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【第8回横浜トリエンナーレ】 リニューアルした横浜美術館や 横浜にあふれる見どころをチェック

CREA WEB / 2024年5月3日 17時0分


第8回横浜トリエンナーレ展示風景(会場:横浜美術館)©オズギュル・カー©アネタ・グシェコフスカ 撮影:冨田了平

 3年に一度開かれる現代アートの祭典、横浜トリエンナーレも今回今年で8回目。横浜は、歴史的建造物が立ち並び、個性が際立つ注目のギャラリーも数多く点在するなど芸術的な魅力を持っている港町です。トリエンナーレをきっかけに、横浜の街中にあふれるアートに少しだけ触れてみてはいかがでしょうか。

 初めてアートを観る人にぴったりな横浜の注目スポットとは? リニューアルした横浜美術館を中心としたトリエンナーレの会場と、身構えずに街歩きしながらアートを楽しめるスポットに分けて見どころをご紹介します。


テーマは「野草:いま、ここで生きてる」


第8回横浜トリエンナーレのテーマは、「野草:いま、ここで生きてる」。

 第8回を迎える横浜トリエンナーレのテーマは、「野草:いま、ここで生きてる」。先行きの見えないこの時代を、野草のようにもろく無防備でありながら、同時にたくましく生きようとするひとりひとりの姿に目を向けます。北京を拠点に活動するリウ・ディン&キャロル・インホワ・ルーをアーティスティック・ディレクターとして迎え、魯迅が生きた時代から今日までの約100年間を射程とし、その間におきた歴史の転換点や重大な事件を、世界各地のアーティストの作品を通してふり返ります。

「野草:いま、ここで生きてる」を全体テーマに、作品を7つの章立てで展示。横浜美術館・旧第一銀行横浜支店・BankART KAIKOにて「いま、ここで生きてる」「わたしの解放」「すべての河」「流れと岩」「鏡との対話」「密林の火」「苦悶(くもん)の象徴」の章の作品が並びます。

 建物の中に入らなくても、港近くの歴史的建造物や駅の通り道などに展示されているのも特徴の一つ。作品を通して、その先にきっとある希望を見つけ出していきましょう。

リニューアルした横浜美術館で注目すべきアーティストとは


横浜美術館撮影:新津保建秀016.Yokohama-Museum-of-Art_SHINTSUBO-

 1989年に開館した横浜美術館は、みなとみらい21地区で最初に完成した施設として、今に至るまでみなとみらいの中心となっています。迫力のある石造りのシンメトリーな外観は、国際的な港町である横浜にふさわしい趣。

 約3年にわたり休館していた横浜美術館は、第8回横浜トリエンナーレの開幕とともに、2024年3⽉にリニューアルされました。横浜の街が育んできた歴史と、発展し続けるみなとみらい21地区の息吹を感じながら「みなとがひらく」というミュージアムメッセージを掲げ、あらゆる人を歓迎し、どんな人の居場所にもなる、そんなひらかれた美術館を目指します。


第8回横浜トリエンナーレ展示風景(会場:横浜美術館)撮影:冨田了平

 そんなひらかれた美術館を象徴するのが、横浜美術館の無料で立ち寄れる大空間「グランドギャラリー」。ガラス張りの天井からは、やわらかな自然光がふりそそぎ、季節や時間によって表情を変えます。

 グランドギャラリーや階段を上がった有料エリアのギャラリー、外にあるギャラリー、外壁のアートなど横浜美術館でのトリエンナーレ会期中の見どころをご紹介します。

◆ピッパ・ガーナー@グランドギャラリー


第8回横浜トリエンナーレ展示風景、撮影:冨田了平 サンドラ・ムジンガ《そして、私の体はあなたのすべてを抱きかかえた》2024年/ピッパ・ガーナー《ヒトの原型》 2020年、Courtesy of the Artist and STARS, Los Angeles

ピッパ・ガーナー《ヒトの原型》2020年, Courtesy of the artist and STARS, Los Angeles, Photo: Bennet Perez

 横浜美術館に入ってすぐ目につくのがピッパ・ガーナーの作品。トランスジェンダーであり、自らの性移行をアート・プロジェクトとして公開するなど、既成概念にとらわれない多様性のあり方を社会に問います。こちらは、肌の異なる男女のパーツが組み合わさっているのが特徴的。2階に行くと、兵士に扮したガーナー自身の写真が展示されています。

◆ヨアル・ナンゴ@グランドギャラリー


ヨアル・ナンゴ《ものに宿る魂の収穫/Ávnnastit》2024年、撮影:冨田了平

 グランドギャラリーにはキャンプをテーマにした作品が多く展示されています。遊牧民のキャンプ、難民キャンプなどさまざまなキャンプの姿に、今を生き抜くヒントが見つかるかも。

 北極圏に生活する遊牧民「サーミ族」の血をひくヨアル・ナンゴは、人と自然の新たな共生の在り方を示す作品で知られていて、ヴェネチア・ビエンナーレでも注目されたアーティストです。

 こちらは、神奈川県内でヨアル自らが採取した木や竹が使われています。移動しながらその場に必要なものだけを得て暮らす遊牧民の生き方に、私たちの暮らしぶりを振り返ってみては。

◆オープングループ@グランドギャラリー


オープングループ(ユリ―・ビーリー、パヴロ・コヴァチ、アントン・ヴァルガ)《繰り返してください》(スチル画像)2022年、Courtesy of the Artists

 美術館内に響き渡るのは、ロシアのウクライナ侵攻に伴ってリヴィウの難民キャンプに逃れた人々が、武器の音を口で再現する声。「ウィーウィー」「ドゥドゥドゥドッドッドッ」などの大きくて不穏な音や、画面越しにこちらを真っすぐに見つめるウクライナ人の映像は、ウクライナの今を生々しく伝えています。

◆ルンギスワ・グンタ@ギャラリー8


ルンギスワ・グンタ《Benisiya Ndawoni:馴染みのないものへの回帰》2018年-2024年、Courtesy of Lungiswa Gqunta and WHATIFTHEWORLD、撮影:山本真人

 美術の広場に面したギャラリー8には、ルンギスワ・グンタの作品を展示。南アフリカにおいて植民地主義がもたらした不平等、不均衡を映し出す「風景」を作り上げてきました。こちらの作品は、人種隔離による暴力や領土の分断、抑圧等を思い起こさせる有刺鉄線を使ったインスタレーションです。

 ギザギザと絡まる有刺鉄線の周りの壁は明るいグリーン。複雑な社会状況の中でしなやかに生き抜くタフな姿を表現しています。

◆你哥影視社(ユア・ブラザーズ・フィルムメイキング・グループ)@ギャラリー2


第8回横浜トリエンナーレ展示風景、撮影:冨田了平 你哥影視社(ユア・ブラザーズ・フィルムメイキング・グループ)(スー・ユーシェン/蘇育賢、リァオ・シウフイ/廖修慧、ティエン・ゾンユエン/⽥倧源)《宿舎》2023年/2024年

 台湾の新北市にある寮を再現したこちらの作品は、カラフルなベッドや衣装、段ボール工作が置かれていて他と違った雰囲気。こちらではベッドに腰を下ろしながらストライキを起こしたヴェトナム人女性たちの日常風景をビデオ・インスタレーションで観ることができます。暗くて狭いストライキ中の寮生活の中でも、絵を描いたり笑い合ったりする彼女たちの姿にたくましさを感じました。

◆SIDE CORE@横浜美術館の側壁


SIDE CORE《big letters, small things》(部分)2024年、撮影:大野隆介

 横浜美術館の側壁にアートを施しているのは、3人組のアーティスト、SIDE CORE。屋外空間を使って作品を制作することで、アートを見るために訪れた人でなくてもアートに触れることができる機会を作り出しています。描く・消すといった行為に焦点を当てて会期中に作品が変わっていくのを楽しめるのが魅力的。

 トリエンナーレ会期中は、横浜美術館の他、旧第一銀行横浜支店やBankART KAIKOの外のエリアに作品を展示中なので、街歩きついでに鑑賞しやすいのもポイントです。

無料スポットも注目! 馬車道エリア旧第一銀行横浜支店・BankART KAIKO会場


第8回横浜トリエンナーレ 旧第一銀行横浜支店外観。撮影:佐藤 亘

 馬車道エリアにある旧第一銀行横浜支店会場・BankART KAIKO会場は、第8回横浜トリエンナーレのテーマ「野草:いま、ここで生きてる」の「すべての河」の章を展示。日常の暮らしの中で社会を変えるきっかけをもたらそうとする人たちの動きなどを表します。

◆革命の先のある世界をテーマとする旧第一銀行横浜支店会場


第8回横浜トリエンナーレ 旧第一銀行横浜支店会場内観。撮影:佐藤 亘

 旧第一銀行横浜支店会場の1階は「革命の先のある世界」というテーマにもとづいていて、他の会場よりも主張がストレート。2000年代から現在に至るまで原発問題や高円寺再開発反対問題など社会問題に注力し、そういった日々の出来事を4コママンガで紹介するなど、革命後の世界のイメージを「いま、ここで」実現させていく姿を象徴的に表現しています。

◆プック・フェルカーダ@旧第一銀行横浜支店会場3階


第8回横浜トリエンナーレ展示風景、撮影:大野隆介 プック・フェルカーダ《根こそぎ》2023年-2024年

 3階は、ベルリン在住のアーティストが妊娠中に制作したインスタレーションに注目。妊娠・出産というプライベートな出来事と世界規模で起こっている自然環境のことを重ねて表現した作品は、足を止めて最後まで見入ってしまいたくなるストーリーでした。

◆SIDE CORE@旧第一銀行横浜支店会場@BankART KAIKO会場の外


SIDE CORE《construction giant》2024年、撮影:大野隆介

 今から100年前に執筆された魯迅の『野草』を出発点とした今回のトリエンナーレ。その会場となった旧第一銀行横浜支店は、関東大震災復興期の約100年前、1929年に建てられた建物で、魯迅が生きていた時代と重なります。資本主義社会を批判する生き方を表現した作品を資本主義の象徴ともいえる会場で展示する対比のような見せ方に面白さを感じます。

 SIDE CORE(サイドコア)の映像作品は旧第一銀行横浜支店の建物の外側に大きく映し出されています。


BankART KAIKO 撮影:大野隆介

 BankART KAIKOの周辺は、約100年前の大正時代、海外輸出のため全国から絹が集められた場所でした。現在の北仲通地区一帯に大規模な生糸検査所関連施設が並んでいた創建当初の歴史的景観の一部を再現した複合施設内にあるのが「BankART KAIKO」。今では、横浜を代表するオルタナティヴスペースとして国内外に広く知られています。

 元は横浜生糸検査所の倉庫だったこの地下に見えるのはSIDE COREによる、ガラスに絵を描く人を写した映像作品。まるで足元の地下空間に人がいて、何かを伝えようと絵を描き続けているかのよう。下が透明になっていて少しのスリルも味わえます。

 SIDE COREの作品はいずれも建物の外にあるので、街歩きのついでに鑑賞できます。

駅近くにも! 通りすがりに見つかる期間限定アート

◆石内都@みなとみらい線馬車道駅コンコース


みなとみらい線馬車道駅コンコースにある石内都「絹の夢-silk threaded memories」主催:横浜トリエンナーレ組織委員会・BankART1929 撮影:佐藤 亘

 馬車道、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路など人々が行き交う通路などの無料空間に作品が展示されているのも、本展のユニークな試みのひとつ。

 みなとみらい線馬車道駅コンコースにある石内都「絹の夢-silk threaded memories」は、第8回横浜トリエンナーレ組織委員会とBankART1929によるプログラム。馬車道駅を使って旧第一銀行横浜支店会場などに行くときにチェックしてほしい作品です。


絹にゆかりのある馬車道に石内都「絹の夢」から紡がれた空間を立ち現す。撮影:佐藤 亘

 絹にゆかりのある馬車道に石内都「絹の夢」から紡がれた空間を立ち現します。こちらは、群馬県の製糸工場の写真と絣(かすり)の着物地の写真で構成されたインスタレーション作品で、中を通り抜けることもできます。カラフルな織物は、ヨーロッパの前衛的な柄を取り入れた斬新なデザインで、日本の近代女性が愛用していた普段着の着物なのだとか。カラフルな織物のパネルは、思わず立ち止まってじっくりと観てみたくなります。

◆チュン・イン・レインボー・チャン@元町・中華街駅連絡通路


チュン・イン・レインボー・チャン/陳雋然《生果文(果物の詩)No. 2》2024 撮影:佐藤 亘

 元町・中華街駅連絡通路に展示しているのはチュン・イン・レインボー・チャンによる「生果文(果物の詩)No. 2」。香港の先住民族のルーツをもつ彼女は、自身の民族に属する女性たちの文化を取り戻そうと、高齢の女性たちを訪ね、失われた伝統の復活に奮闘します。元町・中華街駅連絡通路には、結婚式で花嫁が実家との別れを嘆く様子を果物にたとえた詩が展示されています。展示のQRコードを読み込むと作家自身が弾き語りした歌を聴くこともできます。

第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」

2024年3月15日(金)~6月9日(日)
https://www.yokohamatriennale.jp/2024/

文=桐生奈奈子
写真=佐藤 亘

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