夏のボーナス予想「民間企業の平均40万8770円」は高い?低い? 研究員がズバリ指摘「喜びも半々、本当はもっと上がるはず」
J-CASTニュース / 2024年4月11日 19時11分
夏のボーナスは期待できそう?(写真はイメージ)
汗ばむ陽気の日が多くなると、夏のボーナスが気になるものだ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2024年4月9日に発表した「2024年夏のボーナス見通し~企業の好業績と人手不足を背景に増加続く」によると、夏のボーナス支給額予想は、民間企業で1人当たり40万8770円、国家公務員で1人当たり65万9500円というもの。
これってウハウハの額なのか、それともガッカリの額なのか、調査研究員に聞いた。
製造業平均が55万952円、非製造業が38万281円
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査は、事業所規模5人以上の企業を対象に、厚生労働省「毎月勤労統計」や内閣府人事局資料などをもとに予測した。
2024年夏の民間企業のボーナスは、1人当たり40万8700円(前年比2.9%増)で、3年連続で増加が見込まれる。好調な企業業績と堅調な雇用情勢が追い風となり、前年からの伸びは加速しそうだ【図表1】。
背景には、企業の経常利益がコロナ後、加傾向が続き、2023年4~6月期には過去最高を更新した。その結果、企業の内部留保(利益剰余金)も2023年末時点で571兆円と、過去最高金額を記録した。
こうした企業業績の好調ぶりを追い風に、製造業の平均が55万952円(同2.9%増)、非製造業の平均が38万281円(同3.0%増)と、ともに昨年を上回る見込みだ。また、支給される労働者の割合は80.1%(同0.1%増)と、2年ぶりに上昇しそうだ。
一方、国家公務員(管理職および非常勤を除く一般行政職)のボーナス(期末・勤勉手当)は、1人当たり65万9500円(前年比3.5%)と、民間を大きく上回る伸び率を示す見込みだ【図表1】。これは昨年11月の給与法改正で、ボーナスの基準となる基本給が約1.1%増加したことなどが大きい。
昨年冬ボーナスが悪すぎて、控えめに予想した数字
今回の夏のボーナス見通し、どう見たらよいのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をまとめた三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部研究員の丸山健太さんに話を聞いた。
――民間企業の平均支給額が1人当たり40万8770円で、前年より2.9%上がる予想ですが、この金額は「上がってよかった!」と喜ぶ数字なのか、「もっと上がるはずなのに」と残念がる数字なのか、ズバリどちらですか。
丸山健太さん まあまあ、喜んでいい金額なのではないかと思います。個人的にはもっと上がってほしいし、上がる伸び代(しろ)はあるはずだという思いはあります。しかし、まずは【図表2】の夏ボーナス予測の「支給総額」を見てください。
支給総額は、1人当たり平均支給額×支給労働者数として計算します。つまり、企業が今夏のボーナスのために出す人件費の総額ですが、前年比より4.4%増えると見込んでいます。
これは直近の消費者物価指数(2024年2月現在)の3.3%増を上回るばかりか、2023年通年の消費者物価指数3.8%増より高い数字です。
現在、23か月連続実質賃金(2024年2月の毎月勤労統計)のマイナスが続いていますが、物価上昇分より高いボーナスを出すことによって、ようやく実質賃銀がプラスになる展望が開けそうです。
そうなると、個人消費の回復を下支えすることが期待されます。
――「もっと上がる伸び代(しろ)があるはず」と言いましたが、どういうことでしょうか。
丸山健太さん 民間企業の平均支給額を前年比2.9%増と推測したのは、じつは控えめな数字です。企業が利益剰余金を内部留保として貯め込んだ額は、571兆円という空前の巨額にのぼります。
また、瞬間風速的に非常に好調な企業業績や、4万円に迫る日経平均株価の強さを考えると、個人的にはもっとボーナスを出せるはずという思いはあります。しかし、昨年(2023年)冬のボーナスが悪すぎました。
昨年も春闘賃上げ率は3.60%と、30年ぶりの高水準だったので、当社は冬のボーナスの平均支給額を前年比2.2%増と予想したのです。しかし、実際は0.7%増にとどまり、想定外の小幅な伸びに終わりました。支給総額も1.8%増と、物価上昇分をはるかに下回りました。
春闘の高い賃上げ率にもかかわらず、「期待外れ」の結果に終わったのです。
今年の夏には、実質賃金はプラスになる?
――なるほど、今回もそうなるかもしれないと、控えめな数字を予想したわけですね。ところで、実質賃銀がプラスに転じるのは、いつごろと見ていますか。
丸山健太さん 今年の春闘の賃上げ率は、連合の発表によると、前年比プラス5%台の高い水準です(第3次集計は5.24%増)。そうした賃上げの成果が賃金に織り込まれるのは夏ごろです。好調な企業業績や日経平均株価の強い上昇を考えると、夏ごろか、今年後半にはプラスに転じるとみているエコノミストが多いです。
――そんなに業績が好調ならば、企業は巨額な内部留保をもっと賃上げやボーナスに使えるはずだ、という議論があります。たとえば、帝国データーバンクが2024年3月26日に発表した「企業の『潜在賃上げ力』分析調査」を見ると、企業が内部留保の30%分を人件費に「投下」すると、中小企業で5.9%増、大企業ではなんと18.9%増、全体でも6.3%増の賃上げが実現するとあります。
丸山健太さん そのリポートは読みましたが、内部留保をもっと人件費に使えば高い賃上げが実現するというのは、その通りだと思います。
ただ、企業には内部留保を取り崩せない事情があります。先行きの不透明感です。「失われた30年」のほか、コロナ禍でゼロゼロ融資に頼らざるを得なかった経験があり、同じような危機に備えて資金調達を用意しておく必要があります。
――今夏のボーナスが特に多く出そうな業界はどこですか。
丸山健太さん 情報通信業は、人手不足と高い需要があって、高額が期待できるでしょう。鉄道、旅客、運輸、飲食関連業も、昨年はコロナから十分に回復し切っていないので、今年は押し上げる効果があるとみられます。また、自動車も春闘では満額回答が多く出ており、円安の中で各社とも好調なので、期待できそうです。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
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