無料で使えるExcelにWord、Microsoft 365のウェブ版を調べた
ASCII.jp / 2024年3月31日 10時0分
頻繁ではないが、ExcelやWordを使いたくなることがある Microsoft 365のWeb版であれば無料である程度使える
PCを仕事で使わない人でも、表計算やワープロが必要になることはある。こうしたとき無料で使える選択肢として、Libre OfficeやGoogleドキュメントなどのほか、Microsoft 365も制限こそあるものの、Web版(オンライン版)も入ってくる。今回は、無料で使える範囲でMicrosoft 365を調べてみた。
結論から言えば、無料のオンライン版Microsoft Officeアプリでも、文書の作成や編集、そして保存(OneDriveのみ)ができる。OneDriveに保存した後なら、リンクを使ってのファイル共有が可能で、ダウンロードしてローカルドライブで扱える。ただし、ローカルにOfficeアプリがなく、オンライン版Officeを使うのであれば、OneDriveに保存されている状態が扱いやすい。
Microsoft Officeには、簡易版のOffice Mobile(Excel、Word、PowerPoint)があり、ローカルアプリケーションとして実行できる。ただし、Microsoft 365サブスクリプションがない場合、ファイルを保存できるのは、10.1インチ以下のタブレットに限られる。それ以外のマシンでは、ローカルアプリケーション版のファイルビューアーにしかならない。
●Office Mobile https://www.microsoft.com/ja-jp/office/homeuse/device-tablet-default
まずはMicrosoft365.comにアクセス
まずMicrosoft 365のWeb版を使うには、Microsoftアカウントは必要となる。Microsoft365.comやOneDriveへのMicrosoftアカウントによるログインが求められるからだ。なお、Windowsのユーザーアカウントは、Microsoftアカウントに紐付いていないローカルアカウントでも構わない。
Excelなどを利用するには、まずブラウザで「https://www.microsoft365.com/」にアクセスする。Microsoftアカウントでログインすると、ホームページ(以下、ホーム)が表示される。ここでは、「Word」「Excel」「PowerPoint」「Outlook」「OneNote」などのOffice系アプリ(すべてオンライン版)を起動できる。
ホームに到達するには、URLを入力する(あるいはブックマーク)方法もあるが、Edgeだとウィンドウ右側にある「サイドバー」にある穴の開いた六角形アイコン(これがMicrosoft 365のアイコン)から直接行くこともできる。他のブラウザを使っている場合、標準でインストールされるEdgeをMicrosoft s365専用にするという方法もありえる。
ホームの上部からは、各アプリの新規作成画面が直接開き、左側のアイコンからは、各アプリのホームページが開く。
なお、以前からある「www.office.com」でも同じようにMicrosoft 365のホームページに到達することができる。URLが異なるのみで、ページとしては同じようにしか見えない。
バージョン番号の確認方法
オンライン版とローカルアプリケーション版ともに常時アップデートがなされており、場合によってはバージョン確認が必要になることがある。なお、オンライン版とローカルアプリケーション版のバージョン番号には似たものが使われているが、ビルド番号は異なり、開発自体は分離されているようだ。しかし、装備されている関数などはほぼバージョン番号に従っており、バージョンが同一なら、基本同等の機能があると考えてよさそうだ。ただし、後述のように未対応の機能もある。
オンライン版では、リボンのファイルタブを開き、左側のグレー領域にある「バージョン情報」でバージョン表示ができる。ページ下の「ビルド」に記載されているのが、オンライン版のバージョン番号である。原稿執筆時点では、「16.0.17525.42300」がバージョン番号であり、後半の「17525.42300」がビルド番号である。
ローカルアプリケーションでは、リボンの「ファイルタブ」→「アカウント」→「製品情報」→「××のバージョン情報」にバージョン表記がある。
ここではバージョンは「西暦下2桁+2桁月表記」となっており、別にビルド表記がある。原稿執筆時点では、「バージョン 24.02(ビルド 17328.20184 クイック実行)」となっていた。末尾の「クイック実行」は、ローカルアプリケーションのインストール方法を示す。また、アイコンのあるボタンを押すと、Windowsの伝統的なAboutダイアログが表示されるが、こちらではビルド「16.0.17328.20184」と先頭に「16.0.」が付くので注意してほしい。
なお、ローカルアプリケーション版Officeアプリの更新履歴は、Microsoftの以下のページにある。
●Microsoft 365 Appsへの更新のリリース情報 https://learn.microsoft.com/ja-jp/officeupdates/release-notes-microsoft365-apps
このページでの「バージョン」は「西暦下2桁+2桁月表記」であり、ビルドは、数字5桁2つをピリオドでつなげたものだ。ローカルアプリケーションのバージョン表記に準じた表記となっており、オンライン版に関してはビルド番号で対応を調べる必要がある。
では実際にExcelを使ってみる
Webブラウザ上で動作するオンライン版Officeアプリは、現在のところは「~ for the Web」という名称になっている。Excelならば、現在の名称は「Excel for the Web」である。
以前は「~ on the web」や「~ web app」だったような気がするが、ときどき名前が変わっている。もしかしたら、この記事を書いている間にも名称が変更されてしまうかもしれないので、ここでは「オンライン版Excel」などと表記して、ローカルアプリケーションのExcelと区別することにする。
オンライン版Excelは、ローカルアプリケーションのExcelとほぼ同じ機能を持つ。全部を検証したわけではないが、キーボードショートカットも同じで、使い慣れたExcelそのままだ。
ハッキリわかる機能の大きな違いは、リボンのデータタグにある「データの取得と変換」の部分だ。オンライン版ではこれがなく、CSVや他のブックなどからデータを読み込んでテーブルにする機能が無い。PowerQueryも使うことはできない。
ただし、ローカルアプリケーションで作成されたクエリや接続などを見ることはでき、更新は不可能だが、ワークシートはローカル側で最後に保存した状態になる。また、無料版ではPowerBIとの連携ができない。ただし、この機能は企業向けサブスクリプションの機能である。
次にExcelで、最近搭載された新機能に関して調べてみた。前述の「リリース情報」ページによれば、最後にExcelに追加された機能は、2023年9月の「データの自動変換の制御」だが、オンライン版はCSVファイルを開く機能などがなく、設定ページもまったく異なる。
オンライン版Officeアプリでは、設定項目がほとんどなく、ローカルアプリケーション版のように細かく動作を制御できない。「データの自動変換の制御」も、実際には設定ページに機能があり、オンライン版には存在しない。
ただし、2023年8月の「Ctrl+Shift+V」による書式なし貼り付け操作は装備されていた。同様に2022年12月のIMAGE関数、画像認識のよるワークシート入力(同10月)、TEXTSPLITなどの新しいテキスト関数(同8月)もあった。
無料アカウントでは、企業向けサブスクリプションで利用可能なOfficeスクリプト(TypeScriptによるマクロ機能)が利用できない。リボンの「自動化」タグが表示されず、ブックに添付されたOfficeスクリプトも実行することができない。
オンライン版での文書ファイルの扱い
オンライン版Excelでブックファイルは、既存のファイルをOneDriveから開く、あるいは新規作成で開くことで編集状態にできる。オンライン版Excelのホームページは、ローカルアプリケーションのリボンの「ファイル」タブ(Officeバックステージ)と同じ機能を持つ。
ここでは、既存のファイル(OneDrive)、またはテンフレートからの新規作成ができる。ローカルドライブにあるブックファイルを開くには、OneDriveの同期フォルダに入れるか、OneDriveのWebページを開いて、ファイルをドラッグ&ドロップするなどして、一旦OneDrive側に配置する必要がある。
オンライン版Officeでは、文書ファイルは自動保存になっている。新規作成の場合でも「ブック␣数字」というファイル名で、OneDriveのルートフォルダに既存のブックファイルと衝突しないファイルが作られる。
ファイル名を指定する、あるいはフォルダを指定して保存したいこともあるだろう。保存には大きく2つの方法がある。1つ目は、現在編集している文書の他のフォルダに書き込むもの(名前の変更も可能)。この場合、元のフォルダに文書ファイルが残らない。ここではこれを仮に「移動保存」と呼ぶ。もう1つは、別のフォルダに文書ファイルのコピーを保存するもの。この場合、元の文書ファイルは残ったままになる。同様にこれを「コピー保存」という。
移動保存させる場合、リボンの上、ウィンドウ左側にあるファイル名をクリックしてフライアウトを表示させて実行する。ここにはファイル名欄と保存先フォルダ指定がある。保存先フォルダを変更すると、編集中のブックファイルは、指定フォルダに移動し、以後はそこに保存されるようになる。
コピー保存の場合、リボンのファイルタグを開き、左側のグレーの領域にある「名前を付けて保存」を選び、さらに右側の領域にあるフロッピーディスクアイコンの右側にある「名前を付けて保存」をクリックする。
すると、OneDrive上のフォルダーを選択するダイアログが表示される。ここで保存先のフォルダーを選択して、「選択」ボタンを押す。ダイアログが閉じるとファイル名の入力ダイアログが表示されて保存できる。
ファイル名を入力するとき、保存先フォルダのファイル名が表示されないため、衝突が心配だが、少なくとも同じファイル名を使うと、上書きするか、名前を変更(拡張子の前に括弧でくくられた数字を入れる)するかを選択できる。ただ、既存のファイル名を見ながらファイル名を決めることができないので、連番などを付けて保存するのがやや面倒だ。
筆者が試した範囲では、コピー保存でフォルダの指定のあと、「選択」ボタンの反応が悪く、何回ボタンを押しても反応しないことがたびたびあった。このような場合、Excelを動かしているタブを閉じてしまっても、文書ファイルは自動保存されているので、文書がなくなるようなことはなかった。
使い方としては、新規に文書を作ったら、移動保存を使ってブックファイル名と保存先を最初に指定するのがよさそうだ。
Office文書を表示、他のユーザーと共有する
人からExcelやWordのファイルをもらうこともあるだろう。メール経由ならば、オンライン版Outlookで受信すれば、オンライン版Officeアプリで文書を開くことができる。また、Windows 11付属のメールや後継のOutlookでも、Microsoft Officeの添付文書ファイルは、ローカルアプリケーションがインストールされていなければ、オンライン版Officeアプリケーションで開くことができる。
ローカルドライブにMicrosoft Officeの文書ファイルを保存すると、ローカル環境の設定が有効になる。たとえば、LibreOfficeのようなMicrosoft Officeの文書ファイルを直接扱え、ファイルの関連付けをするアプリケーションがインストールされていれば、その設定が有効になる。
このため、Officeの文書ファイルをオンライン版アプリでのみ扱うような場合には、文書ファイルはOneDrive側に置いたままにして、オンライン版アプリでのみ扱うようにしたほうが話が簡単になる。ファイル自体を直接扱うときには、オンライン版のOneDriveアプリを使い、文書ファイルの送信などにはオンライン版のOutlookやTeamsを使うなど、オンライン版で完結させたほうがいい。
文書ファイルの共有は、OneDriveの機能を使うが、指定はオンライン版アプリのホームページ、Microsoft365のホームからアプリアイコンをクリックして開く)でできる。
ここに最近使ったファイルの一覧があり、ファイル名の右側にある点が3つ並んだアイコンをクリックすると、メニューに「共有」がある。共有は、OneDrive上のファイルへのリンクを使う。リンクをメールやチャットなどなんらかの方法で、他人に伝えることで、文書ファイルの共有が可能になる。
長年PCを使っていると、表計算ならExcelを使いたいと思ってしまう。筆者も仕事ではExcelを使う。しかし最近では、表計算の文書ファイルそのものよりも、必要な情報を表示している「画面キャプチャ」で事足りることが増えた。
高頻度でデータ入力するものならまだしも、更新頻度が低いのであれば、画面キャプチャのほうが見つけやすく、扱いも簡単だ。Webページやブログなどでも苦労してHTMLのテーブルに変換するより、画像を貼り付けるほうが手間がかからない。そろそろExcelブックファイルからの呪縛から逃れるときかもしれない。
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