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スバル、山崎製パン、キリン……相次ぐ“事故” 問題の根っこに何がある?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月24日 8時35分

 農林水産省発行の『食品産業の働き方改革 早わかりハンドブック』によれば、全産業が31.1%のところ、製造業は12.6%。しかし、これは食品製造業になると非正規労働者比率は50%に跳ね上がる。

 それがよく分かるのが、山崎製パンだ。

 2023年12月期の有価証券報告書によれば、山崎製パン本体の従業員1万9446人の中で臨時従業員数(年間平均雇用人員)は6601人と3割ほど。それが連結会社になると、3万554人の中で臨時従業員(同上)は1万9144人と62%に及ぶ。

 あれほどおいしいパンが、びっくりするほどお求めやすい低価格で世に送り出せるのは、この会社を支える大量の非正規労働者の皆さんが「低賃金重労働」に耐えてくれているからなのだ。

 そして、このような非正規労働者の皆さんがノーと言えない「弱い立場」であることは言うまでもない。社員の管理者から「やれ」と言われたらそのノルマをなんとか達成しなくてはいけない。正社員と違って、業績が悪くなったり事業が縮小したりすればあっさりクビを切られる人々が、自分の身を守るには「何を言われても嫌な顔せず従う従順な作業員」を演じるしかないのだ。

 こんな不平等な労使関係では、災害が起きやすいことは言うまでもない。

●奴隷のような高齢者が増えてしまう可能性も

 今回、山崎製パン工場の死亡事故について『週刊新潮』が問い合わせをしたところ、窓口となった広報担当者が笑いながら応対したという。この人からすれば、60代のパート女性は「同じ会社で働く仲間」という感覚ではなかったのかもしれない。外国人労働者などと同じく、「安くてうまいパン」を製造するための「安価な労働力」としか見ていないので、女性の死もどこか遠い国の話のように思って、笑みがこぼれてしまうのだろう。

 もちろん、食品工場で働くアルバイトやパートの皆さんの中には、自分たちが企業側から「冷遇」されているという自覚がある。

 長時間労働のわりに時給が安いからだ。前出『食品産業の働き方改革 早分かりハンドブック』によれば、「食料品製造業の労働生産性は、全産業平均の約7割、製造業平均の約6割の水準で低迷している」という。

 生産性の低い仕事をやらされているので、パートやアルバイトの皆さんはモチベーションが上がらない。労働意欲が低下すれば当然、安全管理もおざなりになる。食品製造業が他の製造業と比べて突出して労災が多い背景には、この業界が抱える「低賃金・低生産性」も無関係ではないのだ。

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