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auがCM制作に生成AIを活用、その狙いは?

ASCII.jp / 2024年3月13日 17時0分

 au(KDDI)のCMとしてよく知られた「三太郎CMシリーズ」。人気俳優が演じる桃太郎、浦島太郎、金太郎の“三太郎”と、かぐや姫、乙姫、鬼など周囲の登場人物が繰り広げるコメディ調のタッチが人気だ。

 同シリーズは毎年、新年に新CMを公開しているが、2024年の1月から放映された「さぁ、何やる?」篇では、シリーズ初となる生成AIを活用。過去に放映したおよそ160本のCMからシーンを厳選し、人気イラストレーター・松本ぼっくり氏の作品およそ200点を学習させたAIで生成した映像を用いている。

 生成AIを活用することになった背景や、AIを制作に用いることの面白さ/難しさ、そして今後の展開について、担当者にきいた。

生成AIを映像制作に使う難しさと面白さ

 質問に答えてくれたのは、KDDI ブランド・コミュニケーション本部 IMC推進室 室長の山中雅貴氏と、クリエイティブを担当した電通の奥村誠浩氏、Think&Craftの松本章太郎氏だ(以下、略敬称)。

──まずは、三太郎CMで生成AIを活用することになった背景と経緯を教えてください。

山中「三太郎のCMシリーズは2024年で10年目をむかえました。そのタイミングで何かチャレンジができないか? という話が以前からあったことと、KDDIとしても中期的な戦略の中で、通信をベースにしながらAIの活用を広げていくという戦略を持っています。AIをCMの制作に用いることは『おもしろいほうの未来へ。』というブランドのメッセージにもなると考え、企画が始まりました」

──放映後、視聴者からはどのような反応がありましたか?

山中「CMのファンとして喜んでいただいている声も多数ありましたが、『なんで生成AI』と唐突さを感じていらっしゃる方や、『せっかくのタレントをなぜイラストに?』といったご意見もありました。印象として、好意的なご意見と、否定的なご意見の両方があるように感じました」

──生成AIそのものを、あまりよく思わない方もいますね。

山中「私としては、生成AIを使うことそのものでなく、生成AIを用いることによって生まれる“面白さ”の方に価値を感じていただければ、という思いです」

──生成AIを制作に使用するのは初ということで、これまでの制作過程になかった苦労もあったのではないでしょうか。

奥村「まあ、これがはじめはうまくいかないんです」

──どんな工程になりましたか?

奥村「工程で言えば、これまでの基準で考えると、無駄な作業が多いといいますか。『こう作りたい』というこちらの完成形のイメージに対して、生成AIがどんなものを出してくるのか、予想がつかないことがあります。もちろん、プロンプトを書いているのである程度はわかるのですが、まだ精度としては、狙ったものが完璧に出力されるという段階には至っていません」

──印象的な出来事はありましたか。

奥村「よく覚えているのは、持っていないはずのコップを突然手に持っているシーンが現れたり、衣装が、元のイラストと全く異なるものに変わってしまったりですね。男性キャストのシーンが女性イラストに変わってしまっていたり」

山中「正直なところ、最初は『これはやばいな』と思いました。これじゃ、見れる作品にならないんじゃないかと」

奥村「そうした面に、生成AIを使用する難しさもありましたが、同時に、生成AIを使う面白さもあったと思います。もちろん、生成AIが出力してきたものをそのまま使用するわけではないので、編集やプロンプトの修正を繰り返して制作を進めていきましたが、最終的には、ギリギリの戦いの中で、いいクオリティの映像に仕上がったのではないかと考えています」

AIは映像制作をどう変えていく?

──少し話題を変え、生成AIを、CMも含めた映像制作に使うことの意味や、今後の展開について、映像を制作するプロフェッショナルの皆様にうかがってみたいと思っています。まず、映像の生成という技術が普及していくことで、映像制作の現場はどのように変化していきそうでしょうか。

奥村「現段階での生成AIを前提とした話だと、まず『大量に作っていける』というところにわかりやすいメリットがあります。大量に作っていって、どんどんアイディアを試していける」

au CM「さぁ、何やる?」篇より

──これまでだったら「イメージにそぐわないな」と思ったときに、大きな手間をかけて修正する必要があったのに、はじめから大量のイメージを試して、条件に合うものを使えるようになる……というイメージでしょうか。

奥村「そうです。それから『世界観を拡張できる』というのも、AIの持つ特性だと思うんですね。0から1に進むところは、私たちが考えなければいけない部分ですが、1の外にあって、無数に広がっていく100までの過程を、生成AIがサポートしてくれる。これまでの常識では生まれなかった、不思議な印象を持つCMも増えていくかもしれませんね」

松本「最近では、芥川賞を受賞した方がChatGPTを使っていて話題になりました。まだ生成AIは、制作の過程のすべてを塗り替えるという段階までは至っていないと思いますが、映像においても、制作過程の中で活用することで、クリエイターの頭の中にあることを再現していくためのツールになってきていると思います」

──頭の中の再現という意味では、制作のスキルを持っていない人も、アイディアを具現化できるのが当たり前になるのかもしれません。

松本「はい、僕はそういう風に(多くの人が、クリエイターとしての能力を使えるように)なると思っています」

──最近はかなりハイクオリティの映像を生成するAIも出てきていますから、それが普及していった後に、また状況が変わっていきそうですね。これからのauのCMが楽しみです。

山中「生成AIを使うことで、CM制作の時間や予算を、これまでとは異なる部分にかけられるようになる面もあると思います。今回は、メッセージを発信する意図もあって『生成AI』をコンセプトとして押し出していますが、何も知らない状態で視聴いただき“生成AIを使っているかどうか、誰も気付かない”けれども、面白い映像になっているというのが、将来的に目指す理想かもしれません」

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