KKR傘下の西友が北海道・九州から事業撤退へ…「西武」と同じ運命をたどるのか?
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年4月11日 9時26分
どうなる?(写真は関東の店舗)/(C)日刊ゲンダイ
【経済ニュースの核心】
「解体・切り売りによる『出口戦略』の序章では」。流通業界関係者の間ではこんな見方も飛び交う。
米投資ファンド・KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)傘下の総合スーパー大手、西友が北海道と九州からの事業撤退を決めた。本州に経営資源を集中、「商品供給はじめ物流効率化などを進めて収益基盤の強化につなげるのが狙い」(西友関係者)とされる。背景には運送業界の「2024年問題」もあるという。
ただ西友が札幌市で展開する9店舗はいずれも好立地。九州地区も福岡市の再開発進展や台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出で人口増が見込めるなど事業環境は「悪くない」(地元財界筋)。
米流通最大手・ウォルマートの子会社だった西友株の過半をKKRが取得して約3年。同社の大久保恒夫社長は「新たな分割・売却は考えていない」としているが、投資回収に向けた動きが今後、加速していく可能性は拭えない。
札幌市内の店舗はイオンの上場子会社、イオン北海道に170億円で売却する。9店合わせた売上高は22年12月実績で251億円。イオン北海道の5月定時株主総会で承認を受けた後、10月メドに譲渡を完了させる。
九州地区の事業は中四国などを地盤とするスーパーのイズミに8月売却する。エリア内の店舗数は69店。大半が「サニー」ブランドで展開している食品スーパーで、イズミの熊本県内の子会社が受け皿となる。売却額は非公表だが、九州事業の売上高は969億円、売上総利益は267億円(22年12月期)。買収後のイズミの九州内店舗は8割強増えて153店に拡大する見通しだ。
西友は堤清二氏(故人)が率いた西武流通グループの中核企業の一つだったが、経営悪化などで02年にウォルマートの傘下入り。ただ再建にてこずり、21年には保有株の85%をKKRと楽天グループに譲渡。23年には楽天が持ち分(20%)を手放して撤収し、現在はKKRがほぼ一手に経営権を握る。23年12月期の売上高は6647億円で前期比5.7%減収。今回の事業譲渡で西友の国内店舗網は2割超減って246店に縮小される。
待ち受けているのはもう一つのグループ中核・西武百貨店(現そごう・西武)と同様の運命かも知れない。
(重道武司/経済ジャーナリスト)
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