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世界初、通信波長の光に共鳴する電子とギガヘルツ超音波のハイブリッド状態を実現 ~超音波を用いた省エネ量子光メモリ素子の実現に期待~

Digital PR Platform / 2024年1月19日 0時0分

3.実験の概要
 実験に用いた超音波素子(図1)は、Er添加結晶(※4)の上に圧電薄膜(※5)を成膜し、その上に櫛型電極を配置した構成をとります。櫛型電極に電圧をかけると電極パタンに合わせて圧電薄膜が変形するため、櫛型電極の周期に応じた周波数の超音波(表面弾性波)を生成することができます。これにより結晶表面付近に歪が誘起され、歪を受けたErの共鳴周波数が超音波の周波数で変調されます。その結果、光吸収スペクトルには、本来のErの吸収ピークに加え、等間隔に離れた複数の吸収ピークが現れます(図2)。


[画像2]https://user.pr-automation.jp/simg/2341/81892/700_453_2024011710344065a72eb016d09.JPG


 これらの吸収ピークの間隔は超音波の周波数に一致しており、Erの電子状態と超音波が混ざったハイブリッド状態による吸収を示しています。この実験結果と超音波の深さ方向の歪強度分布を取り入れた解析により、結晶の最表面付近ではハイブリッドの程度が十分大きくなり、超音波を用いて励起電子の数や位相を操作できる可能性が示されました(図3)。


[画像3]https://user.pr-automation.jp/simg/2341/81892/700_459_2024011710343965a72eaf3e510.JPG


4.技術のポイント
(1)同位体純化されたErを添加した超音波素子の作製
 電子と超音波のハイブリッド状態を実現するには、Erを添加した結晶の上に高周波超音波を生成する構造が必要です。本実験で使用するEr添加結晶は圧電特性を持たないため、超音波を電気的に生成するための圧電性薄膜を結晶表面に堆積する必要があります。NTTは高い圧電特性と周波数特性を併せ持つ高品質な窒化アルミニウム(AlN)の成膜技術を有しております。この技術を用いて、Er添加結晶上にAlN圧電膜を形成した高周波超音波素子の作製に成功しました。この素子で結晶表面付近のEr光共鳴周波数を1 GHz変調する為に必要な電圧は僅か0.3 Vであり、低電圧で大きな変調が得られることが特徴です。
 今回作製した超音波素子には同位体純化されたErが使用されています。電子と超音波のハイブリッド状態を実現するためには、Erの共鳴線幅を上回る周波数でEr電子準位を高速変調する必要があるため、なるべく細い線幅を与えるErを用いる必要があります。Erには共鳴周波数が僅かに異なる複数の同位体が存在するため、一般的に得られる共鳴線幅は数GHz程度の広がりを見せますが、同位体純化したErの利用により、共鳴線幅は500 MHzにまで狭線化されます。これに2 GHzの超音波を作用させることにより、電子と超音波のハイブリッド状態を実現しました。

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