【2024年より新制度】高齢者が、NISAなどへ長期積立投資する場合に心配なこと <その1>
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月18日 10時20分
2024年から始まった新NISAのつみたて投資枠は、月100円(投資額は金融機関にもよります)から、何歳からでも始められて、いつでもやめることができます。したがって、初心者が長期積立投資を始めるのに適しているといえるでしょう。長期積立は時間のリスクを軽減する投資方法で、資産運用をするうえでは非常に有効な手段です。 しかし、若い方ならともかく、高齢者の場合は「自分の寿命を考えると、10年や20年かけて投資をするのは向いていないのではないか」と考える人もいるでしょう。では、高齢者の場合、どのように長期投資をするべきでしょうか。本記事で見ていきましょう。
NISAの長期積立投資中に、万が一のことが起こったら?
そもそも自分の寿命は誰にも分からないので、一概に「高齢者だから長期投資はすべきではない」ということにはなりません。
しかし、投資をするときには、計画どおりいかなくなった場合の代案や、備えを常に用意しておく必要があります。高齢者の場合、長期積立投資に対する備えの一つは、例えば「相続」です。
一般的に相続人がいる方は、株式や投資信託(以下、株式等)を相続すれば、妻や子などの相続人がさらに10年や20年の長期投資を引き継いでくれ、時間のリスクはさらに緩和されます。NISAの場合は、口座そのものを引き継ぐことはできませんが、他の相続財産と同様、NISA口座内の資産を相続人に相続することができます。
それでは、NISA口座で貯めた資産をどのように相続するのが最も効率的か、見てみましょう。
NISAの長期積立中の相続はどうなる?
NISAの長期積立中に万が一のことが起こった場合、相続が発生し、所得税と相続税の2種類の税金がかかります。
1つ目の「所得税」は、被相続人となる方自身の存命中に株式等を売却したときにかかります。一般的に、相続の場合は売却する必要はありませんが、株式等の所有者の名義を変更する必要が出てきます。
2つ目の「相続税」は、株式のみならず、主に相続人の財産全てを相続人が引き継ぐ場合に発生する税金です。
所得税に関するNISA相続の手続き
先述のとおり、相続の際には株式等を売却する必要はありません。相続人は、被相続人の死亡を知った日以後、遅滞なく、金融機関へ「非課税口座開設者死亡届出書」などの書類を提出すればよいのです。あとは、金融機関が株式等の名義変更手続きを行ってくれます。
所得税は相続後、相続人が株式等を売却したときに、相続人に対してかかります。その場合、NISA口座は非課税口座なので、被相続人が亡くなるまでの利益には課税されません。
また、相続人は相続した株式等を自身のNISA口座に移管することはできず、自身の特定口座や一般口座に移管することになります。すなわち、相続人は原則として相続発生日の時価で株式を取得したことになり、売却日の時価との差額に課税されます。
したがって、被相続人の運用期間中は非課税だった株式等の利益にも、相続人の運用期間中は課税されることとなります。
もし、相続人の運用期間中に課税されることを避けたいのであれば、「相続直後に株式等を売却し、売却した代金で別の株式等を運用する」という方法があります。そうすれば、相続人の保有期間はほとんどゼロになるので、被相続人が購入してから相続人が売却するまでの期間を、実質非課税にすることができます。
また、相続した株式等を相続人の特定口座で運用する方法もあります。この場合、所得税はその利益に課税されますが、他の特定口座との損益通算が可能になります。
その他、NISA口座の株式等を相続したあとで課税される対象については、図表1を確認してください。
図表1
NISA口座で運用した株式・投資信託を相続した場合の課税関係
筆者作成
まとめ
本記事では、高齢者がNISAで長期積立投資をしているときに、万が一のことが起こった場合の対策として、「相続」の手順を説明しました。「その2」では、NISA口座ではなく、特定口座・一般口座の株式を相続する場合の、「所得税」と「相続税」の課税関係について、説明したいと思います。
出典
国税庁 No.1464 譲渡した株式等の取得費
国税庁 相続税のあらまし
国税庁 NISA及びつみたてNISAの手続に関するQ&A
国税庁 株式・配当・利子と税
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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