「裸の両王」が世界を分断する?(上)3年目に入ったロシア・ウクライナ紛争 その6
Japan In-depth / 2024年3月30日 22時29分
そして、候補者にはなれなかったものの、忘れてはならないのが、ロシア反体制派のカリスマと称されたアレクセイ・ナワリヌイ氏である。
1976年生まれの彼は、もともと弁護士だったが、2009年以降、プーチン政権を手厳しく批判する著述活動で内外のメディアから注目されるようになった。2011年には、プーチン政権は汚職によってその基盤が弱体化しているとして、
「ロシアでも5年以内に〈アラブの春〉のような大規模な反政府運動が起こりえる」
と発言した。さらには前述の「統一ロシア」を
「詐欺師と泥棒の党」
などと手厳しく批判し、この「愛称」は今でもSNSなどで使われている。2014年には「進歩党」を旗揚げした(2021年に解散)。
こうしたことから、ロシア政府によって繰り返し弾圧され、2021年12月5日、反政府デモなどを扇動したとして逮捕・勾留されてしまう。その後に起きたことは、日本でも大きく報じられた通りで、今年2月16日、北極圏の刑務所で死亡。死因は不明。享年47。
葬儀の後もモスクワの墓地には献花が絶えず、さらには未亡人らの呼びかけにより、投票最終日の17日正午には、各地の投票所前に集結し、選挙の不当を訴えよう、との運動が展開された。徴兵された兵士の妻たちも大勢参加して、戦争反対を訴えている。
実は日本でも、同日同時刻(東京・モスクワ間では時差が6時間あるが)、在外ロシア人による抗議行動があった。この日は日曜日で、冒頭で述べたようにロシア本国では、13日から17日まで投票が行われていたが、在日ロシア人のための投票日は17日だけであった。ちなみに在外邦人にも2000年から選挙権が付与されたが、登録の手続きに2ヶ月ほどを要するとのこと(外務省HPによる)。在日ロシア人の場合、パスポートを持参すればその場で投票用紙をもらえるそうだ。
本連載でも複数回ご登場を願った、私の知人で、日本にあって戦争反対の声を上げ続けているロシア人女性も、17日正午に大使館に出向くと述べていた。理由は、
「私が(投票に)行かなければ、誰かが私になりすましてプーチンに票を入れるに決まってますからね」
とのこと。そして実際、17日の投票日には、有志の手による「出口調査」も実施された。
その結果、投票参加者は616人で、
ダワンコフ 45.8%
プーチン 16.2%
答えたくない 19%
無効票 14.6%
となった。無効票の大半は「投票用紙汚損」で、故意になされた可能性が高い。これも選挙の不正疑惑に対する抗議行動の一環で、反戦のメッセージなどを大きく書き殴って、投票箱に放り込むのである。
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