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【全文掲載】「マリウポリの20日間」監督が命を賭けて取材を敢行した理由を明かす 5800字超の声明文公開

映画.com / 2024年4月26日 11時0分

私はそこで、数十人の医師たちや数百人の患者たち、そして、我々が包囲されていることを知りました。

病院を守っていたウクライナ人兵士たちは姿を消し、病院の外へ危険を冒して様子を見に行った衛生兵は狙撃により死亡しました。これによって、食料や水、撮影機材を積んだ我々のバンには近づくことができなくなってしまったのです。

夜明けに突然、十数人の兵士たちが、「ジャーナリストたちは一体どこにいるんだ?」と、押し入って来ました。兵士たちの腕章はウクライナを示す青でしたが、彼らが偽装したロシア人である可能性を疑ってから、私は、自分がジャーナリストであることを告げるために一歩前に出ると、兵士たちは私に向かって、「貴方たちを外に連れ出すために来ました」と言いました。

手術室の壁は、建物外の砲撃や機関銃の銃声で揺れており、屋内に留まった方が安全なように思われましたが、ウクライナ兵たちは私たちを連れ出すよう命令を受けていました。

私たちは、匿ってくれていた医師たちや砲撃を受けた妊娠中の女性たち、他に行く場所が無く廊下で寝ていた人たちを置き去りにして、通りに飛び出しました。彼ら全てを後に残したことで、私は酷く辛い気持ちになりました。

道路や爆撃を受けたアパートの残骸を通り抜ける9分間、あるいは10分間は、永遠のように感じました。近くに砲弾が落ちると、地面に伏せ、一回の弾着から次までの時間を計測しながら走る我々の身体は緊張し、呼吸は止まったままのようでした。次々に襲ってくる衝撃波に胸を揺さぶられて、私の手は冷たくなっていました。

やっとの思いで通用門に到着すると、装甲車で暗い地下室に運ばれました。その時になって初めて、私たちは、ウクライナ側が兵士の命を危険に晒してまで私たちを病院から連れ出した理由を一人の警察官から告げられたのです。

「もしロシア側が貴方たちを捕えれば、貴方たちは、カメラの前に立たされて、今まで撮影したものは全て嘘だと言わされます」

「マリウポリでの貴方たちの尽力や取材の全てが無駄になってしまうのです」

滅びゆくマリウポリを世界に見せて欲しいと以前に私たちに懇願したその警察官は、今度は私たちにマリウポリから脱出するよう要請しました。彼は、マリウポリを去る準備をしている数千台の使い古された自動車の方に私たちを連れて行きました。それが3月15日のことです。生還できるのかどうかは分かりませんでした。我々は車に3人家族と共にすし詰めになったまま、市内から5km続く渋滞に巻き込まれました。約3万人が、その日、マリウポリから脱出をしようとしていたので、車の内部をロシア兵たちがじっくり検分する時間も無いほどの台数だったのです。皆不安を感じていたのでしょう。人々は、口論し、互いに叫び合っていました。その間もずっと軍用機が飛び空爆が行われ、地面は揺れ続けていました。

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