公正証書遺言と自筆証書遺言 どちらの遺言書を選びますか?
JIJICO / 2016年5月22日 9時0分
公正証書遺言と自筆証書遺言 どちらの遺言書を選びますか?
遺言書の目的とは?
そもそも遺言書とは何でしょうか?財産関係に限って言うと、自分が築いた財産や代々守ってきた不動産等を自分の死後に有効、有意義に活用してもらうための遺志の表示をしたものと言えます。
そして、主な遺言書には「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。
今回はこの2つの遺言書について、それぞれの様式や手続きの違いについて簡単に紹介いたします。
公正証書遺言について
遺言者が公証役場に出向いて、公証人に遺言内容を口授、公証人がその内容を正確に文章化します。
その道のプロが遺言作成時に記載内容や記載の仕方を厳しくチェックし、法的に不備のない内容の遺言を作成出来る点が大きな特徴です。
また、作成後は原本を公証役場が保管し、正本と謄本はそれぞれ本人や、遺言執行者、または推定相続人等が保管します。
この為紛失や改ざん、盗難などのリスクは殆ど無いと言えます。
さらに紛失の場合でも原本は公証役場にありますから、再発行は可能です。
公正証書遺言の最大の特徴は、まさに内容の完全性=遺言効力の保障と、保管の安全性=公証役場での保管に尽きると言っても過言ではありません。
では問題点は何か?といいますと、公証役場で作成時に費用が発生する点です。
金額は財産の価額によって変わり、遺言に記載する財産価額によってそれぞれ手数料が定められています。
例えば、最も少ない価額を例にしますと、100万円までの財産額の場合で手数料は5,000円です。
但し、遺言加算と言って全体の財産が1億円以下の場合、11,000円が先の手数料に加算されるので計16,000円が手数料となります。
この他に遺言書の枚数によって1枚毎に別途手数料が設定されています。
また、原則は本人が公証役場に出向いて作成するのですが、病気療養等の理由でそれが難しい場合は、公証人が自宅や入院施設へ出向いて作成する事も可能です。
ですがこの場合、先の手数料に50%加算と、公証人への日当、交通費等が別途発生します。
もうひとつは、公証人の他に、立会人(証人)が2人必要になる事です。
さらに証人には、推定相続人、受遺者、その配偶者と、直系の血族等、利害関係にある身内は立会人になれません。
この為一般的には信頼に足る友人や知人、または弁護士等の専門職の方2名に依頼する事になりますが、赤の他人に遺言内容を知られる事に作成を躊躇することがあります。
自筆証書遺言について
文字通り、遺言者が、紙に一字一句まで全ての内容を自筆し、作成日付、氏名を自署し、押印する遺言書です。
配偶者や子供に代筆してもらった、USBメモリーに保管した、動画撮影で内容を口述した。
これらは、いくら内容自体に不備はなくとも、遺言としての効力は皆無です。
内容自体に不備があった場合(記載漏れやミス、誤字等)ももちろん、内容は無効とされ、遺言書自体が法的効力を失います。
一人で作成する事が出来るので、その存在や内容が漏れる事はありませんが、保管責任も自分一人にかかるわけで、紛失や盗難、変造、隠蔽のリスクも発生します。
また、家庭裁判所による「検認」を受けない限り、遺言内容を相続人等が知る事が出来ない為、遺言の内容を知るまで一定の日数を要します。この点は即内容を確認出来る公正証書遺言との違いです。
とはいえ、公正証書遺言のように、作成の為に出向く必要もありませんし、証人を用意する必要もありませんから、書換えや新たな作成は容易です。
また費用面では用紙の購入代程度ですから、公正証書遺言と比べれば圧倒的に安上がりです。
両者を比較した場合の特徴と問題点について
以上書いてきたように、自筆証書遺言には作成時の費用面の安さや一人で作成出来る簡単さという利点があり、その反面厳正な規格に則って作成する事を求められ、保管・管理の責任は自己責任、家裁の検認という手続きを経なければ内容の確認が出来ないという問題があります。
公正証書遺言には作成時の費用の発生や立会人、公証人の作成や公証役場へ出向いて作成する等、費用や時間の制約、第三者への依頼といった問題はあるものの、内容の法的効力や保管・管理の安全・安心面の充実、速やかな遺言の開示といった点は大きな利点となっています。
どちらの遺言書を選択するにしても、その特徴と問題点をしっかり把握することが大切になります。
(寺田 淳/行政書士)
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