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60ミリ迫撃砲の有用性 後編

Japan In-depth / 2021年9月5日 15時30分

このため諸外国では近年ATV(All Terrain Vehicle:全地形対応車)を弾薬運搬に使用するケースが増えている。例えば英軍ではアフガニスタンの戦闘において小隊・分隊レベルで、60ミリ迫撃砲や弾薬の運搬のために、ヤマハのATV、グリズリーを採用した。これはそれまで使用されていたホンダ450のリプ後継用で、421ccエンジンを搭載した民間用グリズリーATV(All Terrain Vehicle)450IRSを改良したものに、ロジック社のSMT171bトレーラーを組み合わせたシステムだ。これが09年に200セット、5万ポンド(約7.5億円)で発注された。









▲写真 オスプレイに搭載するATV「ファントム・バジャー」 出典:ボーイング





我が国では川崎重工、ヤマハなどがATVを生産している。このため技術的にも兵站的にも自衛隊用のモデルを開発・整備は極めて容易で、コストもかからない。だがそれが現状できない。それは国内では道路運送車両法などの法規規制の関係からATVの多くは公道を走れないからだ。このため極めて限定された市場しか国内には存在しない。





これは大きな損失だ。ATVは軍民両用製品であり、日本の防衛産業の輸出品として極めて潜在的に高い可能性がある。また多くの国の軍隊でATVが「21世紀のジープ」すなわち、高い路外性能を有したオフロード車輌として注目されている。オスプレイのカーゴスペースは狭く、通常の車輌は搭載できないが、ATVならば搭載が可能だ。法改正を行って、少なくとも自衛隊車輌に関しては規制の対象外とすべきだろう。









▲写真 英陸軍のATV 出典:British Army





南アフリカ陸軍の特殊部隊では特殊戦用車輌、BAT及びその後継のホーネットにモジュラー型の自走60ミリ迫撃砲システムを搭載している。これは汎用の特殊部隊車輌に60ミリ迫撃砲用のターンテーブルを搭載したものであり、容易に取り外しが可能である。60ミリ迫撃砲の代わりに107mm多連装ロケットランチャーを装備することも可能だ。この自走迫撃砲は60ミリ迫撃砲に極めて高い機動性を付加し、また併せて弾薬も搭載できるために連続した火力支援が可能となる。このため特殊部隊や空挺部隊には特に有用な装備だろう。





水陸両用機動団もATVの採用は検討すべきだ。その場合ATVを使用する戦術と使用しない場合の戦術をどう統合させるのか。また各小隊の60ミリ迫撃砲すべてにATVを配備するのか、また弾薬運搬用として中隊本部のみに配備するかも熟慮する必要があるだろう。





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