ハリス米副大統領は「落ちた偶像」か
Japan In-depth / 2021年12月8日 19時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・米大手メディアがハリス副大統領の動向をほとんど報じなくなった。
・USAトゥデー紙などの世論調査でハリス氏への支持率28%にまで急下降。
・民主党にとって次期大統領選でバイデン後継としてハリス氏を推す展望が崩れつつある。
アメリカのバイデン政権でカマラ・ハリス副大統領が登場したときの反響はものすごかった。現地のアメリカでも、そしてアメリカの出来事には特別の関心を向ける日本でも、はなばなしい脚光が浴びせられた。
なにしろアメリカ合衆国が始まって以来の女性の副大統領、しかも黒人とアジア系両親を持つ少数民族の気鋭の政治家のデビューだった。そのうえにアメリカの歴史上、最高齢のジョセフ・バイデン大統領を補佐する20歳以上も若い副大統領だから、バイデン氏の任期の終了を待たずとも、大統領の座に就くことが十分にあるだろうとも期待された。
バイデン大統領のハリス氏起用は民主党リベラル派が好むアイデンティティ・ポリティックス(出自政治)の誇示でもあった。性別や人種の差という生まれながらの特質を選考基準として、アメリカ国民の主流派の白人男性をことさら避ける「差別排除」の選出でもあった。
要するにカマラ・ハリス氏は民主党政権の希望の星、輝ける新進の次期最高指導者ともみなされたのである。だから当然ながらアメリカでも日本でもハリス副大統領についての報道は山のように噴出した。少なくともバイデン政権の発足時はそうだった。
ところが、である。
バイデン・ハリス政権がスタートして11ヵ月、ほぼ1年ともいえる2021年12月の時点では、ハリス副大統領についての報道が驚くほど少ないことに気づく。とくにあれだけ大騒ぎした日本の新聞やテレビなどの主要ニュースメディアのアメリカ政治の報道ではハリス副大統領がまったくといってよいほど登場してこないのだ。
なぜだろうか。
その理由はひとつは、まず民主党支援のニューヨーク・タイムズのようなアメリカ側の大手メディアがハリス氏の動向をほとんど報じなくなったことである。その傾向が日本のメディアにも反映されたといえよう。
ではなぜアメリカの大手メディアはハリス副大統領の動向をあまり報道しないのか。
その理由を簡単にいえば、ハリス副大統領の言動では前向き、好印象、賞賛できる、というポジティブな材料がないからだろう。
アメリカのメディアでは大手のニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CNNテレビ、さらにはCBS、ABC、NBCという3大テレビネットワークなどはみな民主党の支持、あるいは傾斜である。
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