能登半島地震と目に映らない想い
Japan In-depth / 2024年4月16日 23時0分
大石誠(作詞家・社会保険労務士 )
【まとめ】
・健常者と見た目は何も変わらない心筋梗塞を患い生活は不安の連続である。
・報道関係の皆さまに、是非とも心疾患の方々に耳を傾けてもらいたいと切に願う。
・早急に準備することや対策を具現化するべき。
私は、2023年2月19日、心筋梗塞で約1か月間、入院した。心筋梗塞になるまでは、社会保険労務士として、日々多忙を極めていた。その時のストレスが、心筋梗塞の大きな要因でもあった。病院から退院する前に、運動や食事、睡眠等の毎日の生活に対する指導が行われる。
退院すると娑婆に放り出された気分で、それからの生活は不安の連続である。
2023年4月某日、退院し1か月も経たないある日のこと、毎朝、服用している薬の一粒を床に落としてしまった。1回の投薬の数は7~8種類あるため、薬局では1度に飲めるよう小袋にまとめて処方してもらっている。その一粒が口元からこぼれてしまったのである。その一粒は見つからず、何の薬かわからない。心臓の動きに直接作用する薬だったのかと考えると1日不安に苛まれた。
あれから10か月ほどたち、2024年の元旦を迎えたその日の夕方、能登半島で地震が起きた。輪島市、珠洲市を中心に壊滅的な映像が流れた。倒壊した家屋を中心に、その地域に住んでいる人々のインタビューが続く。生活の主たるライフラインの寸断で、食料や水をはじめとした物資の搬送を呼びかける。その後、現地リポーターが高齢者、透析患者等、災害弱者支援に話を繋げていく。画面がスタジオに戻り、ニュースキャスターは誰一人取り残さないという信念のもと報道しているように見える。
だが何かが足りない…。
心筋梗塞を患う私がその場に想いを馳せた時…
今服用している薬の残りは幾日分あるのか、スマホが使えない状況の中いつ次の薬を入手できるのか、避難場所で暖が確実に取れるのか、レトルト食品で塩分を取り過ぎないのか、この状況が改善されずに死と隣り合わせで毎日を過ごすのであろうか…不安に潰されそうになる。
心疾患患者は、健常者と見た目は何も変わらない。ビジュアルが邪魔をして本質が見えず手を差し伸べにくい状況下にある。私はその時61歳、自分でいうのもおこがましいが、人から若く見られる。50代前半にみられることもある。そのためか、退院してからも心臓を患ったようには見られない。顔が細くなり心配する者もいたが、心筋梗塞だとは誰も思わないようだ。それでも、心の内側は騒ぎ続けている。毎朝スマートウォッチを装着すると心電図の確認をし、体重計に乗る。その後血圧を測る。そのあとは、朝飲む薬の点検…今は手慣れたものだが、一つでも確認を怠ると不安がよぎる。
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