)。

長崎県佐世保市

特設サイトの人気特典ランキングでは、1位「黒豚ロースステーキ(100g×10、調味料付き)」、2位「高級白身魚干物『百花繚乱』」、3位「海鮮具入りちゃんぽん」となっている。※2017年2月1日~28日集計

島根県浜田市

豊かな日本海の恵みを受け、アジ、ノドグロ、カレイという水産ブランド「どんちっち三魚」を定め、PRしている。特設サイトの人気特典ランキングによれば、1位「奥田政行シェフ監修!のどぐろオリジナルパスタ」、2位「のどぐろ味わいセット」、3位「浜田港燻し語り」とのこと。※2017年2月1日~28日集計

変わりダネの返礼品

生きたオオグソクムシ(静岡県焼津市)

10000円以上で、生きたままのオオグソクムシがクール便で送られてくるんだとか。苦手な人もいるかもしれませんが、よく見ると愛嬌のある顔で、水族館でも人気者となっています。

冬の北海道で「住宅冬期1カ月利用権」(北海道中川町)

北海道では移住を考えている人向けに、市町村が用意する家具・家電付きの住宅や長期滞在用施設を利用して短期間の生活体験ができる制度「ちょっと暮らし」を行っています。シニア層を中心に人気のこの制度、釧路などではリピーターも含め数千人が利用するほどの人気なんだそうですが、中川町では冬季(11月~4月)の利用権をふるさと納税の返礼品として用意しています。住宅に加え、滞在中の電気、上下水道、ガス、灯油、無線LANは自治体が負担してくれるのだそう。

ドローン(岐阜県関市)

関市(岐阜)の返礼品には、今はやりの産業用ドローン(ズーム空撮機)があり、寄附6万円でSP051 ドローンの半日体験、寄附130万円でSP052産業用ドローン(入門機)、寄附600万円でSP053 産業用ドローン(ズーム空撮機)を受け取ることができます。直接受け取りによる納品のため、関市までの交通費は寄附者負担となりますが、めったにできないレア体験ができるかも?!寄附金の使い道は地場産業の振興、子育て世代とその子どもたちの支援、ローカル線長良川鉄道の応援などに使われます。

テレビニュースキャスターになれる券(兵庫県多可町)

多可町(兵庫)は寄附100万円で、なんとケーブルテレビ「たかテレビ」の看板ニュースキャスター(リポーター)を1年間体験することができます。さらに1日ペア宿泊券と多可町のマスコットキャラクター「たか坊」「ふう子ちゃん」の記念品も贈呈されます。

一日村長体験(長野県木島平村)

一日村長体験の実施内容は希望を聞きながら決定するということで、朝礼で挨拶、記念撮影、ケーブルテレビの取材、村内施設の視察といった内容が想定されています。寄附金額は100万円以上。これで村長気分が味わえるのは高いのか安いのか…

バスの1日乗車券(岐阜県美濃市)

美濃市(岐阜)は昨年、寄附2万円に対する返礼品にバスの1日乗車券5枚セットを加えた。土日限定・期間限定という制約があったが、「うちの市に来てバス乗り放題なだけで返礼品として十分」と考えているとしたらスゴイ。

紹介したふるさと納税の返礼品は4月17日現在のものです。冒頭で紹介した総務省の通達により、今後返礼品の変更があるかもしれませんのでご注意を。ただ、ふるさと納税は地域の特産品を格安で手に入れる事ができ、また自治体も税収があがり双方に良い仕組みなのは間違いありません。上手に使って、両方に「美味しい思い」ができるようにしたいですね。

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